九十九話目 揺れ
5月20日の更新です。
本日も宜しくお願い致します
「ゴッゴゴゴッ、コゴロ」
ガルネクの身体の震えが最高潮を迎えた。
心なしかあいつの周りの地面まで揺れている気がする。
《ゴゴゴゴゴゴゴ》
って言うか、建物全体が揺れてないか?これ!?
「うわっ!?」
「何だ?」
「わっ!!何だあの化け物!?」
「げっ!何あれ?キモい!キモいキモいキモい~!!!」
ここで、周囲の魔族や僕の仲間達も地面が揺れている事に気がついたらしく、それぞれ視線をずらした面々がガルネクの異様な姿を見つけては口々に騒ぎ始めた。
特に亜栖実さんはガルネクの姿に嫌悪感MAXな様で、眉間に皺を寄せながら【キモい】と騒いでいる。うん、確かに気持ち悪いかもしれないけど…。
年頃の女性に気持ち悪がられるガルネクがちょっと可哀想になった。
「まっ、まさか!!がっ、ガルネク様なのですか?」
ん?
「嘘だっっ!まだあの薬は完成には程遠い筈、何故それを今使われたのか!?」
「うわわわわわわ、ばっ、化け物…」
ガルネクの部下らしき魔族達は、口々に信じられないと呟いている。さっきガルネクが使った薬はどうやら未完成の代物らしいね?
もしかしたら、本来は理性や何かを残したまま
、パワーアップする為の薬だったのかもしれない。
《ゴゴゴゴゴゴゴ》
「うわっと!?」
そんな事を考える間にも、ドンドンと地面の揺れが酷くなっていくみたいだ。
《ゴゴゴゴゴゴゴ》
《ギシッ、ミシミシミシ》
《ギッ、ガガガガガ》
揺れが酷くなる度に、あちらこちらの壁や柱が悲鳴をあげ始める。
壁や柱には亀裂が入り、天井からは埃や天井の一部がボロボロと落ちて来た。あっ、危ねっ!?
「しししししししし」
人が狼狽える姿を見ながら、まるで笑っているかの様に、さっきまでとは違う身体の揺らし方をするガルネク。
暫く笑うと、すっかり蔓が無くなって細くなったその身体を、ユラユラとゆっくりと横に揺らし始めた。
長さがバラバラになった茨の蔓が、揺れる身体についていけず、不規則にバラバラと揺らめいている。
その感じに、どうにも嫌な予感がして、ガルネクの身体や、その周りを観察してみる事にした。すると…。
「ん?あいつの足下、地面が割れてる…」
天井はともかく、地面は綺麗なものだったのだけれど、ガルネクの足下に当たる部分の床にだけ、大きな亀裂が入って割れていた。
その割れ目から、ガルネクの足…と言うか根っこ?が2本、生えている様に見える。
「まっ、まさか、この揺れって…」
「死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死」
「!?」
ここで僕はようやく気がついた。
こいつ、笑ってるんじゃなくて、ずっと【死】って呟いていたんだ。
《バコォオオオン、バラバラバラ》
天井の亀裂が大きくなり、その亀裂を広げる様に茨がニョロニョロと蠢きながら顔を出した。
太くて大きな蔓だ。
こいつ、身体を再生させる分の力を全部建物の方へ使っていたのか!?
いつまで経っても再生させなくなったから終わりかと思ってちょっと喜んでしまった自分の浅はかさが恨めしい!!
《ズル、ズルル…ビュオッ!》
《ドスッ》
「ぐっ!?」
「あぁっ!?」
誰かの叫び声がする。
天井からズルズルと這うように出てきた茨の蔓が、
守るべき筈のカベルネの身体を貫いたからだ。
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