百四十二話目 忘れ去られた彼らと祭りの終わり
7月13日の金曜日の更新です。
残念ながら赤口ですww
本日も宜しくお願い致します
《side:葵》
《ドンッ!!》
突如、俺っち達の居る村よりも、少し離れた場所に火柱が上がった。
「なっ、何だ今のは!?」
「村長!あれ?村長がいないぞ?」
急に空を焼いた火柱の登場に、折角祭りを楽しんでいた村人達が、俄に騒がしくなる。
火柱はその一度きりで、2度目以降はあがらなかったけど、それでもあれだけの馬鹿デカイ火柱だ。村人達の心を騒がせるには充分だった様だぜ?
「馬鹿、村長はさっきウスタール様に連れられて出掛けていっただろうが?」
「じゃあ、まさか今の火柱は村長達が?一体何があったと言うんだ?」
「まさか敵襲か?」
「いや、それだったら村長だけで無く、村の若い衆も連れていくだろう?」
ザワザワと臆測が飛び交って行く中で、顔を青ざめたアルミナが俺っちの服の裾をソッと掴む。
真っ青な、少しタレ目気味の目の端っこに涙が浮かんでウルウルしていて、何とも庇護欲を掻き立てられる。
やべっ、めっちゃ可愛いんスけど!?
《キュンッ!!》
俺っちの中で、何かが音をたてた。
「シエロ殿がおらーーーーん!?マモル殿!シエロ殿は何処へ行かれたのか?はっ!まさかあの火柱の中に!?いかんっ!マモル殿!至急的速やかにあの場へ向かわなければならぬ!!」
…………のも束の間。俺っち、ジェイドさんのお蔭で、何だか冷静になれたッス。ハ、ハハ……。
◇◆◇◆◇◆
《side:シエロ》
「うわぁ……」
シンと静まり返った広場の中心で、僕は1人、ドン引いていた。
軽い気持ちだった。
いつも僕が使っている人工魔石に魔力を注入する要領で、魔石にこめられた魔法を、簡単に取り出してみよう。言わば、これはお試しだ。
くらいの、本当に軽い気持ちだったのに、まさか10メートル級の火柱があがるだなんて、思ってもみなかったんだよ!?
「チラッ」
思わず口で擬音を放ちながら、周囲の様子を眺める。
あああ。さっきまで楽しそうに僕の様子を見つめていたエルフさん達の目が、あちらこちらで点になっているし、さっきまで騒がしかったのに、今は誰も喋ってすらいないよぉ。
やっ、やり過ぎた…。
こんなに人工魔石と天然物とで、魔力の通りが違うなんて思わなかったよ。これは、今後の魔石作りの参考になるな。って違う違う、そうじゃない。
「あっ、あの~~」
他の人達と同じく固まっていたリコレさんに声をかける。僕の近くにいた2人の精霊は、【こいつ、またやらかした】とばかりに笑いを噛み殺すのに忙しくて役にたたない。
「スゲェな…」
「え?」
リコレさんの口から、ポツリと呟きが零れる。
すると、今まで焦点があっていなかったリコレさんの眼に光がポツリと宿り、次の瞬間。
「スゲェなシエロ殿!あんなちょろっと魔力をこめただけで、その杖の持つ潜在的に秘めた力を開放しやがった!!」
と、捲し立てた。
「うわっ、マジで凄くね?俺様、世紀の瞬間に立ち会っちゃったとか?うわぁ~。興奮すんなぁ?………ととと、あんまり素を出したらマズイな…。皆さん!!シエロ殿、いえ、シエロ様が今この時、真の意味で嘗て、勇者ナツヒコ様の使いし杖に認められました!!!」
「「「「「……!!わぁっ!!!!!」」」」」
そして更に、1人で興奮していたリコレさんの掛け声によって、固まっていたはずのエルフさん達まで雄叫びを挙げ始めた。
興奮に乗りきれなかった僕は、1人置いてけぼり状態だ。
「え?あの…」
僕がキョドっている間にも、エルフさん達は僕の周りで祝詞を唱えたり、不思議な躍りを踊ったりと、浮かれまくっている。ど、どうしよう…。
おもてに出てる精霊2人はこの光景を見て、更に笑ってるし、お腹の中の3人はお腹がいっぱいで爆睡中。うわぁ~ん!
あっ、でも、これでもし、風華達が出てきたらそれはそれで
【ナツヒコ様の再来だーー!!】
とかって騒がれたりするのか?
うん。それはそれで困るな。
だったらもう、杖で騒がれてる方がマシかぁ…。
そう、周りの騒ぎっぷりをボンヤリ眺めながら悟りの境地に居ると、
「シーエーーローーー殿ーーーー!!!!!」
上からデッカイ声が聞こえてきた。
なんだか段々ジェイドがオチ担当みたいになってきた気がしますww
本日もここまでお読み頂きまして、ありがとうございました。
明日もまた同じ時間に更新致しますので、宜しくお願い致します




