百三十六話目 族長②
7月7日、七夕の日の更新です。
本日も宜しくお願い致します
案内された森の一族の族長、リコレ・モデーンさんのお部屋は、意外にも地下の奥まった所にあった。
それは、長い廊下を幾つも通り過ぎ、日差しが降り注ぐ広間を抜けて、階段を随分と下った場所の、分厚い扉を3枚潜った先。キラキラしたイケメンエルフの神官さん達と、数十人くらいスレ違った先だ。
「綺麗な場所ですねぇ?」
通された部屋は、まるで地下だとは思えないくらい明るくて、植物に囲まれたリコレさんの部屋の中を、ついついチョロチョロと歩き回る。
まるで森の中にいるみたいだなぁ。何て思っていると、
「そうかぁ?実際に住んでると肩が凝るぜ?こんな場所?」
……と、一瞬耳を疑う様な声が飛んできた。
「あ~あ。やれやれどっこいしょっと。あ~疲れた」
聞こえてきたおっさん臭い声に、さっきと同じ様に、いや、さっきとはまた違った意味で緊張しながら、恐る恐る振り返る。
「ん?まぁ、座りなさい。座り心地はまぁ、悪いかも知れないが、少なくとも身体は疲れないぜ?」
「あ、っと?えぇっ!??」
さっきまでの穏やかで柔らかな笑顔では無く、悪戯っ子みたいな顔で笑いながら椅子に座っているリコレさんに、僕はまたパニックになった。
「はぁ。リコレ、あまり我が主をからかうのはお止めなさい」
「ハハハ、悪い悪い。主殿も悪いな?これが俺の素なんだ。いつもは族長らしくしろって五月蝿い爺婆の言うこと聞いて、あんな変な奴を演じてんのさ。あっ!先に言っとくが、此処には女神様の声は届かないぜ?ちょっくら門外不出の特殊な結界を張ってるからな?まぁ、聞こえない代わりに俺達の声もあっちには聞こえないから、内緒話には最適だな!?」
「えっ?あっ、そ、そうなん、ですか…」
未だ胸のドギマギは治まらないものの、何とか返事を返しつつ、すすめられた椅子に腰を下ろす。
椅子は、茸みたいな形をしていて、ほのかに光っていた。
いつもなら、こんなファンタジーな空間に居られるだけで勝手に上がっていくテンションも、今日だけは流石に白旗を挙げている。
って言うか、ビックリし過ぎて、今リコレさんが何言ってたのかすら今一理解出来なかったよ…。
「あ~。しかし久しぶりだな?何?今はコローレ、何て名乗ってんだって?」
「えぇ。今はコローレ・シュヴァルツと名乗っていますよ?」
「ハハハ。俺達の姿に化ければそんなにコロコロ名前を変える必要も無いのに、お前も物好きだよなぁ?」
「フフフ。君の変わり身の早さには負けますよ。ほらご覧なさい。私の主様はまだ固まっておられるではありませんか」
ニヤニヤ笑いながら、リコレさんはコローレをからかっていて、からかわれたコローレは呆れ顔をしながらリコレさんの軽口に答えている。
あっ、さっきまでは分からなかったけど、リコレさんの瞳はルビーの様な赤色だ。真紅、とも言うべき様な、鮮やかな赤。
白い肌や髪の毛に、瞳の赤だけが異様に目立っていた。
「綺麗だなぁ…」
「ん?何が?」
「あっ、すいません!えっと……」
頭で考えていた事がポロリました。とは言い出しづらくて、モゴモゴしてしまう。
「リコレの瞳に、我が主は見とれて居た様ですよ?全く、シエロ様、どうせ見とれるなら、私の瞳に致しませんか?ほら、私の瞳は金色ですよ?」
ゴニョゴニョしてたらコローレさんが説明してくれた。までは良かったんだけどなぁ…。
「「お前はどこ張り合ってんだよ!」
思わず突っ込むと、リコレさんも僕と同時に同じく突っ込みをいれていた。
白い髪の毛がフワリと身体の動きに連動して揺れる。
「すいません。勝手にジロジロと…」
「ん?あぁ、シエロ殿が気にする事ではないさ。それに、仕事柄見られるのには慣れてる。ちょっと待ってな?今こいつ絞めたらちゃんと話しするからよ?」
そう言いながら、リコレさんはコローレの首にチョークスリーパーをかけ……って!流石に死んじゃう死んじゃう!?
実は結界を破られた事を気にしている族長でしたww
え?そこじゃない??
本日もここまでお読み頂き、ありがとうございました。
明日もまた同じ時間に更新致しますので、宜しくお願い致します




