百二十五話目 御使い様③
6月26日の更新です。
本日も宜しくお願い致します
2019年4月15日 誤字修正致しました
「酷使されるそのお姿を、女神様は嘆き哀しみながら見ておられ、遂に私をお作りになられました。そして、それが上手く行くと、他の精霊達を次々に勇者様の下へ送って下さったのです 」
コローレ、もとい。ラング・ド・シャの話は続いている。
まるで、神話でも語る語り部の様ーーあっ、いや、ある意味これは神話だよな?ーーに、時折身ぶり手振りを加えながら話続けるラングの、遠くを見る様な、何処かボ~っとした視線の先に映っているのは、その勇者様なのだろうか?
「勇者ナツヒコ様の下へは、私を含め全部で10の精霊がやって来ました。火、水、風、土、樹、雷、光、闇、空間、そして時間の精霊を携えたナツヒコ様は、その全ての精霊を優しく迎えて下さり、チョセーン国の狂王の目を盗みながら、段々と力をつけていかれたのです」
そう言いながら、ラングは少しだけ微笑んだ。きっと昔の冒険を思い出しているんだろう。
勇者さんは【ナツヒコ】さんと言う人らしいし、僕の知らない風や土、花…はいないのか。
えっと、樹や闇の精霊達と一緒に、ラングはどんな冒険をしたんだろうね?
「ナツヒコ様は、どれだけ辛い目に合っても、泣き言1つ言わない強い方でした。……そうですね。今の主様であられる、シエロ様に良く似ているかもしれません。優しくて、芯の強い方でした。フフフ、あの方も頑固で、私達は良く手を焼かされましたねぇ?」
僕の知らない顔で、僕の光の精霊は穏やかな笑みを浮かべた。不思議な気分だけど、ラングが一緒に冒険した他の精霊達は、風華でも実里でも無い精霊さんなんだよね?
一体、どんな精霊達だったんだろう?
フフフ、さっきから、どんなだったかばかり気にしているなぁ…。
何て考えていると、不意にラングは顎に手をやって、少し考え事をした後、また口を開いた。
考える時のその癖は一緒なんだ。と、何だか訳の分からないところで、少し嬉しくなった。
「あぁ、ナツヒコ様は素晴らしい方でしたが、名前をつける能力だけが壊滅的でしてね?確か、風がソウジキ、水がジャグチでしたかね?フフフ、私には2人の名前の由来等は分かりませんが、シエロ様とマモルの顔を見る限り、矢張とんでもない名前なのでしょうね?」
「掃除機に蛇口…。予想以上にヤバイネーミングセンスッスね?」
「もしかしてだけどさ?火の精霊さんの名前、火鉢か囲炉裏だったりしない?」
恐る恐るラングに問いかけると、
「おや?良くお分かりになられましたね?火の精霊の名前は確かにヒバチでしたよ?」
何て答えが返ってきた。
おっ、おぅ。
ヤバイ、兄さんとこのカグツチ君につけなくて良かったぁ~。実は2つとも候補の名前だった何て言えない…。
すいません。ネーミングセンス、ナツヒコさんと似てるかもしれません。あはははは。
不思議そうな顔をしている皆には悪いけど、僕は笑ってごまかした。
「ら、ラング、お話の続きは?」
って言うか、無理矢理ごまかした。
もう、さっきまでの様なセンチメンタルな感情は吹き飛んでいた。
「そうですか?そうですねぇ、力をつけたナツヒコ様は、私達の力も使いながら死闘を繰り広げ、3月の時を経て魔王を倒されました。そして、魔王を倒した後は私達と共にチョセーン国から逃げ出して、天界へと戻りました」
戻った。のは天界か…。
と、ラングの表情が辛そうな物へと変わる。
「その後、ナツヒコ様は天界にてその一生を全うされましたが、終ぞ元の世界へ戻る事は叶いませんでした…。実は、チョセーン国の使った魔法が余りに雑で不完全なものだったので、女神様でも解く事の出来ない呪いとなってしまっていたのです」
これで、私の話はお仕舞いです。と言いながら、ラングは目を伏せた。
《ポンッ》
話終えたラングは、目を伏せたままコローレの姿に戻ると、ゆっくりと目を開けて笑った。
「フフフ。柄にも無く語ってしまいましたねぇ?」
「ラング様、勇者様がお亡くなりになった後、他の精霊様達はどうしたのなの?」
「他の者達ですか?ナツヒコ様の影を求めて次の勇者に付いてみたり、土地神として籠ってしまった者もおりましたねぇ?あぁ、そうそう。さっき出てきたヒバチはシエロ様のご実家の裏山にいるアレですよ?」
「え?裏山の火の精霊って…。ママぁ!?」
「フフフ。次にアレに会われた時にでも、名を呼んでみては如何ですか?」
「無理無理!消し炭にされそうだもん!!そんな大切な名前、僕なんかが呼んだら駄目でしょ?」
暗くなってしまった雰囲気を打ち消す様に、僕達は無理矢理明るい声を出した。
その内、ナツヒコの精霊達を登場させられたらな~。何て思っています!
本日も此処までお読み頂き、ありがとうございました。
明日もまた18時頃に更新させて頂きますのて、宜しくお願い致します




