表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
108/293

百六話目 緊急事態


5月28日の更新です。

本日も宜しくお願い致します



《バタバタバタバタ》


 王都の石畳を鳴らしながら、僕達はアジトへ向け、全速力で走っていた。


「おっ?ありゃあアスミ様達じゃねぇか?」


「本当だ。あんなにお急ぎで、どうしたんだ?」


 しかし、平日の真っ昼間の大通りは行き交う人も多く、普通のスピードでさえ上手く前に進む事が出来ないでいた。


 ましてや、今は僕もだけど彼らは勇者パーティーのメンバーで、超がつく程の有名人だ。目立つ事、この上ない。


 流石に取り囲まれたりはしないものの、人が彼ら見たさに更に増えるのも無理は無い。無理は無いんだけど!!


 僕は、街中で転移の魔法が使えないと言う決まりが、今日ほど腹立たしく感じる事は、後にも先にもこれっきりだろうな。と、やきもきしながら考えていた。



「シエロ君、裏道から行こう!」


「そうだな!こう人が多くちゃ、ぶつかってしまう」


「分かりました!」


 亜栖実さんの先導で、僕達は平日でも人だらけな大通りを避け、脇道に入る。


《バタバタバタバタ》


 大通りよりは狭いが、殆ど人がいない裏通りのお蔭で、僕達はまた走るスピードを上げる事が出来た。


 遠巻きに見ていた人達も、流石に後を追いかけて来る。なんてガッツのある人もおらず、ちょっと胸を撫で下ろす余裕も出てきて、さっきまで感じていた苛立ちも少しは増しになった。



 後、少しでアジトだ。


「スー君…」


 僕の呟きは、()()()の足音に掻き消された。



◇◆◇◆◇◆


《side:???》


 時間は少し巻き戻り、シエロ達が瓦礫の山と化した、元魔族の研究所から飛び出して行ったすぐ後の事。


 転移魔法を使い、姿を消した彼らを見届けていた影が、物陰より姿を現した。



「勇者一行、研究所を後に致しました。矢鱈と急いでいる様子ですので、おそらくは、何か掴んだものかと…」


《「そう。フフフ、間に合うと良いねぇ?」》


 物陰から現れた黒尽くめの男【イチ】は、フフフと笑うフードの男の笑い声を、通信端末越しに聞いて、首を傾げた。


 今、この場にフードの男が居ないからこそ出来る仕草でもあったが、無意識で出てしまった仕草故に、イチ本人も気づいてはいない。


「恐れながら、間に合う。とはどの様な?」


《「あぁ、イチも知らないんだっけ?んーとね、君達カベルネのスペアは、元々あいつの魔力とか意識を移す為の器でしょ?」》


「はい」


《「で~、それらが入る様に、魔力の限界容量とかは多めに作られてるんだけど、最初から満タンに魔力が入ってたり、自我何かがあったりしたら、カベルネのが入る分が無くなるじゃない?ほら、自分の依り代に抵抗されたりしちゃったら困るでしょ?」》


「…はい」


《「だから~、君達は最初から空っぽのお人形さん状態で生まれるの。カベルネが中に入るか、僕が自我なり何なりを作り出して君達に埋め込むまでは、何もかも空っぽのまま、って訳さ♪」》


「そう、だったのですか…」


《「うん!そうだよ~♪だから、いくら勇者がスペア君を匿ったとしても、魔力が無いただの人形がカプセルの外で活動するなんて、もって1週間。それ以降は体の保持が出来ずに崩壊していくだろうね?寿命ってやつ?フフフ、どうやったか知らないけど、血相変えて飛び出して行ったのなら、たぶん、そんなスペアの秘密を知っちゃったんだろうね~?」》


「………っっっ」


 イチが息を飲む。


《「大丈夫さ、君が助け出した仲間達を死なせたりなんかしないから。さぁ、早く僕の所へ連れておいで?僕がすべからく救ってあげるよ?フフフ、ハハハハハハハハハハハハハハハ」》


「………」


 イチが黙り込む中、通信機から響く、フードの男の高笑いだけが、辺りに木霊していた。




本日も此処までお読み頂きまして、ありがとうございました。

明日も同じ時間に更新致しますので、また宜しくお願い致します。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ