百二十六話目 御使い様④
6月27日の更新です。
本日も宜しくお願い致します
「なるほどなの!歴代の勇者様を心配した精霊さん達が、勇者様かその仲間の人達と契約したのが【御使い】の始まりだったんですね?なの」
「えぇ。ナツヒコ様の次の代の勇者様の時代辺りから、精霊憑きのヒューマンの事を神の使い、【御使い】と他の者達が呼ぶようになりましたね。ナツヒコ様の時代には、精霊は女神様の子供だ。と、言うのは広まっておりましたので、【その子供達と契約出来る者は、神の使いだ】と言う事になったのでしょう」
暗くなってしまった雰囲気を、少しでも明るくする為に、と、色々な事を話し込んでいる内に、話題はいつの間にか、少しずつ逸れていっていた。
「でも今は大抵、【見える人】とか【精霊使い】とかって言い方の方が浸透してるよね?」
「そうなの?私達の一族には、まだ【御使い様】って言い方の方が当たり前に使われているの。だから、見える人。何て言い方は知らなかったの」
今話していたのは、【御使い】と言う呼称の始まりと、森の一族と他の種族の精霊使いの呼び方の違いについて。
森の一族は寿命が長いからか、僕らの国では100年以上前に廃れた【御使い】と言う呼称を未だに使っていた事が分かった。
何でこんな話になったのかと言えば、村長さんが、
「ラング様にこの様に慕われるとは、シエロ殿は優秀な御使い様なのですな?」
何て言い始めたから。
【御使い】何て大仰な名前が出てきたもんだから、アルミナさんと話していた、彼女の着ていたツナギの話なんて、一気に吹き飛んでしまったんだ。
あっ、彼女のツナギの形は葵君が教えたんだってさ。2人でイチャイチャしながら教えてくれたよ。ケッ!
「私はただ精霊使い~。なんて呼ぶより、御使い様!って呼んだ方が好きなの」
「いやいやいや、呼ぶ方は良いかもしれないけど、呼ばれるこっちとしては、恥ずかしいから止めて欲しいものがあるよね?」
「あ~。確かに【御使い様】とか、どこの宗教家だよ!って感じがするッスもんね~?」
うんうん。と、僕と葵君とで一緒に首を縦に振りながら同調する。
アルミナさんは何となく納得がいかないみたいだけど、現代日本人が【御使い様】何て呼ばれるのは、とてもじゃないけど恥ずかしい。
恥ずか死するレベルだと、僕は思う。
「ふむ。シエロ殿が恥ずかしいと言う気持ちも分からんでもないな。何せランスロットがそうじゃったからな」
「ランスロット先生が?」
「うむ。あやつはうち唯一の御使いでな?嘆かわしい事に、森の一族でありながらワシの他の娘息子達は、姿は見えど、どなたとも契約できなんだ」
「じい様も?」
「いや、ワシには相棒がおるよ?今は少し出掛けておるが、もうじき帰って来るじゃろ。そう言えば、まだお主は会えておらんかったな?」
何年も一緒の村で暮らしていて会えないのか…。ちょっと残念そうな葵君の顔がそれを物語っていた。
「ふむ。そんな顔をせずとも、そのうち会えるじゃろうて…。おぉ、そうじゃ!お主ら、何か用が合ったのでは無いのか?」
ガッカリと肩を落とした葵君の頭を、優しく叩きながら笑っていた村長さんが、急に声をあげた。
「用?いや?一月も空けちまったから、気になって戻って来ただけだぜ?」
「僕は葵君のお目付け役です。彼、ちょっと無理したばかりだったので、此処まで送り届けに…」
僕らが答えると、村長さんは、
「何じゃそうか…」
と、ホッとした様な笑顔を見せた後で、
「水晶が濁ったもんじゃから、変に勘繰ってしもうたわい」
と、不穏な発言をしてみせた。
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