百四十一話目 試してみよう!
7月12日の更新です。
本日も宜しくお願い致します。
「どういう意味、ですか?」
「どういう意味も何も、そのままの意味だぜ?」
僕が訊ねると、リコレさんは笑顔をそのままに、僕が握り締めている杖を指差した。
「その杖の元になった古代竜は火竜だと言っただろ?そして、そのやたらと赤い石は炎属性の高級品だ。後は、シエロ殿の魔力を少しでもこめさえすれば、上級魔法くらいなら軽く使えるぜ?まぁ、そんだけ強い材料で作ったもんだから、杖自体が気に入らないやつを攻撃しちまうんだけどよ」
「じょ、上級?うわ……凄いな」
改めてもう一度杖を見れば、確かに真っ赤な魔石は僕の握り拳よりも少し大きい。
聞けば、ナツヒコさんも炎属性が使えなかったそうで、その時仲が良かったドラゴンさんに牙を貰い、精霊に頼んで特大の炎の魔石を探してもらったんだとか……材料の集め方が、とんでもなくセレブだな。とても真似できないや。
あっ、そう言われて見れば、以前人工魔石について教えてもらった時に、師匠から見せてもらった天然物の魔石と比べても、300年近くも経って使い込まれている筈なのに、大きさは比べ物にならないくらいに大きいかも。
……いや、比べ物にならないって言うか、師匠に見せてもらった魔石は親指の爪くらいだったね。
うん。本気で比べ物にならないや。
「 何、それさえありゃあ、焚き火に火点けるくらいは出来るべ! 」
「いやいや、上級魔法使える様になるくらいの石で流石に焚き火に点火しようとは考えませんから…でもそうか、僕も炎魔法が使える様になるんですねぇ?」
「ハハハ。何なら杖の性能を試していけば良いだろ……あ~。ただし、ここでぶっぱなすのだけは止めてくれよな?」
恐縮頻りの僕に、リコレさんがイタズラっ子みたいな顔で笑った。
ーーーーー
ーーー
所変わって、此処は神殿?前。
リコレさんが始めに座っていた、荘厳な祭壇がある建物のおもてにやって来た。って訳です。
因みに地下室もこの建物の中にあって、基本リコレさんがこの建物の中から出て来る事は稀なのだとか。
「では、遠慮せずに杖を試して見てください。あっ、出来ましたら、魔法は空へ向けて放って頂ければ、幸いに御座います」
「あっ、はい…」
リコレさんはあの部屋から出た途端に、また【族長】モードに切り替わっている。
扉を抜けた瞬間。キャラクターが180度変わったもんだから、凄くビックリしたよ。
切り替え早っっ!?ってね?
「じゃあ、とりあえずやってみますね?」
「はい。それでは皆さん、シエロ様のお邪魔にだけはならぬ様に、少し離れていて下さいね?」
「「「「「はっ!」」」」」
うぅ。やりづらい
今、僕の周りには、さっき神殿内ですれ違った、神官エルフさん達がズラリと円を描く様に並んでいる。
別に僕が彼らを怒らせた訳でも、敵意を向けられていると言う訳でも無く、彼らの目は好奇心…と言うか、何故かワクワクが止まらない!と言った風情の、キラキラしたお目目で見つめられているんだ。
「おい。あれはあの杖だよな?(ヒソッ)」
「あぁ、間違いない。あれをまさかあの様に可憐な方が扱えるとは……素晴らしいとは思わんか?(ヒソヒソ)」
杖に魔力をこめようと杖を構えてみる。と、周りのエルフさん達から、どよめきとヒソヒソ何かを話している声が聞こえ始めた。
うぅう。まだ杖構えただけなのに、凄い大事感満載なのは何でぇ?
「そりゃあ、数百年現れなかった、【伝説】の、杖の使い手が現れた。となれば、皆さん見に来ますよ。マスター、別に杖を隠しもせず、堂々と地下からここまで歩いて来たんですから」
「うぅ~。また勝手に人の心読んだね?……いや、それより、やっぱり目立ってた?」
「そりゃあ、もう。マスターはただでさえ目立ちますからね?そこに、村に代々伝わってます!的な勇者様の杖を持って現れたら、ねぇ?」
僕の隣で、コローレと一緒にそれとなくエルフさん達が近づいて来ない様にしてくれていた咲良さんからキツい正論が飛んでくる。
「うぅ~~」
僕は、モヤモヤする気持ちを押さえ込みながら、杖の先端に取り付けられた真っ赤な炎の魔石に魔力をこめた。
《チカチカ》
魔石がチカチカと、僕の魔力に反応して光を放ち始める。
よしっ。こんなもんかな?
《おぉっ!ーーザワザワ》
うぅ~。気にしない気にしない。
僕は周りの声を無視する様に、空へ向けて魔石にこめた魔力を開放した。
《ドンッ!!》
……ら、何故か火柱が上がった。
娯楽が少ないので、何かイベント?があると、すぐに村人は集まってきますww
本日もここまでお読み頂き、ありがとうございました。
明日もまた同じ時間に更新致しますので、宜しくお願い致します




