初めての付加術(エンチャント)
「んー、遠くてはっきりとはわかんないけど、この方向に火山か何かがあるんだよな?」
「あれ、そうか、まあいいか。あそこまでは一緒に行くとして。そうだね、お手並み拝見ってことでこのスライムを倒してください!」
先ほど呼び出されたスライムはアイシャを主と認識したのか、襲ってくる様子はなくただじっとアイシャの横で待機していた。
それを指差して、突然そんなことを言うのだからこの状況でなければ多分俺はアイシャをボコボコに──は、出来ないけど──それなりの対応をしたと思う。
平然としてるけどそもそも丸腰だし、それが仮に付加術師の仕様と同じなんだとしても、付加なんか知らないからもちろんやり方がわからない。
そんな様子を見かねたアイシャがスライムをその場に待機させ、こちらに歩いてくる。
「蒼真くん、大丈夫そう? もし武器がないなら素手でもいいよ?」
「こう言うチュートリアルって練習用のなんとかをやろう、とかそう言う流れじゃないの?」
「チュート…? なにかわからないけど、そんなものないよ?」
あ、これは多分なにを言っているのか理解されてないし何ならスライムさん倒さないと次に進まないやつですね、わかります。
とはいえ、流石に丸腰じゃあな〜。
ここじゃあ多分MHSみたいにスキルボードとか出てこないし……。と、ここであることを思い出す。
そうだ! さっきアイシャはスライムを呼ぶ時何かを唱えていたはず。
俺の中で詠唱って言ったら、これしかないか……。
プレイ中、何度か耳にした言葉。
「魔法付加! 黒双剣!」
効果──魔力を媒体にし、二本の剣を具現化する。攻撃力は術者の魔力と付加スキルに依存。
頭の中でゲームで見たそれを思い浮かべながら手を構えると、そこから徐々にその刀身が成形されていく。
お? おお? おおお?! 待てよ? これは……。まさか……。
「刀身が……。」
そう呟き、刀身を見つめる俺。
「すごい!! なに今の! やっぱりあなた、出来るじゃない!! 」
それを見たアイシャが、まるで宝物を見つけたように喋る。
「刀身が……。」
さらに呟く俺。
「もう、刀身がなに?」
流石におかしいと思ったアイシャが俺に聞いてきた。
「アイシャ、黒双剣ってなんでこの名前かわかる?」
いいえ、と言わんばかりに首を横に振るアイシャに俺は説明した。
テレビ画面で見たこの双剣が黒だったこと。それを見て俺が自分で名前をつけたこと。
極め付けに、今持っている双剣が驚くほど白いこと。
「白双剣ですやん……。」
思わずエセ関西弁が出るほど、落胆した俺は、今まさに自分自身で付加術を使ったことは頭から抜け落ちていた。




