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百四十三話目 笑う仲間と苦笑い


7月14日の更新です。

本日も宜しくお願い致します



「で?それからどうなったの?」


 興味津々。と言う文字を顔に貼り付けた亜栖実さんが、キラキラした瞳で僕に問いかけてくる。


 今は朝食の後のお茶の時間。と言ったところかな?


 亜栖実さんは、お気に入りのマグカップを両手で包み込む様に持ちながら、早く教えろ。と目で訴えていた。



「どうなったも何も、ジェイド君が本体バージョンでいきなり本村前まで現れたから、村の人達は大混乱。中にはジェイド君と戦おうとする人までいて、現場の騒ぎを収束させるだけで疲れましたよ……」


「ブフッ!」


 プルプル振るえながら笑う亜栖実さんを、少しだけ、睨み付ける。


 まったく。そんなに人の不幸が楽しいのかねぇ?


 僕はブスくれた表情のまま、亜栖実さんのマグカップにお茶を継ぎ足した。



「ウフフ。ゴメンゴメン」


「はぁ。まぁ、エルフーーいや、森の一族の村では色々と勉強させて頂きましたし、それは感謝してるんですけどね?しかも、先々々代くらい前の勇者様が使っていた杖を頂いてきちゃいましたし、それは凄く有り難かったんですが……」


 チラリと視線を横に移す。


 見れば、リコレさんが優雅にリビングのソファーで寛いでいるのが見えた。



「うん?族長さんがどうかした?」


 僕の視線を追いかけた亜栖実さんが首を傾げて疑問の声をあげる。


 それに僕は、


「ん、いっ、いや、何でリコレさんが()()に居るのかな~?って…」


 と、少しどもりながら答えた。



「えっ?駄目なの?」


「いや、駄目じゃあないんですが…」



 何だかやけに楽しそうな亜栖実さんに苦笑しつつ答えるが、本当に別にそこまで困っている訳でも無い。


 実際、火柱をあげてしまった事で、杖を制御する為に。って事で、色々教えてもらったし、しかも実戦を交えて教えてもらえたから、付け焼き刃にもならず、きっちり身体に焼き付いた感じもある。


 まぁ、教えてくれたのは、ウスタールさんと、アルミナさんのお父さんのアスベルさんで、族長、つまりリコレさんではないんだけどね?


 それでも、優秀な人材を、しかも2人も1週間以上僕の為に貸してくれた。って事は、本当に感謝してるよ?



 してるんだけど…。



「どんだけ入り浸るんだ?って言う…」


「えっ?あの人そんなにいんの?」



「あはははは。今日で10日です。あの人、ここまで毎日通って来てて……」


「おぅ……」



 僕の乾いた笑い声に、流石の亜栖実さんも少しだけ顔がひきつっている。


 僕も、折角森の一族の村に、まぁ、流石に本村には無理だったんだけど、テレポート装置を設置させてもらったんだから、来れる時に誰が遊びに来たって困らないどころか嬉しいし、この屋敷の主でもある裕翔さんだって、ニコニコしながら歓迎してくれるだろう。



「今代の勇者様にお会いする事ができて、喜びの念に絶えません。これも、シエロ様を我が村に御導き下さった女神様のお蔭でありましょう」


「俺も、族長様にお会いできて光栄です。」


 って言うか、今も凄く歓迎してくれてる。


 人が良い裕翔さんは、ニコニコしながら急にやって来たリコレさんの相手を、嫌な顔1つせずしてくれているけど、その裕翔さんと亜栖実さんは、今さっき、やっと魔族領から帰ってきたばかりなんだ。


 ようやく旅装束から開放されたその足で、リビングまで来て寛いでいたら、何時の間にやらやって来ていたリコレさんに捕まっちゃった。って訳です。


 隠れ里にテレポート装置を設置したいって言うのは、最初から裕翔さんに許可を取ってから行った行為だけど、それでリコレさんに捕まっちゃうって言うのは、何だか申し訳なくなるよね?



「フフフ。折角此方で貴方様とお知り合いになれたのです。微力では御座いますが、困った時には是非とも、我が集落をお訪ね下さいね?お待ちしておりますゆえ」


「ありがとうございます。葵がいつもお世話になっていましたから、本当なら此方から挨拶に伺わなくてはいけなかったのですが…」


「何をおっしゃいます。お世話になっているのは此方の方です。アスベルも喜んでおりました。自身の娘が、マモル様とはこれからも仲良くしていきたい。と」


「ははは。では、俺…いや私も頑張らないと行けませんね?」


 リコレさんのキラキラスマイルに当てられて、裕翔さんの顔が段々赤くなってる気がする。


 あぁ。またあの人に騙される人が増えt…。



「シエロ殿、今日の夕飯(ゆうめし)なに~?あっ、俺、この前食べたはんばぁぐってのが良いな!」


「「!?」」


 裕翔さんと亜栖実さんの目が、いつかの僕の様に点になる。


 ここ3週間弱の付き合いで分かった事だけど、どうやらこの人は、気に入った人や仲良くなりたい人をからかいたくてしょうがないらしい。


 分かってれば流したり等々対処は容易いけど、初見で対処なんか出来る訳も無いので…。


「急に素を出さないで下さい!!」


「ハハハ!良いじゃん。ここ、うるせー爺婆いねぇもん」



 一応怒ってはみたものの、あっさり返されて終了~。


 あぁん!もうイヤだこの人!!!



「ハハハ。ってな訳だ!勇者殿、宜しく頼むぜ?」


「えっ?あっ?うぇ?」



 あぁ。僕もリコレさんと初めましてした時もあんな感じだったなぁ~。


 とか思いながら、僕はため息を吐いた。


 はぁ、また幸せが逃げそうだ。




リコレさんは、こう見えて400歳を越えているので、朝食の後はすぐ夕食の話をしたりしますww


まぁ、単におじいちゃん!今食べたでしょ!?

がやりたかっただけですwww

……シエロは言ってくれませんでしたが(´;ω;`)


本日もここまでお読み頂きましてありがとうございました。

これにてこの章はお仕舞いとなります。

閑話を1つ挟みまして、新章となりますので、また宜しくお願い致します。

閑話はいつもと同じく、明日の18時頃に更新致します。

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