九話目 回想④
1月22日の更新です。
本日は視点を変えて、シャーロット・クレア目線となっております。
本日も宜しくお願い致します。
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《side:シャーロット・クレア》
今、私の前には、あのシエロ君が座り、嬉しそうにケーキを頬張りながら、冒険者になってからのこれ迄のお話しを聞かせて下さっています。
あの頃と変わらぬ、ビロードの様な美しい金色のお髪。
まるでフローライトの様な深い青緑色の瞳には、キラキラと光を湛え、陶器の様な決め細やかな肌にはうっすらと赤みが差し、彼が作り物では無く、確かに生きている事を伝えてくれます。
そして、ぷるぷるとよく動く唇はさくらんぼの様に瑞々しく艶やかで、最後にお会いした時よりも尚、その魅力を昇華させておいででした。
……これで中身まで芸術品の様に大人しく品があれば近寄りがたいのでしょうが、彼の愛嬌たっぷりの、表情豊かな性格のお蔭……と言っては元も子もありませんが、とても親しみやすいお人柄をしておいでなのですわ。
今も、これまでの報告
と言うよりも半分愚痴になっていますしね?
後、お口の端にクリームがついていますわ。
……相変わらず可愛くていらっしゃいますのね。
それにしても、まさか、あの様にひ弱そうな青年からシエロ君が現れるとは、思いもよりませんでしたわ。
仲間の変身も見抜けぬ様では、私もまだまだひよっこ。と言うことですわね。
「で、ですね?初めて冒険者として依頼を受けた先でまで待ち伏せされていたんですよ?そのせいで依頼は失敗してしまうし、散々過ぎますよね?」
「それは…。ギルドマスターはその事について何と?」
それにしても、この方は何故殿方から声をかけられるのか…。
まぁ、私が殿方のお立場でも声をかけてしまいそうではあるのですが、それにしても不憫ですわ。
「あぁ、流石にその冒険者には厳重注意と、罰金。僕には依頼失敗の記録はその時に限り、つかないと言う処置をして頂きました。まぁ、その事がうちのリーダーにバレて、暫く危ないからと外出禁止になっちゃいましたけどね?」
あの時は参ったな~と軽く笑ってらっしゃいますけど、シエロ君が仰る【リーダー】と言うのは、勇者様の事ですわよね?
……アスミ様やウミヒコ様も確か同じチームでしたし、何でしょう。私、シエロ君を妨害した冒険者の方の安否の方が心配になってきましたわ。
ニコニコとカップにそそがれた甘いカフェオレを飲むシエロ君の姿に、少々頭痛を感じていると、ふと、彼の右手の辺りに目が行きました。
「しえろ、たいへんねぇー?」
よしよし、とでも言う様に彼の右手を優しく撫でる、手乗りサイズの人形の様な出で立ちの、小さな少女。
その殆どをしめる足先まで伸びた黒髪は、全ての光を吸収してしまうかの様に真っ黒です。
残念ながら長いお髪のせいで、私のところからではそのお顔を拝見する事は出来ませんでしたが、シエロ君は確か、彼女の事を【シャド】と呼んでいらっしゃいました。
シャドとは、シャドウ。つまり、影の事で闇属性の妖精様の総称だった様に記憶しています。
普通、妖精様のお姿を見る為にはそのお方と契約する他無く、契約者のみにその姿が見える筈です。
ですが、この方のお姿は、しっかりと私の目でも見る事が出来ていました。勿論、その愛らしいお声を聞く事も。
これがいつもなら、まぁシエロ君ですからね。で済ませてしまうのですが……。
「あっ、この子、気になりますよね?ほら、シャド、初めましてして?」
私とした事が、余りにもジロジロと不躾に見つめてしまっていた様です。
私の視線に気がつかれたシエロ君が、妖精様に挨拶をする様にとおっしゃって下さいました。
「あ~い!しゃろでしゅ!よぉしくおねがいしましゅ!!」
……可愛い。
元気良くあげられた左の手と、漸くお見受け出来た可愛らしい笑顔を見ていると、何もかもどうでもよくーーー
「こう見えて、シャドはここだけの話し、精霊なんですよ?」
ーーーなりませんでした。
シャーロット相手になると爆弾発言が多くなる気がしますww
本日も此処までお読み頂き、有り難うございました。
明日もこの時間に更新させて頂きますので、また宜しくお願い致します。