百四話目 探索
5月26日の更新です。
本日も宜しくお願い致します。
《ガガガ、ゴゴ、ン、ズシーン》
大きな瓦礫を裕翔さん、宇美彦、葵君の3人がかりで退けると、そこから地下への階段が現れた。
地下への入り口は、こんなだだっ広い建物の奥の奥にあって、しかも階段下のひっそりとしたスペースに隠れるようにして配置されていた。
こんなとこ、葵君がいなきゃ普通に見逃してしまう様な、そんな場所だ。
「はぁ~。やっと見つけたな?」
「こんなところじゃ、建物が健在だって分かりにくいね?」
「中は真っ暗だな…」
瓦礫を持ち上げた組が、中を覗きこみながら肩や首を回している。
岩の塊を動かしたんだから無理も無いかな?どこか、痛めてなきゃいいけど…。
さて、どれどれ?
僕は、自身の体の小ささを生かして、宇美彦の足の間から階段を覗きこんでみた。
あれ?自分で言ってて涙が…。
《ヒュォオ》
隠された階段からは、風が中から外へ向けて吹いていた。つまり、僕達側へ向けて吹いている。って事になる。
変な臭いとかは今のところしないけど、罠、とかだったりしないよね?
『毒の類いが風に混ぜ混んである訳でも無いわ。一応、中は安全よ?』
おっ、おん。ありがとう。
いつもの様に僕の心をサラリと読んだ風華さんから良い情報を貰ったので、
「風華が、中の空気は今のところ大丈夫だ。と言ってます」
「本当に?ありがとうございます風華様!」
と、皆にも共有しておいた。
ほう、れん、そう、大事!!
ーーーー
ーーー
《カツーン、コツーーン》
やけに響く石の階段を皆で下っている。
あれだけガルネクが暴れたし燃えたしで、地下への階段が崩れていたらどうしようか?何て思っていたけど、意外と地下には影響は無かったみたい。
綺麗な真っ白い階段には、汚れも傷も一切無かったよ。
しかも、さ。
「壁が淡く光ってるから、灯りがいらなくて助かるな?」
「そうですね。これは魔族特有の技術なのでしょうか?」
月島さんが階段横の壁を触る。
月島さんが触った場所は、ボンヤリと光っていて灯りがいらない程度に、程よく明るい。
僕は明るいのはありがたいな~。くらいにしか思わなかったけど、月島さんは流石学者肌なだけあって、素材から気になるらしい。
ボンヤリ光る壁を少し削って、
「後から調べてみます。フフフ、一体どんな成分が含まれているのでしょうねぇ?」
だってさ。
今も階段を下りながら、壁の欠片をいれた試験管みたいな容器をニヤニヤしながら見つめているよ。
これでいて、絶対に足を踏み外さないんだから、変なところで器用な人だ。
そんな風に、ニヤニヤしている月島さんの足取りを、ハラハラしながら見ていたら、いつの間にか階段が終わっていた。
先頭を歩いていた裕翔さんと宇美彦が止まったから分かった。ってだけだけど、僕達6人全員は並べないくらいの小さな丸い踊り場の先に、小さな扉があるのが、ボンヤリ見える。
この扉を開けたら、スー君の秘密が少し分かる。そう考えたら、不謹慎ながらワクワクしてしまう自分がいた。
本日も此処までお読み頂き、ありがとうございました。
明日も今日と同じ時間に更新致しますので、またお読み頂ければ嬉しいです。