俺の知らない、彼女たちの九年間
「そんな落ちかよっ!」
俺は、途方もないがっかり感に、思わず叫んでいた。
「って、あれ?ここ、俺の部屋か……?」
おかしいな、俺は先ほどまでマシュマロの楽園にいたはずなのだが……
「夢、だったのか?んなバカな」
いやでも、なんか微妙に体は濡れてるし……どういうことだ?
「「すぅ……すぅ……」」
ふと、寝息が二つ聞こえる。
寝息がする方向を見てみると、
「あれ、ミーちゃんにヒナちゃん?なんで、俺のベッドに?」
え?あれ?なぜ?おかしくない?
ど、どういうことなんだ?なぜ俺は、この二人と一緒に寝ているのだ?
くそ、思い出せん……なぜ、こうなったのかという経緯が思い出せん……。
いや、あの一連の出来事はすべて夢だったのかも……って、これは最初に思って、俺の体がやや濡れている、ということから否定した!
じゃあ、なぜ?
「……寝るか!」
結果、答えはでず、俺は思考停止をするがごとく、寝るという選択肢をとった。
多分、この二人が起きないと、真相なんてわからんよ。
じゃ、おやすみ!
……。
…………。
………………。
「眠れんっ!」
ダメだ!女の子二人と一緒に寝ていると考えると、とんでもなく意識して眠れねえ!
まず、両サイドにいるもんだから、女の子特有の甘い香りがして、それで目が覚めるし、女の子特有の柔らかさ、特に胸部の辺りは俺の腕に当たりまくって、とんでもないことになってるし。
ちなみにだが、二人は俺の腕を抱くようにして眠っている。
なので、必然的に、寝息が俺に当たっている。すごくくすぐったい。
「……羊でも数えるか」
古典的だが、これが一番いいと思う。煩悩を消すためには、これが一番。
般若心経でもいいんだけど、あれ覚えてないし。
「羊が一匹……羊が二匹……羊が――」
理性と本能の狭間にある俺は、羊を数えることで本能を無理に抑え込み……
「羊が、一万五千九百三十一匹……」
気が付いたら朝になっていた。
「結局、一睡もできなかったっ……」
これで、居眠りは確定だ。
「「「いただきます」」」
三人で朝食をとる。
母さんと親父は、ちょっとした旅行だそうだ。子供を置いて行って何をしているんだか。
二泊三日だそうだ。あまりに急展開すぎて、寝不足の俺にはいまだ状況が呑み込めていない。昨日、何も言ってなかったよね?
「……」
「どうしたの?優夏?」
「なん、だか、眠そ、うですよ?」
「……ああ、うん。ちょっと、色々あって眠れなかったんだよ……」
「そうなんだ?……卵焼きおいしい!ヒナ、また腕を上げた?」
「う、うん。こ、これからは、優夏くん、にも、た、食べてもら、うから、はりき、ってつくったの」
ヒナちゃん。健気なのはいいことだよ。いいことなんだけど……。
その凶暴なバスト様はどうにかしてもらいたい。いや、無理だけども。
「ねえねえ、いつにする?」
と、ミーちゃんがそんなことを言ってくる。
「なにが?」
「決まってるじゃん!婚姻届だよ!婚姻届!」
「「うぇ!?」」
俺とヒナちゃんの声が見事にハモる。
「何を驚いてるの?当然だよ。だって私たち、その為だけに戻ってきたんだから!ねえ、ヒナ?」
「う、うん……だけど、お姉ちゃん。ま、まだ、そ、その話は、は、はや、はやい、と思う、よ……?」
「なあに、言ってるの、ヒナ。早めにしとかないと、優夏、誰かにとられちゃうかもしれないでしょ?」
「そ、それは、こ、こま、ります……」
「でしょ?だから、そう言う意味でも、唾つけとかないと!」
「そ、そうだ、ね」
「変なこと言うな!てか、べつにそんなことしなくても、俺は二人から離れたりしないからっ!それに、俺は、昔からずっと二人の事が好きだったんだぜ?それを今更……」
ここで俺は、ん?と頭に疑問符を浮かべる。
あれ、今のって、どっからどう聞いても……
「「――ッ!」」
二人の顔が朱に染まる。
「ゆ、ゆゆゆ、優花っ?そ、それって、こ、こ、ここここ……!」
「こ、告白、ですか……?」
ミーちゃんは、まともに言えておらず、代わりと言わんばかりに、ヒナちゃんが確認を取ってくる。
うっ、やっぱりそう聞こえますよね……。
いやまあ、二人が俺を好き、というのは昨日知った通りではあるが……正直、顔から火がでそうなくらい、顔が熱い。というか、全身熱い。
思わず、言うのを躊躇ってしまうほどだ。
……いや、躊躇うな、俺。ここで言わずして、いつ言うというんだ?
じっと、俺の言葉を待っている二人。それも、顔を赤くして。
これをみて、今言わない、といのは頭のおかしい野郎だ。
俺はそうではない。……まあ、クズではあるような気もしないでもないが。
って、今はそうじゃなく!
言え、言うんだ俺!
「そ、そうだ、よ」
言った!だが、ここで終わらせる俺ではない!
「ふ、二人のことは、好きだ。それは、今も昔も変わらない。あの日、二人が行ってしまった時、俺は二人の前では笑っていたが……その実は、泣いていたよ。それはもう、大号泣」
はは、と苦笑いを浮かべながら、俺は話を続ける。
「それから、二人を忘れたことなんて、一度もなかった。忘れられなかった。昨日までの時間の間で、俺は一、二回ほど、実際には告白されてるがな」
「え!」
「そ、そう、なんで、すか?」
「ま、まさか、OKしたり……」
「いやいや!ないない!つか、今さっき忘れたことは無い、とか、ずっと好きだった、とか言ったろ?話を最後まで聞け」
怪訝そうな顔をし、俺を疑っているミーちゃんの言葉を即座に否定する。
「昨日、俺は二人の夢を見たよ。いや、正確に言えば、昔の出来事なんだがな。……で、その時のが、たしか二人とあの約束をした時だな。懐かしくて嬉しくなったよ。憶えているか、っていう確証はなかったのにな」
昨日の朝の自分を思い出して、ちょっと笑う。俺、夢ごときで浮かれてるんだもんなぁ。
そんな俺の話を、二人は真剣そうに聞いている。
「けど、二人が現れてた時は、すぐにわかった。昔の面影があるから。二人とも、本当にかわいくなったよ」
「えへへ」
「あ、ありが、とうござい、ます」
俺がかわいいと言ったことにより、二人は照れる。
「それから、昨日の出来事。あれは本当にびっくりだったよ。なにせ、いきなり法律変わるんだもん。あれで驚くな、っていう方が無理な話だよ」
政治家――ましてや、成人すらしていない、子供によって法律が変えられた。どう考えたって、普通じゃない。というか、首相の秘密、とか言った時点で、かなりあやしい、とは思ったけどね。
「驚き、戸惑いはしたけど、それでも気持ちは変わらない。もう一度言う。俺は、二人が好きだ。だから、結婚をする、ということに反対はない」
「じゃあ!」
「……たしかに、婚姻届は早めに出しておいた方が良いかもしれない。だけどさ、俺らまだ学生だぜ?いくら何でも、学生結婚。しかも、高校生だ。なかなかに大変だ。働いているわけでもない。それ以前に、今の俺らの仕事は勉強をすることだ。お金だって、親から援助してもらっているわけで」
「え?何言ってるの?」
「え?」
「あ、あの、ゆうくん……わたしたち、働いてる、んです」
「はい?」
今、ヒナちゃんの口から、とんでもない言葉が出てきたんだが?聞き間違いか?
……いや、そんなはずはない。なんてったって、彼女らだ。俺が、この二人の声を聞き漏らすなんて、まずありえん。
「ち、ちなみに何を?」
「えっと、会社経営?」
「……あのすいません。何故、そのようなことに?」
「え、えっと、法を改正、するの、は、お金な、しにはできな、いもの、だか、ら、お金、を稼ぐた、めに、それ、しかなく、って」
「い、いつから?」
「んー、小学五年生の時?」
「ぶっ飛びすぎだろ!?」
なんだと!?この姉妹、なぜそんなにスペックが高いんだ!?おいおいおい!たかだか子供の口約束ごときで、どこまでやってるんだよ!?
純粋にもほどがあるだろ!これは!
「おかげで、かなりの財を得まして……だから、式とかに関して言えば、何の問題は無いよ!」
「むし、ろ、、ゆうくんは、なにも、しなくて、も、いいです、よ?」
「いやいやいや!それだと俺、ひもだから!普通にニートだから!」
ある意味玉の輿かもしれんが、ひもは嫌すぎる!
二人は良かれと思って言ってるんだろうが、それじゃ本当に俺が人間の屑になってしまう!
「でも、そうしないと式挙げられないよ?」
「ねえもしかして、在学中に挙げる前提で言ってる?」
「「もちろん(です)」」
「九年間の間に、何があったんだあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!」
俺のそんな叫びが、朝から響き渡った。
俺、どうなるんだ?この先……。
一抹の不安を覚えつつも、心のどこかでは期待が存在している、俺だった……。
どうも、鯨です。この作品を久しぶりに投稿した日、普通に読んでくれている回数が多かったのは驚きました。待っていてくれた方、いたんですね。改めて、ありがたいなぁと思いました。
さて、今回はあれですね、九年間の一部が出てきましたね。一応、そう言うことにしないと、話して気にはつながらないなぁ、とか思ったからなんですがね。
さて、こんなもので、また次回。