百十七話目 隠れ里
6月18日の更新です。
本日も宜しくお願い致します
「えっ!?葵君帰っちゃうの?」
出したお粥をモソモソ食べながら、葵君は食堂内に爆弾を投下した。彼が目が覚めてからのこの展開が余りに急過ぎて、僕は思わず、大きな声を出してしまう。
「いや。何も帰ってもう此処へ来ないって訳じゃないッスよ?ただ、1月以上村を空けちまったんで、ちっと村の様子を見に行って来ようかな~?とか思っただけッス」
「いやいやいや。それでもだよ!君、昨日魔族領で倒れて此処へ帰ってきたばっかりなんだよ?しかも自分で歩いて帰ってきた訳でもなく、だよ?隠れ里って、此処から大分離れてるんでしょ?そんな状態での長旅は、いくらなんでもまだ許可出来ないよ」
白目向いて倒れてた人が今日帰ります。は、流石の僕でも許可出来ない。
せめて1週間は様子を見ろ!と忠告する僕に、流石に1週間は長過ぎるッス!と泣きつく葵君。そんなゴタゴタを横目に、黙々と朝ごはんを食べていた宇美彦が、
「んじゃあ、お前も一緒に行ってくれば?」
と玉子焼きを頬張りながら呟いた。
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《ゴーーー》
「速ぇえええええええええええ!!」
ドップラー効果を効かせる勢いで葵君が叫ぶ。
あんまりキャーキャーと楽しそうに叫ぶから、背中に乗せてくれているジェイド君も、満更でも無さそうにアクロバット飛行なんかしてはしゃいでいる。
あの後、
《「【主治医】が一緒なら良いだろ?何、此処なんて前は平気で空っぽになってたんだぜ?本当は留守番が居るってのも珍しいくらいだったんだ」》
《「それに、葵が世話になってる隠れ里は、シエロも1度行って挨拶しといた方が良い場所だ。折角の機会だから行ってこいよ」》
何て宇美彦に薦められて、隠れ里なんて響きが大好きな僕は、気がついたらコクりと頷いていた。
《「マジッスか!よっしゃ!!」》
しまった!とは思ったものの、あんなに喜ばれてしまっては、今更やっぱり駄目!とは言いづらくて、結局ジェイド君も巻き込んで、僕と葵君は、彼がお世話になっている。と言う、隠れ里へ向かう事になった。
……のだけど。
「すげーー!」
『フハハハハ。速いであろう。凄いであろう。素晴らしかろう!』
アジトを出てから早一時間。飛び始めてから2人ともずーっとこんな感じだ。ジェットコースター系が苦手な僕は正直しんどくなってきていた。
前にジェイド君と飛んだ時にも助けてくれた咲良が、前と同じくチャイルドシート宜しく僕の体をガッチリ抱えてくれてはいるものの、それでもこの浮遊感と、剥き出しで戦闘機に乗せられている感は慣れない。
「後、どれくらいかかるのかな?」
「えっ?何ッスか!?」
「どーれーくらい、かーかーりーそーうー!?」
楽しそうな葵君の耳に向かって叫ぶ。
「そうッスねぇ?このスピードなら、後4時間くらいで着きそうッス!!」
嫌がらせしたのにちっとも堪えた様子の無い葵君の、良い笑顔付きの言葉に、今度は僕が白目を向く羽目になったのでした。
シエロにとっての悪夢再びww
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