閑話 アトラとスペア②
6月8日の更新です。
本日も宜しくお願い致します
ユートさん達が魔族領に向かってから3日が経った。
「スー、おはよ。飯、出来てるぜ?」
「おはヨ。ごめん、お寝坊しちゃっタ」
「今日は2人しかいねーんだから気にすんな。ほらっ、食っちゃおうぜ?」
「ありがと」
「おぅ!」
シエロ程美味かぁねぇけど、今作ったばかりの朝食をスーに手渡す。
今朝の朝食は、まるパンに茹でた卵と、燻製肉を薄く切ってカリカリに焼いたやつ。それに野菜が入ったスープ。以上!
まるパンは昨日買ってきたやつだし、此処にシエロがいたらもっと豪華な朝食になるんだけど、俺が作ったんならこんなもんだ。
「凄い!ご馳走だネ?」
「ん、んな事ねぇよ。ほら、冷めねーうちに食おうぜ?」
「うん、イタダキマス!」
こんな簡単な飯でも、スーはニコニコしている。
美味いって言ってもらえるのは、こんなに嬉しくなるんだな?……俺もシエロに言ってやってたかな?
「アトラ!このお肉美味しいネ!?どうやって作るノ?」
「あ?あぁ、燻製肉の事か?これは、燻製肉を薄く切って焼いただけだぜ?元の燻製肉はシエロが作って置いてったやつだから、帰ってきたら聞いてみ?」
「うんっ!!」
シエロの名前を出すと、スーの笑顔がまた更に輝きを増した。
「ぷっ、お前は本当にシエロが好きだなぁ?」
思わず吹き出す。
「うんっ!だってね?シエロは僕ノ世界に色をくれたノ!」
「色?」
「そう!僕ノ世界は、シエロに会うまで灰色だったんだヨ?」
「ふーん」
意味が分からず生返事みたいになってしまった。けど、すぐに俺にもスーが言いたいことの意味が分かった。
魔王軍に家族を皆殺しにされた時、俺も俺の世界から色が消えた気がしたから。
「そっか。じゃあシエロは恩人だな?」
「オージン?」
「恩人。お前の力になってくれた人って事だ」
「恩人!うん、そうだね?シエロは恩人だね!?」
キャッキャッと身体を揺らしながら喜ぶスー。
うん。俺もユートさんやアスミさん。ウミヒコさん達が居たから今があるんだ。スーの気持ちは良く分かるよ。……照れ臭いから言ってやらないけどな?
「アトラぁ」
「ん?」
顔を上げると、珍しくスーが真面目な顔をしていた。
「どうした?」
聞いてやると、スーは1度コクリと頷いた後で、
「僕ネ?シエロの役に立ちたいノ!」
なんて真っ直ぐな目をしながら言った。
「なんだ、そんな事か。スーはがんばり屋だからな。シエロの役にくらいすぐ立てるさ」
「…うん!ありがと、アトラ」
「おう!」
慣れない事は言うもんじゃねぇな?顔が熱い。
でも、スーは喜んでたし、俺も満更でも無いから、顔が熱いのくらい我慢してやるか。
「ほらっ、早く食っちまうぞ?」
「うん!」
ニコニコしながらパンを頬張るスーを見てたら、こっちまで嬉しくなった。
よし、これ食ったらまた色々な事をスーに教えてやろう。そして、こいつの笑う顔をもっと見てやろう。
この後、スー君は精霊化して女神に連れていかれます。
シエロの役に立ちたいスー君からしたら良かったのですかね?
本日も此処までお読み頂き、ありがとうございました。
さて、次話から新章となるのですが、また少し書き溜めのお時間を頂きたいと思います。
一応1週間程を目安としていますが、また遅れてしまいそうな時はご連絡させて頂きます。
休んでばかりで申し訳ありませんが、また宜しくお願い致します




