百二十八話目 濁りの正体
6月29日の更新です。
本日も宜しくお願い致します
「シエロ様、何がお分かりになられたのですか?」
心配そうに僕の顔を覗き込んでいたコローレが、僕にそう問いかけてくる。
「うん。たぶん、何だけどさ?邪神が関係してるんだと思う…」
「邪神!?」
「邪神じゃとっっ!??」
にわかに僕の周りが騒がしくなる。が、僕は気にせず続けた。
「うん。僕さ、1度だけ、1度だけ邪神の影に触れておかしくなっちゃった奴に会った事があるんだ」
「「「!?」」」
僕の頭の中に、
《「俺は悪くない!!悪いのはお前なんだからな!!!」》
と言う金切り声と共に、車の窓から此方を見ている影が過る。
顔は薄ぼんやりしか思い出せないけど、僕がハッキリと聞いた生前最後の声。
今思えば、覚えてないんじゃなくて、見えなかったんじゃないかな?何ても思う程、あいつの背後にドロドロした黒い影がまとわりついていたのを思い出したんだ。
「邪神に取り憑かれると、正しい事とそうでない事の境目が曖昧になって、自分の欲望に忠実になるんだ。で、その欲望がドロドロしたどす黒いオーラになって噴き出すと、犯罪行為に簡単に手を染める様になる」
チラリと水晶玉に目を移す。皆の視線が、僕から濁った水晶玉に移るのを感じる。
「その水晶玉から、あの時のあいつと同じ感じがするんだ」
「では、この村に邪神が?」
村長さんが険しい顔で問いかけてくる。さっきまでの飄々とした感じでは無く、キリリとした【村長】としての顔が見えた気がした。
「いえ、それは無いかと思います。もしまだ邪神がこの村にいるならば、女神達が何かしてくるでしょうし、それに…」
僕は一旦言葉を切った。別に勿体ぶっている訳では無く、単に話続けて喉が渇いただけだ。
「それに?何なの?」
「ゴクッ。うん。それに、邪神がこの近くに居るのなら、こんな風に普通にはしていられないと思うんです。【影】は一所には立ち止まらず、絶えず自分の体を探していますから…」
少し冷めた緑茶で喉を潤してから続きを話す。
邪神の影は、瞬きをするよりも短い時間、影に触れただけでも気が触れてしまうくらい、強力な負のエネルギーで満たされている。
もしも、そんな影がまだ村の中に居るならば、この村はもっと狂気渦巻くほの暗い場所に様変わりしてしまう筈。
そう説明すると、部屋の空気からヒリヒリ感じていた緊張感と、緊迫感が少し和らいだ。
「とは言っても、通りすぎた際に誰かに触った。何て事があるかもしれないので、村の中は調べた方が良いかもしれません」
「なるほど、相分かった。では、村の者を使って調べさせよう。気を付けた方が良い事はあるかね?」
「そうですね…。ではーーー」
僕は、村長さんに昔女神達から聞いた注意点や何やらを話して聞かせた。
はぁ。せっかくエルフだヤッハー何て、はしゃげると思ったのになぁ…。
何でこんな事になったのかなぁ?
本日も此処までお読み頂き、ありがとうございました。
明日も18時頃に更新させて頂きますので、また宜しくお願い致します




