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閑話 アトラとスペア①


6月7日の更新です。

本日も宜しくお願い致します。



 ユートさん達が魔族を連れてきた。


「ただいまアトラ。今日から暫くの間、この子を預かる事になったんだ。アトラも仲良くしてあげてね?」


「こんニちハ」


 シエロの後ろに隠れたつもりで全く隠れられていないそいつは、ユートさんに促されて俺の前へと出てくると、ペコリとお辞儀してきた。


 魔族特有の角は見えなかったけど、細長い耳と少し浅黒い肌が、こいつを魔族だと知らしめていた。


 変にキョドっているのも、真っ赤な髪の毛も気に入らない。


 第一、俺の家族や村の人達を殺しまくった魔族何かと、仲良くしろっているユートさんの方に問題があると思う。


「アトラ、アトラ」


 目の前の魔族を見上げながら睨み付けていると、魔族の隣に居た筈のシエロが、いつの間にか部屋の端に移動して俺を呼んでいた。


「んだよ」


 機嫌悪くシエロに近づく。俺の自慢の尻尾もゆらゆらと落ち着き無く動く。何だかイライラしていた。


「アトラ、急にスー君を連れて来ちゃってごめんね?あっ、スー君って言うのは彼の事でね?見つけた場所に置いてはおけなかったんで、此処まで連れて来ちゃったんだ。本当にごめんね?」


「何でお前が謝んだよ」


 シエロが謝る必要は無い。アジトの…このクランのリーダーであるユートさんが決めた事だ。気に入らないからと言って、俺がとやかく騒ぐ訳にはいかない事だって分かってる。


 ただ、気持ちが追いつかないだけだ。


 そうシエロに説明してやる。こいつは俺達の仲間になってまだ日が浅いから、時々こうして教えてやるんだ。


 そしたら、


「そっか、アトラは偉いね?でもさ、僕はアトラとスー君に仲良くなってもらいたいんだーーー」


 何て言いながら、シエロは【スペア】何て変な名前の奴の経緯やら何やらを話始めた。


 でもそれは、にわかには信じがたい様な話が次々と飛び出してくるもので、話を聞き終わる頃には、俺の中で()()に対する気持ちも変わっていた。


 自分の仲間の、それも自分達のリーダーの身体を魔法の練習をする為の的にする何て、意味が分からない。


 俺は馬鹿だから、ほむんくるす?とか言うのはいまいち分からないけど、やってる事が無茶苦茶だってのは良く分かる。


 良く見ればスーが着ているのはボロ雑巾か?ってくらいボロボロで、あちらこちらに切れた箇所や焦げたみたいな痕が残っていた。これ全部、同じ魔族の奴等にやられたのかと思うと、俺の中でこいつに対してじゃないイライラが復活してきて、やっぱり魔族は許せない。なんて思えた。



ーーーーーー

ーーー


 ユートさんが皆を引き連れて魔族領へと向かって行った。


 こんな真夜中から遠征に行くんじゃ大変だけど、ユートさん達は移動手段があるから大丈夫だろう。


 残ったのは俺とスーの2人だけ。


 アルベルトのおっさんも、他の皆もユートさん達の為に情報収集へ出かけていったから、こんなだだっ広いアジトの中で、こいつと2人っきりになった。


「スー、まだ寝てて良いんだぜ?」


「ん。僕モ、シエロ達、お見送りしたイ」


 頭をグラングランさせながら俺の隣に立つスー。


 いつもなら夢の中に居るスーも、やっぱりシエロが心配な様だ。


「スーはシエロが好きだなぁ?」


「ん。僕、シエロ大好キ!」


「照れるからやめてよ…」


 顔を真っ赤にしたシエロがスーの頭を撫でながら、


「じゃあ、行ってきます」


 と、出かけの挨拶をした。スーの頭を撫でるのに、すっげー背伸びしていたのを、俺は見なかった事にしてやった。





「じゃあ、先ずは掃除でもするか。スーも手伝ってくれな?」


「はーい!」


 誰もいないんだったらする事は1つ。アジトの掃除だ。邪魔なところに座り込んだりする奴がいないと、掃除も捗るよな?


 つっても、最近はシエロが毎日きれいに掃除してるから、そこまで汚れてもいないんだけどよ。


「スー、窓拭きしようぜ?」


「マドフキ?」


「窓拭きも知らねーのか?窓拭きはな?ーーー」


 俺はスーに窓拭きの極意を教えてやった。


 スーは何でも楽しそうにやるから、いつもは苦痛な作業とかも楽しくなるんだ。




1~2話なんて言いつつ、長くなってしまったので明日も閑話を更新させて頂きます。短くまとめられなくてすいません(汗)


本日も此処までお読み頂きまして、ありがとうございました。

明日も18時頃に更新させて頂きますので、また宜しくお願い致します

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