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百十四話目 結末


6月5日の更新です。

本日も宜しくお願い致します


2019年4月14日 誤字修正致しました



「じゃあ、行ってきまス!」


 ニコニコしながら、スー君はシルビアーナに連れられて、その日のうちにアジトから出ていった。


 あの後、スー君は、


《「シエロ達の(ちから)ニなれるなら、ぼく行ク!」》


 と、いつものニコニコ顔をキリリとさせて、シルビアーナに宣言し、僕達に向き直って、


「頑張ってくルからね!?」


 と、笑った。


 僕はそんなすぐに決めなくても良いのに。何て思ったけれど、スー君の決意は固くて…。


「バイバーイ」


「気をつけてね?」


「うん!」


 最後までスー君の決意が覆る事が無く、スー君は此方へ手を振り振り、シルビアーナに手を引かれて行ってしまった。


 シルビアーナがコローレの身体を使ったままで行ったもんだから、暫く僕は、2倍寂しい想いをする羽目になった。そのお蔭で調理や洗濯のミスが増えたよ。


「フフフ、意外とシエロ様は寂しがり屋さんですよね?」


 カウンター越しに笑うコローレ。


 あれから1週間後の昨日、やっと帰ってきたコローレだったけど、今の態度はちょっと腹立つ。


「うるさいよ、コローレ。全く、ちっとも帰ってこないんだからさ」


「申し訳ありません。流石にあの場にスー君をお連れした後で、じゃあ。と、すぐに置いて帰るのも憚られるものがありましたので、彼が少し天界と言う場に慣れるまでのサポート役を勤めてから、帰って参りましたものですから、思ったよりも時間が経ってしまいまして…」


「……むぅ」


 そんな風に言われたら、僕が何か文句を言う事なんか出来なくて、僕は無言のまま、コローレを睨んだ。


「フフフ。その他に何か変わった事はありませんでしたか?」


「……うん。後はねーーー」


《カチャカチャ》


 さらりと流すコローレの年の功っぷりに完全降伏した僕は、皿洗いをしながら、更にあの後の出来事を彼に説明する事にした。



 先ずは月島さんの事だ。


 月島さんは、スー君とコローレを見送った後、すぐに王様直属の研究者を数名と、腕利きの冒険者を護衛として引き連れて、再度魔族領の研究所跡へ出掛けていった。


 これは勿論葵君も一緒で、彼らは1週間経った今でも帰ってきていない。


 一昨日葵君から来た連絡では、月島さんが未知の研究対象を相手に暴走寸前で、止めるのが大変だ。何て愚痴っていたのを思い出す。



「そう言えばユートとアスミもいませんでしたね?」


「あぁ。裕翔さんと亜栖実さんは、月島さんが居る周辺の地帯を調査してるよ?自分の身体すら実験に使っちゃう様なマッドサイエンティストが居た場所だからね?周りの魔物達の中に変異体がいるかもしれない。って事で、調査に出掛けたんだ」


「なるほど、それでこんなに静かだったのですね?」


「そうそう」


 今アジトの中は僕とコローレしかいない。


 宇美彦とアトラは夕飯の買い出しに出掛けていていないし、学者のアルベルトさんは、ウキウキしながら月島さん達に研究者としてくっついていった。


 他の仲間達も、情報収集やら依頼やらでアジトにはいない。


 だから、いつもは騒がしい此処も、今はシンと静まり返っていた。


「ふぅ。スー君、今頃どうしてるかな?」


「フフフ。昨日はブロナー様から手解きを受けて、魔法の練習をしてらっしゃいましたよ?とても楽しそうに、練習をなさっておいででした」


「そっか…。ンフフ、スー君が楽しいならそれでいいや」


 スー君の笑顔が頭に浮かび、自然と僕にも笑顔が溢れる。


『しかし、スー君も精霊になっちゃったのねぇ?」


『んだな?しかし、精霊を産み出すだなんで、おめさまは何しただ?」


『全くです。全く、非常識な」


『シエロだもんね~?』


「う、重い…」


 僕の左右に風華と実里、僕の頭に顎を乗せた咲良、更にそんな咲良の頭の上にシャドが乗る。と言う密集具合。お腹の中から出てきて即この形を取れるってどういう事なの!?打ち合わせ済みなの??



「ねぇ?重いは失礼じゃなくて?」


「んだんだ」


「僕らの想いがそれだけ重いって事ですよ」


「誰が上手い事を言えと言ったよ…。それより皆どうしたの?洗い物が出来ないんですけど……」


 両腕を左右から絡ませる様にしてホールドされてしまうと、朝ごはんの後片付けが出来なくて困る。


 え?胸当たってるだろ?羨ましいって?フッ、姉さんズの風船爆弾を味わっていた僕からしたら、2人のはまだまだ序のk「いててててて」


「悪かったわね!」


「むぅ。揉んだらデカクなるべがな?」


「実里、はしたないからお止めなさい?」


「あいよ」


「で?マスター。スー君のアレはどうやったんですか?」


 僕は風華に頬っぺたをつねられ、実里は胸をゴニョゴニョしてコローレに諫められている。そろそろ収拾がつかなくなってきたな~。何てぼんやりと考えていたら、咲良が軌道修正してくれた。


 してくれたのは有り難いんだけど…。


「ん~。僕にも何が何だか分からないんだよね?無我夢中だったし、それに…。」



『『『『相変わらず、君は無茶をするねぇ?』』』』



 あの声は誰だったんだろう?絶対、知ってる筈なんだけど、どうしても思い出せない。


「どうしました?」


「ううん、何でもない。それよりさーーー」



◇◆◇◆◇◆


《side:時◎の△◆霊》


『『『『やっぱり仲が良いなぁ。フフフ、いつも楽しそうでいいねぇ』』』』


 輪郭がグニャグニャとはっきりしない空間に、形のはっきりしない人影が揺らめいている。


 男なのか女なのかも、若いのか年老いているのかも分からぬ声が空間の中に奇妙に響く。


『『『『『フフフフ、時間は動き出したよ?これから君達は、どうするのか、どうしていくのか、楽しみにしているよ?』』』』』


 グニャグニャと不定形な場所から、楽しそうに、愛おしそうに彼等の様子を見ていた影がユラリ、と揺らめくと、空気に解けるように消えた。





本日も此処までお読み頂きまして、ありがとうございました。

最後少し駆け足気味になってしまいましたが、これにて今章はお仕舞いとなります。

次は、1~2話分の閑話を挟みまして、新章へと移らせて頂く予定です。


閑話も今日と同じ時間に更新させて頂けると思いますので、また宜しくお願い致します!


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