昔→今→地獄?
そして、一時間目の事。
事の発端は、みいちゃん――もとい、瑞姫から発せられた一言からだった。
一時間目は国語だった。担当は、うちの担任だ。
当然、なのかはわからないが、二人は手元に教科書がない。その上、友達もいない。そんな状態で勉強なんてできるはずもないので、こう言った。
「先生。私とヒナは、教科書がないので、優夏くんと一緒に見てもいいですか?」
双子。たしか、瑞姫が姉じゃなかっただろうか。まあ、双子なんて、どっちがほんの少しでも早く生まれるかの違いだ。どちらが姉か、なんてことはどうでもいいような気がする。
ただ、この際どうでもいい。このセリフを聞いて、クラスメートどころか、俺すらも茫然としていた。
それも無理ももない。たしかに俺たちは幼馴染だった。けれども、それは昔の話。
しかし、それを知らない連中は、赤の他人だと思うことだろう。そして、その赤の他人が名前で呼ばれたとしたら?
そんなことは決まっている。
『うぇええぇぇぇぇぇぇぇぇ⁉』
全員が驚きの声を上げる。一人残らずだ。俺は驚かなかった。というよりも、茫然としたままだったからだ。
「こらー、静かにしろー。今は授業中だぞー。それと、空野姉妹のことは、許可する」
許可しちゃうんだ。まあ、当然だよな。さっき先生が、なんでも頼れ、そう言ってたからな。
その一言を聞いてか、二人が机をくっつけてくる。
「よろしくね、優夏くん」
「よ、よろしく、お願いします。ゆうくん」
「お、おう」
や、やべえ……。めっちゃ恥ずかしい!どうすんだこれ⁉俺の理性、持つのかが心配だな……両サイドから女の子特有の甘い匂いが漂ってくる。しかも、同じ教科書を見ているせいで、両腕に、その……やわからかいものが当たっているんですが……?こんなラノベの主人公みたいなことが起こるとは思わなかった。こうしてやられてみると、すごく恥ずかしいし、なによりも……視線がいたい。男子生徒達の視線がいたい。
「ねえ、優夏」
やはり視線は気にならないみたいだ。この激痛の視線の嵐の中、俺に話しかけてくる。
「今日さ」
「い、一緒に、帰りませんか?」
おおう……そうきたか。どうやら、視線の事ではないみたいだ。
「い、いいけど……でも俺、二人の家、知らないんだけど……」
昔と同じじゃないから、俺としてはどうしようもない気がする。
それより、俺としては二人の変わりようが気になる。特にヒナちゃん。昔のヒナちゃんと言えば、みいちゃん(もう、こっちで行こうと思うよ)と同じ、元気いっぱいだったよな?それが今じゃ、恥ずかしがり屋な性格になっている。この変化には驚くよ。まあそれは、みいちゃんにも言えることだけど。
「大丈夫だよ」
何が大丈夫なんだろうか?
「わ、私たちの住むところは、ゆうくんがよく知っている場所なので……」
「俺の、知っているところ?」
俺の知っているところ……どこだ?あるとしても、公園(野宿だよな、それ)とか、前の二人の家(すでに誰か住んでる)とか、あとは、もうダメ壮(建物の状況は、もうダメそう)ぐらいだよな……なくね?
「ごめん、思い浮かばない」
というか、それ以前の問題として、九年ぶりに再会したのに、感動とかそういったものが、すげえ薄い気がする。なんで?
「今日の放課後になれば、わかりますから」
今日の放課後?なぜ?……一緒に帰ろうとは言われたけど……その時に分かるのだろうか?
思いつく限りの事が頭の中をよぎっているが、どれもうまく当てはまらない。
しかしなんだろうか、この二人の異常な笑顔だ。なんだこの笑顔は⁉
何度も言うようだが、この時間、俺は男子たちの怨嗟の視線が突き刺さっていた。
授業飛んで昼休み。
二人は昼休みになるなり、教室から出て行った。
なんでも、手続きが全部終わっていないとかなんとか。
にしても、いつ戻ってきたのか謎になる発言だな。
ま、今の俺にそんなことを気にする余裕はないわけだが。
「「「おい!どういうことだよ、黒神⁉」」」
俺は、男子生徒達に詰め寄られていた。しかも、他クラスの人間まで。なんで?
「な、なにが?」
「とぼけるんじゃない!お前、なんで転校生二人とあんなに仲がいいんだよ⁉」
あ、ああ……。そのことかぁ……。デスヨネー……。
「それのこと、ですか……」
思わず、敬語になっていた。
なんて説明すればいいんだ……?
「え、ええっと……」
「誤魔化そうとすんなよ……?」
おおう……こいつぁあ、逃げ道がねえな。つーかよ。朝から視界に入っていたんだけどさ……翔太、さっきからやばことになってるんだよ。
顔が虚ろ(間違ってはいないよ?)で、なにか独り言をつぶやいている。何を言っているのかはわからんが。
「さあ、早く言ってもらおうか」
しょうがないか……。
「実は――」
「「「はぁぁああぁぁぁあ⁉黒神の幼馴染ぃぃぃぃぃぃぃッッッ⁉」」」
すごい大声で驚かれた。
「な、なんだよそれ⁉」
「そんな話、聞いてねえぞ⁉」
「当たり前だ!九年も前の事で、その上一度も会わなかったんだから、言うわけねえだろうが!」
そんな個人情報、ほいほい言うかっての。
「くっそう、俺にもかわいい幼馴染とかいればっ」
「俺だって、彼女がいさえすればっ」
「俺も、かわいい妹が欲しかったっ」
何言ってんだ、こいつら。
にしても、よほどショックだった、という事がわかるかるほど、嘆いているな。
というか最後のやつ、それは無理だろう。物理的に。
「……で、それだけか?」
「それだけって……お前、ふざけんなよ?」
ああ、これ無限ループか。魔王に勝てなくて、セーブポイントから始まり、次第にその前の先頭でも勝てなくなっていくという、あれみたいになってるな。
んで、結局この後は、弁解的なことをして昼休みは終了。
……昼飯、食い損ねたな……。
放課後。
「それじゃあ、一緒に帰ろ」
HR終了と同時に、みいちゃんに話しかけられる。
その裏には、ヒナちゃんもいる。
「わかった。それじゃ、帰るか」
「「うん!」」
ヒナちゃん、たまに空気になってない?
またしても、怨嗟の視線が俺に突き刺さっていたが、それから逃げるように教室に出たので、問題はなかった。けど、明日から何言われるかわからないなぁ……。
「で、早速だけど……いつ戻ってきたんだ?」
学校を出た辺りで、いつ戻っていたのかを聞いてみる。
「ええっと……三日前、かな」
「そう、ですね……それ、までは、ホテルで過ごして、ました」
「そうか……意外と最近なんだな」
三日前……ね。最近だけど、それなら見かけていても、おかしくなかったんじゃないか?
「ん?なあ、『まで』って言ったけど、じゃあ今はどこに住んでるんだ?」
三日間、ホテルで泊まってたならわかるけど、じゃあ、今日からどこに住むって話だ。
普通に考えたら、アパートとかだよな……でもこの辺ないし。あ、でも授業中に、どこかに住んでいる的なことを言っていたから、何らおかしくないかな?
「ええっと……住んでる、というか……」
「これから……といいますか……」
なんだか、言い渋っている二人。聞いたらまずかったのかな?
「どうしたんだ?」
「あ、気にしないで」
「そ、その内わかりますから」
「ん?そうか……」
その内、授業中にも言ってたけど、一体どこなんだろうか?
こんにちは、鯨です。なんか、応募用ということもあって、以前こっちで書いていた作品よりも、まともに書こうとした結果、こうなんったんですけど・・・。あれですね。なんか、滑り出しはよかったです。
普通にうれしいですね、これ。
えーっと、ですね。この作品、ここから少し先まで作ってあるんですが、ここにあげられるほど、作られていないので、まだ未制作です。ですので、さきを期待している方は、少々お待ちください。
では、いつになるかはわからない次回で。