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おでこに穴が、、、

作者: 葉月太一

 ―おでこに穴が、、、


朝起きてみたら

おでこに穴があいていた

おでこの穴を覗いてみたら、

真っ暗で何も見えない

更に凝らして見ると

黒いネバネバが見えた

なんだろう?

気持ち悪いので塞ぐことにした

おでこの穴に脱脂綿を詰めた

なんとなく安心できた。


夕方、オデコがモゾモゾする

何かすっきりしない

何かが詰まっているようだ

オデコの穴をふさいだ綿に触ってみた

ポトッと中に落ちた! えっ?

ピンセントで摘まんで元に戻した

いっときはよかったが

やっぱり、何かもぞもぞしだした

何かすっきりしない

、、、、、、、、、、、、

左手で鼻をつまんで

右手でこめかみ辺りを押さえて

思い切ってフンッとした

スポーン 勢いよく

オデコの栓が抜けた

そのとたんに

オデコに爽やかな空気が入り

オデコがすっきりした

清々しい気持ちになった。


抜けた綿の栓は

足元に落ちて

コロコロと転がって

どこかに消えた



 ―道端に空いた穴、、、


公園に行く道端に穴が開いていた

ゴルフボールが入るくらいの穴だ

きのうはなかった

立ち止まってしゃがみ込んで

穴を覗いてみた

中は暗くてわからない

プチプチと白い泡か?綿か?

動いてるみたいだった

気になったが、うっちゃって

約束の公園に急ぐことにした

ところが、突然

その穴から白い丸いものが

飛び出してきた!

びっくりして

そばにあった板切れで

その穴を塞いだ

二人が待っている公園に急ごうとすると

白い丸いものは

板切れを押し上げて

ドンドン、ドンドン

不思議なくらい、出てくるは出てくるは


大きい蓋のような物を捜す太一

「遅いぞー」と言って走ってくる晃

呼びに来た晃は

不思議な状況を見て

「公園に戻ってネコで砂を持ってくる」

マモルも一緒にきた

マモルは大きいブルーシートを持ってきた

穴を塞ぐため

板切れ、砂、ブルーシート、石

疲れ切った三人

道端にへたり込む

、、、、、、、、、、、、、

突然

バキーン、バキーンとシートは破れ

ゾロゾロ、ゾロゾロと

白い丸いものが

次から次へと出てきて止まることがない



 ―トシの死、、、


舞台中央に

二つのスポットライトが

ひとつは、トシの死の床

いまひとつは

夜中から泣きじゃくっている太一


トシは死んだ


上手から叔母のタミと厚子

二人はトシの身体を清める

泣くのを止めて

うつろな目で見ている太一


ホリゾント幕に真上から撮った

トシの死の床


タミはトシの顔に被された白い布を取って

トシの顔の穴に綿を詰め始めた

「すんだ人にはこうすんだべ」と言って

鼻の穴、両耳の穴、そして口の中に

死んだトシの穴という穴に

綿を詰める、そして押し込む二人


ホリゾント幕に真上から撮った

トシの死の顔

鼻と耳と口に綿が詰まっている

トシの身体にかぶせていた白布団を取る


姉妹と思えないほどの

無機質な表情で

最後は下腹部の穴にも

綿を押し込む、

割りばしを使って押し込む

「むがすから、

 すんだ人にはみんなこうするんだべ」

二人は独り言のように言いながら


二人は上手の部屋に戻る


スー、スー、ス―

母さんの息が聞こえる

空耳じゃない

スー、スー、ス―

母さんの息だ!

太一は母さんの顔の白い布を取って

鼻の穴に耳を近づける

口に耳を近づける

そして、鼻と口の綿を取ろうとする


上手から、タミは慌てて出てきて

「たっちゃん、なぬすんだべっ」

太一を強引に引き離す

「母さんがいぎすてた。

 母さんが、、、、くるすそうだっ」

「トシはすんだんだ」

「いや、スー、スーいぎすてた」


舞台中央に

二つのスポットライトが

ひとつは、トシの死の床

いまひとつは

ただうつむいている太一


母さんは死んだ

 あの時、おれが、

 とうぎょうさ行がねがったら

母さんは死なねがった


ホリゾント幕には

トシと太一が、一緒に笑っている写真。


真上から撮ったトシの死の床。


 トシの死体は黙って

  スースーと息をしている

   「かっちゃん、くるすがべ、、、、」






8




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― 新着の感想 ―
[一言] 今年もよろしくお願いします。 確か、昭和36年春、今年で57年ですね。北上での練習試合の帰りに、愛宕町に寄り愼ちゃんのお母さんへお別れをした記憶があります。愼ちゃんとは話しずらかったのか、記…
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