付加術師②
「はい、俺が知ってるのはこんな感じ。」
そう。長いこといろいろ説明したのは、アイシャと名乗る女性のためだった。
「んー、そうかそうか。付加術師か。なるほどねえ。」
と、まるで鑑定士が品定めをするように、ジロジロと念入りに、舐め回すように俺を見てきて喋りだす。
「ねえ、強いの?」
強い、と言うのがこの場合何を示すのかわからない。
知らない土地で、知らない本を見つけ、知らない女性に尋問を受け始めたこの状況でも動じないメンタルのことなのか、先に述べた付加術師のことなのか。
おそらく後者だろうと思い、その問いに答える。
「多分だけど、俺が知ってる中で一番強い、です。」
知らない人には敬語を使える人間でよかった。最低限失礼には当たらないだろう。なんて考えることができるくらいには余裕ができてきた。
「そうよね、聞いたことないし見たこともないから、期待はできそうね。ところで貴方自身はどうなの?」
「俺自身? 」
不思議そうに首を傾げてみると、アイシャは手のひらに魔法陣に似たものを表してこちらに見せてきた。
「そうよ、少なくとも私の召喚に反応するんだから魔力はあるはずよ。それとも、その辺も動揺で分からなくなった?」
いやもう何が何だかって感じなんだけど、とりあえず分からんもんは聞くしかない。
ゲームとかでいうなら、これはチュートリアル的なものだろうと、そう思い込むことにした。
「ごめん、少なくとも、戦闘経験はないしその魔力っていうのも俺自身にはその実感がなくてわからないんだ。」
そう伝えると、少しだけ考えた素振りを見せて急に振り返る。
すると、先ほど魔法陣を出した手を前に差し出し、何かを唱え始めた。
「我、────。審判──────者よ。その──に示せ。出でよ────。」
上手く聞き取れなかったが、魔法陣から強い光が発せられているのをみると多分何か出てくる。
徐々に光が強くなり、直視できずに目を閉じる。
時間にして十数秒だろうか。光が感じられなくなる頃目を開けるとそこには見たことのない、いや、正確には現実では見たことがない生物がいた。
クリンとした大きな瞳に、だらしなく開いた口。柔らかそうなその体は、結構伸びるのだろうか。
「スライム?ですか?」
「あれ! スライムのことは知ってるんだね!」
突然呼び出されて慌てているであろうスライムを横目に、アイシャは、うーんといった感じでまた頭を抱える。
知っているも何も、あの伝説の超大作RPGのDQシリーズの代表とも言えるモンスター。
間違いたくても間違えられるはずがない。
待てよ……。
「あの、アイシャさん。」
「アイシャでいいよ。多分歳も近いし敬語もなしね!」
「あ、はい。じゃあ。アイシャ、スライム以外の……、例えばドラキューとかは出せるのか?」
多分だけど、俺の考えがあっていれば出せる。
もしかして、FFシリーズの大型鳥獣も出せたりして。
「あ〜。」
……ん? あれ、アイシャの様子がおかしい。
「アイシャ?」
「あ、ごめん。そうだね、出せるよ。」
「じゃあ──。」
「私には出来ないけどね。」
じゃあ見たい、という前に言葉をかぶせて出来ないと告げられる。
「そっか。まあ、出来ないものは出来るようになればいいし!それよりも、俺はこれから何をしたらいいのか教えて欲しい。」
我ながら自己中心的すぎる発言だと思ったが、訳のわからないところに呼び出された挙句あんたなんかいらないわ、ポイッ。なんてことをされた日にはもう出るとこに出るしかない。この世界にそんなところがあるかは謎だけど。
「そうね、じゃああそこ。あの火山は見える?」
そう言ってかなり遠くを指差すアイシャの目には何か見えているんだろうか。
俺の目にはうっすら影しあ見えてないけど、火山っぽい何かしらが見えた。
ドラキューの召喚ができないことが何を意味するのか、これから先俺がどれだけアイシャに振り回されることになるのか、この時の俺のDQやFFだらけの頭では考える余裕なんて全くなかったことだけは言っておく。




