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百二十九話目 探索とその結果


6月30日の更新です。

本日も宜しくお願い致します



 結果から言うと、村の()に問題は無かった。


 村の中、は、ね…。



「はぁあああああ!!水よ、その流れを変え、我に力を貸し与えたまえ!ウォーターカッター!!」


「おらぁあああ!風よ!我の拳に纏いて敵を碎け!!ウィンドクラッシュぅうう!!!」


《バシュッバシュッ!ズドガァアアアアアン!!》



 水の刃が、ウニョウニョと蠢く木の根っこを切り刻み、がら空きになったその胴体へと重い一撃が加えられる。


 凛々しくもキラキラしい、2人のエルフのお兄さん方の前には、人が2~30人くらい手を繋がないと回りきらないんじゃないかな?ってくらい幹が太い、巨大な木がワサワサとその枝葉を揺らしていた。


 幹の真ん中くらいの辺りには、裂け目と言うか割れ目があって、そこから絶えず唸り声の様な音が聞こえる。


 所謂トレントって魔物らしいが、その大きさが異常だった。



「シエロ殿!これが【影に触れる】と言う事なのかっっ!?」


《ズザザザザザザー》


 幹をぶん殴った張本人でもある村長さんが、殴った勢いそのままに後退してきた。地面がその威力に耐えきれず、村長さんの足の形に沿って、2本の線が出来る。


 僕は線の深さを見ながら、



「恐らくは…。黒い影がトレントの周りにまとわりついている様なので、その可能性が高いと思います!」


 と、返した。


 うん。10㎝くらいはえぐれてんな…。


「ふむ、なるほどな。普通トレントと言えば、ワシが腕で輪を作った程度の太さしかない弱い魔物じゃが…。それがこの様な禍々しい姿になるのか。やはり、邪神と言うのは恐ろしい……のぅっ!!」


《ドゴォオオオオオン!》


《グギャアアアアアアアアアアアアア……》


 僕の簡単な説明を受けただけで、村長さんはまた飛び上がると、そのままトレント近くの地面を叩き割った。


 トレントは悲鳴を上げながら地面の割れ目に足……と言うか根っこをとられて、暴れる様に枝葉を揺らす。


 僕もその隙をついて、作戦通り移動を開始した。



「りゃあっっ!!」


《ドダダダダダ!》


 態勢を崩したトレントに、村長さんの拳のラッシュが襲い掛かる。


 ヤバイ。エルフが肉弾戦とか……。


 僕の勝手なイメージなのかも知れないけど、エルフが持つ、魔法使いとか弓使いなイメージが村長さんによって、更にガラガラと崩れていくのを感じる。


 って、危ない!


「《光操作:光の壁!》」


「うぉっ!?」


《キキキキキーン》


 村長さんの背後からニョキニョキと伸びてきたトレントの根っこが、光の障壁に弾かれる。


()()!てやぁ!!」


《バシュッ》


 さっき水魔法を放っていたエルフのお兄さんが、持っていた剣で弾かれた根っこを切り裂く。


《クウォオオーン》



「おっと。させないよ?浄化!!」


 と、今度はトレントの根っこを切り裂いていたお兄さんの背中ががら空きになる。


 村長さんは未だ態勢を崩していたので、トレントは絶好の機会だと顔を歪ませながら、自身の枝を振り上げた。


 絶体絶命か!?……まぁ、他に人、つまり、僕がいなきゃね?



《グギャアアアアアアアアアアアアア!?》


 と言う事で、光魔法の《浄化》をトレント目掛けて放ってみた。


 背が低い事を活かしてーーなっ、泣いてなんかいないんだからね!?ーー木の影から近づいての魔法の行使に、目の前の敵にばかり気を取られていたトレントは、魔法が当たるまで気がつかなかった様だ。



《ジジュウウウウ……ズドドォオオオオン》


「ふぅ」


 黒い煙をあげて、グラリと揺れたトレントの体が傾ぎ、地響きをあげながら地面に倒れた。


「何とかなったな?」


「えぇ、障壁を張った時にばれるかと思いましたけど、何とか気づかれずに済みました」


「あれには少しヒヤリとしましたよ…」


 舞い上がった土埃の中から2人のエルフがやって来る。どうやら2人共に怪我は無いようだ。


「しかし、シエロ殿の仰っていた通り、闇属性持ちのトレントに進化していましたね?」


 水魔法を使っていたエルフのお兄さん…アスベルさんが、自身の剣でトレントの動かなくなった体をツンツンとつつきながら言った。


 アスベルさんは、アルミナさんのお父さんだそうで、と言う事は村長さんの息子さんでもある。


 つまりはランスロット先生のお兄さんでもある訳です。


 まぁそれは置いておくとして、街の外を見回りしていたアスベルさんを見つけた僕らは、邪神の痕跡を探しに付き合って貰っていたんだ。


 アスベルさんは正統派エルフって感じのヒラヒラした服を着た、髪の毛サラストのイケメンさんだったよ!?金色の髪の毛と、紫色の瞳が、何ともゴージャス感を増幅させていて、ちょっと僕のテンションが上がってしまったのは秘密だ。



 え?そんな事より、他の奴等はどうしたかって?


 流石に固まって探すより、手分けして探した方が楽…効率が良いかと思って、ワザワザ分かれたんだ。


 全部で3班に分かれたんだけど、一組に1人は光魔法が使える人に入って貰った方が良い気がしたから、それぞれ割り振ったら、3つしか作れなかった。ってだけなんだけどね?


「これ、止めんかアスベル!まだ気を抜くでない!!」


「え?しかし父上。トレントなら今倒し……」



《クウォオオーン!!》


「「「!!?」」」



 倒したトレントと同じかそれ以上に立派なトレントが、森の中から姿を現した。




本日も此処までお読み頂きまして、ありがとうございました。

明日もまた同じ時間に更新させて頂きますので、また宜しくお願い致します


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