百十八話目 号泣と初めまして
6月19日の更新です。
本日も宜しくお願い致します
「あー。あ゛ーーー!うわぁ゛ーーん」
360度全てを森に囲まれた、小さな空き地の真ん中で、盛大に泣いているのは僕だ。
「うわぁ゛ーーーん!あーーーん!」
40過ぎたおっさんが、子供みたいに泣くなよ。何て今だけは言わないで下さい。
それだけ酷い目にあったんです。
僕は高いところが怖いのです。
何度も止めて!止めて!と、叫んだのです。止めても止めてもくれなかったけど…。
「ひっ、ひぐっ、いうぅ゛~~。あーーーん!」
僕も流石に良い大人がギャン泣きするのはな~?何て、頭の片隅では分かっているから、何とかして泣き止もうとはするんだけど、勝手にしゃくりあげてくるのまでは止められず、
「よしよし」
「かわいそかわいそな?」
「シエロ、どっかいたい?いたいの?」
「う゛ぅ~」
何て、風華と美里、シャドに慰められても僕の涙腺を止める事は出来なかった。って言うかさ?きりもみ飛行とか、八の字飛行とか、マジ無理!マジで死ぬかと思ったんだからね!!そこは反省してもらいたい!!!
「で?言い残す事はありますか?」
「「すいませんでした!!」」
「すいません。何て言葉だけで本当に許されるとお思いですか?特に、とかげ?道中、俺は何度お前を止めたか、覚えているか?」
「「誠にもって、申し訳ありませんでした!!!」」
僕の涙の元凶2人は、絶対零度の、凍てつく笑顔を浮かべたコローレと咲良に挟まれて、真っ青な顔をしながら土下座して謝っている。
いつもならそんな2人に突っ込んだり、コローレ達を諫めたりするんだけど、今の僕にそんな余裕など無い。
「うぅ゛ぐぅ~~。ヒック、ンックうぅ~~」
何せ、勝手にしゃくりあげてくる自身の涙と、横隔膜を制御出来ないくらいだ。【お話し中】の彼らを止める。何て芸当、今の僕には無理無理。無理ったら無理!
「泣いているのは誰かな?」
と、木の陰ーーまぁ僕の周りの景色全部木だけどーーから、女の子が顔を出した。
まぁこんだけ大きな声で泣き叫んでいれば、近くにあると言う隠れ里から人が来てもおかしくはないよね?
「ヒック、ンック…」
「おや、子供かな?……可愛いヒューマンのお嬢さん、何でこんなところで泣いているのかな?」
木陰から顔を出したのは、金色の腰まである髪の毛、その前髪を編み込んでカチューシャの様にしてとめている、瞳の真っ青な女性だった。
芯の強そうな、でも優しげな瞳で、僕を見る。
麻を紡いで作った様な、つなぎに似た動きやすそうな服装の女性は、ゆっくりと此方へ寄ってきた。
つなぎに不釣り合いな皮のホルダーから手を外さないところを見ると、あれは武器で、大分彼女に警戒されてしまっているらしい事が見てとれる。
当然だ。こんな山奥の森の中でワンワン泣いている子供とか、僕だって怪しむわ。
でも、僕は今、警戒心とか、命懸けのジェットコースター恐すぎだ!!とか、年甲斐もなく泣いていた事とか全部吹っ飛んでしまっていた。
現に、まだ少ししゃくってはいるものの、殆ど涙は止まっている。
「ヒック。森の、ンクッ人?」
「おや?君は我々をご存じなのかな?」
通称【森の人】つまりは【エルフ】
今、僕の前には、ゲームや小説、漫画や映画なんかでお馴染みの、耳が長くて魔法に長けた、不老長寿の種族が立っていた。
ただ、シエロを号泣させたかっただけですwww
反省はするが、後悔はしてません!!
本日も此処までお読み頂きまして、ありがとうございました。
明日もまた同じ時間に更新致しますので、宜しくお願い致します




