閑話 ランスロット・フェザーの休日
6月6日の更新です。
本日も宜しくお願い致します
シエロ達がスペアを拾ったり、魔族領にてどんちゃん騒ぎをしていた。そんな頃…。
このところ、学園内では休日や放課後になる度に、ご機嫌な様子で何処かへと向かう、薬草学教師、ランスロット・フェザーの姿が話題になっていた。
曰く。彼女が出来たんだ!!
曰く。え?新しい学術書を手に入れたんじゃない?
曰く。新しい研究対象でも見つけたんだよ
等々、様々な噂話が生徒の間で飛び交っていたのだ。
しかし、その【噂】の殆どが、やれ新しい本を買っただの、新しい研究対象が見つかっただの、最初の恋人が出来たと言う件以外に浮いた話が出てこないのが、彼が彼たる所以なのであろうか?
まぁ、その様な噂話は置いておくとして、彼はいつもの様に足取り軽く、とある場所へと歩みを進めていた。
「お早うございます!今日の気分は如何ですか?」
そして、学園の外れにある植物園の一角で歩みを止めると、一際大きな葉っぱの前で、誰かに挨拶をした。
その表情はすこぶる明るく、楽しそうだった。が、しかし辺りに人影は無く、その場には2階建ての建物に相当するであろう巨大な葉っぱしかない。
《ゴソッ》
と、巨大な葉っぱが身じろぎして動き…。
そして、少しその頭を持ち上げると、つぶらな黒い目が葉っぱの下から現れた。
巨大なセクシー大根に目がついていると思えば分かりやすいかもしれないが、まぁ、そんな感じである。
『あっ、せんせぇ。お早うございます~』
独特な訛りを伴った言葉で挨拶を返すセクシー大根は、ランスロットの姿を見つけると、嬉しそうに目を細めた。
「はい、お早うございます。マンドレイク君の今日の体調…気分を教えて頂けますか?」
『きょぉおの気分なぁ?きょぉおは、特に良くも悪くもあらへんよぉ?強いて言えばぁ、根っこの辺りが潤っとってぇ、気持ちええな~ってくらいかなぁ?』
ニコニコしながらセクシー大根…もといマンドレイクはランスロットに今日の体調を伝える。
ランスロットは、その言葉を手に持った分厚いノートに書き記していく。
ノートには流れる様な綺麗な字で、【観察日記】と書かれている。とかく、マンドレイクの生態はまだまだ未知な部分が多いのだ。
「ふむ。あの肥料は効きませんでしたか…。次はもっと貴方が喜ぶようなものを作ってみせますよ!」
ノートを閉じたランスロットは、そう目の前のマンドレイクに意気込みを語った。
『あっ、でもぉ。この間もいでかはった根っこの部分から、新しい根っこが生えるのぉがはょうなったきぃがするよぉ?』
「本当ですか?」
『うん~。ほら、此処んとこぉ』
《ボコッ》
マンドレイクがニコニコ?しながら自身の身体を土から出してみせる。確かに少し違和感のある根っこ…前足?の先っぽに、少々の段差はあるものの、新しい先っぽが生えつつあった。
「あぁ、本当ですね?ふむ。でもシエロ君が置いていってくれた魔道具の影響かもしれませんし、要経過観察。と言ったところですね…」
《カリカリカリ》
ランスロットは、今しがた自身が今日のマンドレイクの体調や、その他の事等を書き記したすぐ下に、【要:経過観察!】と書き記し、にじゅうまるでその文章を囲んだ。
「では、今日は何をしましょうか?」
『あっ!きのうなぁ?マジョリンせんせぇから色々教えてもぅたんよぉ~。それでなぁ~?』
「フムフム…」
ランスロット・フェザー。御年七十うん歳。森の一族。
彼は今、彼女が出来た訳では無いが、新しい研究対象と楽しく充実した毎日を送っている。
尚、何も知らない筈の生徒達の中に、正解者が複数いたのは余談である。
落差wwと笑っていただけたら嬉しいですw
本日も此処までお読み頂きまして、ありがとうございました。
明日も閑話をあげさせていただきます。また宜しくお願い致します




