九十八話目 単純作業
5月19日の更新です。
本日も宜しくお願い致します。
2019年4月14日 誤字修正致しました
「ありがとう、風華」
「どう致しまして☆ほら、次が来るわよ?」
「了解!」
風華に促され、実里に背中を守られながらガルネクの動きに注視する。
ユラユラクネクネと不規則に動く茨の蔓、蔓、蔓。
歪な蛸の足の様に揺らめくそれは、不規則だからこそ読みづらい。
《ビシッ》
「ウィンドカッター」
左から来る子供の胴体くらいの太さがある蔓を、風華が軽く切り裂く。意外にも、ガルネクの茨は何の抵抗もなく切り裂かれた。
切り裂いた蔓は、そのまま霧散して消えていく。どう言う原理か分からないけど、足の踏み場に困る心配はしなくて良さそうだ。
《ビタンビタン》
「クレイウォール」
切り裂けずに、避けた端から挑弾するかの様に戻ってくる蔓は、実里が壁を作って防いでくれる。
しかも、トゲトゲの茨を粘土の壁に埋め込ませて、そこを風華が切り裂く。と言うコンビ技で次々とガルネクの手や足を減らしていった。
そして、僕はと言えば
《ズドォオ》
「《光操作:光付与》やぁあああ!」
僕愛用の剣に、光属性の闇を祓う力を付与して茨を切り払っていた。
僕だからなのか、矢鱈と襲ってくる数が多くて、大規模な選定作業の様になっていた。
それでも、最初は真面目に僕も斬り飛ばしたり避けたりしていたんだけど…。
「ブォオオオ!!」
《ブォン、バォン》
「たぁ!とりゃあ!」
ーーー
ーー
《ブォン、ブォン!》
「やぁ~。たぁ~。」
ーーーー
ーー
《ブォン、バォン》
「………………」
いつの間にか作業化していた。
ガルネクが伸ばしてくる茨の蔓を、適度な長さにカットしていくだけの、簡単なお仕事です。って感じ。
SAN値ェックが起きる前のガルネクの時は、その見た目通りの分析タイプっぽい鞭捌きで絶妙な位置ばかりを攻撃されていた。
勿論、全部の攻撃を避けたからガルネクが化け物化してこうなっているんだけど、それでもギリギリ避けられたって感じで、言う程の余裕なんて無かったんだよ。
でも今は、風華達の手を借りてはいるけど、動きは単調だし、地面に弾かれてくる攻撃にさえ注意していれば、避けられるし攻撃も通る。
ぶっちゃけ厄介さはガルネクがまだ人型だった時の方が、段違いに厄介だった。
ただ、
「クォーン!」
「だぁっ!また生えた!!もう!キリがないんだから!!」
風華が怒るのも無理はない。
だって、ある程度斬り飛ばして茨を減らすと、またにょきにょき新たに生やされるんだもん。
もういい加減うんざりだ。
僕はため息を吐きながら剣を構えた。
ーーーーーー
ーーーー
「グゥォオオ!ユゥルルルルル、ササササササ」
「ん?」
と、僕達が更にある程度ガルネクの体の茨を散髪し終えた時、不意にガルネクがまた唸りながら吼え始めた。
身体をブルブルと震わせて、何事か言葉にならない言葉を叫んでいる。
「ヌヌヌヌヌヌゥー!!ミミミミミミミミ、ナナナナナ」
「ねぇ?何かヤバそうじゃない?」
「右に同じ。アイツ何がおかしねぇぞ?シエロ、気を付けっせよ?」
「うっ、うん…」
殆ど茨の触手が無くなった身体をブルブルと震わせているガルネク。
風華や実里の言う通り、ヤバイ雰囲気しか感じられないが、此処で危ないから。と、見ているだけだったらもっとヤバイ事になる気がする。
いつでも魔法が放てる様に、もしくは動ける様に準備しながら、僕達はガルネクの出方を伺う事にした。
え?先手必勝?
無理無理!
シエロハヨウスヲウカガッテイル
本日も此処までお読み頂きまして、ありがとうございました。
明日もまた18時頃に更新致しますので、また宜しくお願い致します