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百三十八話目 魔法の杖①


7月9日の更新です。

本日も宜しくお願い致します



「これだ!古いが、物は良いんだぜ?」



 そう言って、何処からか戻ってきたリコレさんに手渡されたのは、昔ランスロット先生から頂いたものよりも、少し長めの杖だった。


 ランスロット先生の杖は、緑がかった茶色の杖に、緑色の石が嵌め込まれた物だったけれど、渡された1メートルあるか無いかのその杖は、リコレさんが言う程の年季等、全く感じさせない程真っ白くて艶々している。


 更に、上部に嵌め込まれた石は深い赤で、誰がどうみても、これはリコレさんの杖でしょ!?と分かる様な色合いの杖だった。


 だってリコレさんと配色一緒だもん!!




「そして、これな?」


「え?うわっと!?」



 綺麗な色合いの杖をシゲシゲと眺めていると、リコレさんは僕に何かを投げて寄越した。


 弧を描いて飛んでくるソレを、慌ててキャッチする。


 良かった。杖も、リコレさんが投げた物も、どちらも落とさずに済んだ。



「ん?」


 まだドキドキしている心臓を宥めながら、今しがた受け取った?物を確認してみる。


 それは、僕の手のひらに収まる程、小さなブローチだった。


 いや?ブローチ…とも違うのかな?五百円玉くらいの大きさの、緑色で丸くて平べったい形をしたボタン…みたいな、不思議な物で、裏っかわには留め金の類いは無く、強いて言うならイヤホンジャックみたいな出っ張りがついていた。


 見ようによっては、先の尖っていない画鋲にも見えるかな?うん、その表現が一番しっくりくる気がする。



「これは?」


 見た目の割りには重い、ボタンみたいな画鋲みたいな不思議な物を手の中で転がしながら問いかける。


 すると、



「それは、ナツヒコが使っていた魔力を溜めておける魔道具だ。そっちの杖も、ナツヒコが愛用していたやつだな」


「!!???」



 何て軽い口調で答えが返ってきたので、ビックリし過ぎて手に持った全ての物を投げ出すところだった。


 あっ、何とか未遂に終わったから安心してね?



「そっ、そそそそそそんな、だだだだだだだ大事な物を投げて寄越さないで下さいよ!!?」



 未遂に終わったとは言え、危なかったのは事実なので、流石の僕も抗議するよ!?


 投げ渡された魔道具や杖を抱えながらプンプンしていると、


「アハハハハハ」


 なんて、愉快そうにリコレさんは大笑いし始めた。


「いや、アハハじゃないですよ!?」


「シエロ殿、諦めろ。うちの親父殿はこんな奴じゃ。それよりその杖の事じゃがな?」



 尚も笑うリコレさんに怒っていると、村長さんに肩を叩かれながら慰められ、僕が握りしめていた杖を指差す。


「あっ、はい!」



 慌てて椅子から立ち上がりながら、杖を村長さんに手渡そうとすると、


「あっ、いや。ワシではその杖を握れんのでな?そのままシエロ殿が持っていてくれんか?」


 と言われた。


「はい??」


「シエロ殿、シエロ殿、こっち見てみて?」


 頭の上にハテナマークが飛び交っているのを見かねたのか、リコレさんから呼び掛けられた。




「リコレさんどうし……!?リコレさんどうしたんですか!?その手??」


 何だろうと思って振り向くと、リコレさんは此方に向けて両手を突きだす様にして手のひらを広げていた。


 それがどうしたのか?と疑問を口に出そうとして気付く。


 リコレさんの両手は、まるで火傷をしたみたいに焼けただれていたのだ。



「火傷ですか?でも何で……あぁ、そんな事より治療を!!」


「まぁ、落ち着きなって。こんなのは…治癒(ヒール)!………ね?治ったでしょ?」


「いや、治ったでしょ?って……」


「あの火傷はな?あの杖のせいなんだ」



 リコレさんは、そう言って、またニヤリと笑った。




ここまでお読み頂き、ありがとうございました。

明日も同じ時間に更新致しますので、また宜しくお願い致します

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