百二十七話目 水晶玉
6月28日の更新です。
本日も宜しくお願い致します
「水晶玉?」
「スワード、それは本当ですか?」
「コローレ?」
水晶玉が濁る。と言う村長さんの発言に、コローレが過剰なくらいに反応する。
「スワード、今水晶玉は何処にありますか?」
「此方です」
《バタバタバタバタ》
キョトンとする僕らを置き去りに、コローレは村長さんに付いて部屋を出て行ってしまった。
段々と足音が遠ざかって行く。
「えっと…?」
「水晶玉と言うのは、代々私共の家に伝わる物でしてね?今の今まで、【濁る】何てありませんでしたのよ?」
困惑している僕らに対し、今までニコニコしながら座っていた村長さんの奥さんが、徐に口を開いた。
「主人からは、あの水晶玉はラング・ド・シャ様から頂いた大切な物で、【「村に危険が迫る時を知らせてくれる有り難い代物だ。大切に扱わなければならないよ?」】と教えられてきました。息子達にも、この教えは受け継がれていくものだとばかり思っていましたのに、まさか、私達の時代にこの様な事が起きるだなんて…」
「おばあちゃま!あの水晶玉はコローレ様から頂いた物だったの!?」
「えぇ、そうよ?先代様…。貴方のひいお祖父様の時代に、ラング様が下さった物なの。……あの様に綺麗な水晶玉が濁るだなんて、誰も思わなかったから焦りました。先程、コローレ様が主人の結界を触られたので、これが原因かと、主人も慌てて出て行きましたが、結局は違うものでしたしね?」
「いや、あながち間違いでもなかった様じゃぞ?」
「あら、あなた」
困ったわ?と顎に手のひらをあてる奥さんの後ろから、さっき出ていった筈の2人が姿を現した。
コローレの左手には、黒くくすんだ色の、手のひらサイズの水晶玉がある。
もしかしなくても、アレが村長さんの言っていた水晶玉なのだろう。
「もうこの玉は駄目ですね…」
《ゴトンッ、ゴロゴロゴロ……》
コローレが、テーブルに水晶玉を無造作に転がす。転がった水晶玉は、コロコロと転がって、僕の前でピタリと止まった。
思わず手に取ると、ヒンヤリとした石の感触と共に、どす黒い、何か得体の知れないドロドロとした感情が流れ込んでくる。
「ぐっ!?」
《ゴンッ》
込み上げてきた吐き気を抑える為に、両方の手で口を抑える。当然、持っていた水晶玉は床に落ちて、鈍い音をたてた。
「「シエロ!??」」
「マスター!」
「シエロ様!?」
皆の心配する声が聞こえる。
風華や実里が背中を擦ったりしてくれるけど、頭痛と吐き気は治まらない。
が、1つだけ言える事があった。僕は、この感じを知っている。
「ちょっ!大丈夫ッスか?」
「うん、だい、丈夫…。ちょっと、頭の中がグル、グルしただけ、だから」
「それは、大丈夫とは言わねぇんじゃねぇじゃろか?」
「お水なの!飲める?」
「ありが、とうございます…」
《ゴクゴク》
アルミナさんからお水を受け取り、一息に飲み干す。
程よく冷たい水が、どす黒いものを流してくれる様なそんな感じがした。
「ふぅ。ちょっとスッキリしたかも」
「良かったの」
「シエロ様!不用意に転がした私も悪いのですが、あんまりホイホイ得体の知れないものを触らないで下さいませ!?」
「ごっゴメン。コローレの作った物だって言うから、つい…。あっ、でも、触ったお蔭でちょっと分かった事もあるよ?」
「触ったお蔭で…。って、シエロさんもリーディング出来たんッスか?」
「いや、流石に僕に超能力は無いよ…。けどさ?」
チラリと水晶玉を見る。すると、水晶玉の中で、闇がフヨフヨと蠢いている様に見えた。
何でもホイホイ触る系主人公、それがシエロです!←威張る事では無い
本日も此処までお読み頂きまして、ありがとうございました。
明日もまた同じ時間に更新させて頂きますのでよろしくお願い致します。




