百三話目 研究室はどこだ?
5月25日の更新です。
本日も宜しくお願い致します!
「誠治さーん。そっち何かありました~?」
少し離れたところにいる葵君から、月島さんに声がかかる。因みに、葵君は何故か月島さんと僕には敬語で喋る。
「残念ながら、目ぼしい文書等は残っていませんね…。宇美彦、君は何かありましたか?」
「こっちもねぇな。ソラ!何かあったか?」
「ん~。誰かの服の切れ端くらいかな?葵君!これでも大丈夫?」
宇美彦に話しかけられた僕は、殆ど焼け焦げた、でも辛うじて服の切れ端だって分かる程度の、ハンカチよりも小さな布を葵君に手渡し…。
「ありがとうございます。無いよりはマシってなもんですよ」
「葵、どう?」
「いやいや、まだ、シエロさんから渡されてもいねーよ!」
一連の裕翔さんの天然ショーを見てから、僕は苦笑いしつつ葵君に焦げた布切れを手渡した。
「どもッス」
布切れを葵君に渡すと、彼は短い謝意の言葉と共に早速集中し出した。
すぐにまた、葵君の身体が、あの青白い光に包まれる。
ん~、綺麗だな…。
僕は、初めて風華にあった時の、あの淡くて綺麗な光を思い出していた。
そう言えば、あの時もこんな様な光が風華の周りを覆っていたっけな~。
あぁっ、そうそう。
あの骨ね?何とこの研究所で作られた合成獣のものだった。
しかも既に失敗作として殺されて、標本にされた上にエントランスに飾られていたやつらしいよ?見た目は華やかだったから、見栄えはしたらしいんだけどね?
土台が獅子、足が熊、尻尾が巨大な蛇だったんだって。魔族の人達が気に入って、毎日手入れしていたらしいよ…って、意外と骨から得られた情報が一番多かったりして?
「終わったぜ?」
おっと、どうやらもう終わってしまった様だ。
詳しい話しはまた今度ね?
さて、葵君が顔をあげるのと同時に、彼の身体を覆っていた神秘的な光は、スーっと空に溶ける様にして消えていった。
そして、最後におでこの辺りで光っていた光が消えると、葵君は話しだした。
「シエロさん流石ッス!これ、ガルネクに喰われた研究員の1人の服の切れ端だったッス」
「本当に?」
「マジッスマジッス。これで、スペアを作ってた研究室の場所が分かるッスよ!」
「やった!!」
「これで、また何か手掛かりが見つかれば良いのですがね?」
葵君からやっと聞くことが出来た良い報告に、疲れた顔をしていたメンバー達の表情にも明るさが戻る。
「さて、その研究室の場所ッスが……」
「うっ、うん」
「何処なんだ?」
「…………」
僕と宇美彦の問いかけにも応じず、矢鱈と正解発表を焦らす、某司会者の顔を思い出しながら葵君の言葉を待った。
「場所は~……」
「だから、早くしろよ!!」
焦らしに焦らす葵君に、裕翔さんもヤキモキしている。……いかん、この間に耐えきれなくて、意味の無い全力疾走してしまいそうだ。
「研究室の場所は、【下】みたいッスね!」
「は?下って何?」
亜栖実さんが、革のロングブーツの爪先でガリガリと地面を少し蹴ってみる。当然、少し削ったくらいじゃ何も出てこない。
「いやいや、下って言ったら【地下室】っしょ?アスミっちに浪漫は無いわけ?」
「いや?地下室wktkはするけど、建物半壊どころか全壊してるからね?いまいちときめかんさ!」
「おいおい、無駄話してる場合かよ?いつ魔王軍が来るか分からないんだぜ?とっとと探しに行くぞ?」
「「は~い…」」
「あっ、此方ッス」
お父さ…もとい、宇美彦に促され、葵君を先頭に、僕達はまた進みだした。
基本、宇美彦は皆のお父さんポジですww
本日も此処までお読み頂きまして、ありがとうございました。
明日も今日と同じ時間に更新致しますので、また宜しくお願い致します。