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クズな俺と、純粋な姉妹  作者: 鯨@バーベキュー
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クズと純粋の再会

 俺、黒神優夏(よく間違えられるのだが、決して女ではない)には、俺の隣の家に住む双子姉妹の幼馴染がいた。

 いた、つまり過去形だ。べつに、死んでしまったわけではない。まあ、引っ越しはしてしまったけど。

 この辺はべつに、大きなことではない。俺が過去形にした理由は、関係が変わってしまったのだ。けれどそれは、険悪になったり、仲たがいとかをしたわけでもない。

 じゃあ、何が変わったか。

 そのきっかけは、簡単な物だ。

 まあ、あれだ。よくあるラノベの展開みたいなやつだ。言い換えるなら、テンプレ、ありきたり、と言ったところだな。

 なぜそうなったか。俺にもわからん。というか、何がわからんのか、それすらもわからん。だってまだ、何も言ってないし。

 じゃあ、何があったか、ということなのだが、それはある日の事だった。


「「ねえ、ゆうくん」」

「なあに?ふたりとも」

「わたしと、みいちゃん」

「わたしと、ひなちゃん」

「「どっちがすき?」」

 昔、こんなことを質問された。このころの俺たちは、まだまだ子供だった。まあ、年齢的にもそうなんだが。

 子供のころ、『大人になったら、お嫁さんにしてくれる?』ということ言われることがある人がいるんじゃないだろうか。そう、子供同士の、他愛もない約束。そう、約束だ。

 約束、と一括りにしてしまっても、色々な種類がある。

 契約書だったり、口約束。あとは、拇印とかもそうなんじゃなかったっけ?こうしてみる(三つしかないが)と、色々あるものだ。

 けどまあ、この際は置いておくとしよう。たしかこの時の俺は、こう返したと思う。

「ぼく、どっちもだいすきだよ」

 と。あれが本当の告白なんだとしたら、俺はどんだけクズな答えを出したのだろう。

 あれが本当じゃなくてよかった。

「ほんと?」

「うん、ほんと」

「じゃあ、もし」

「わたしたちが」

「大人になったら」

「ゆうくんは」

「「わたしたちをおよめさんにしてくれる?」」

 今からしてみれば、これも案外子供だから言えたことだろう。

「うん!もちろんだよ!」

 またしても、クズな答え。しかし、やはり子供。そうでなければ、言うことはできない。つまり、必ずどちらかを選ぶ。これが普通。

 子供って、無知だなぁ。

「「それじゃあ、やくそくだよ」」

「うん!」

「「「ゆびきりげんまん、うそついたらはりせんぼんのーます、ゆびきった」」」

「「やくそく、やぶらないでね」」

「もちろん」

 この約束、一体どこまでが本当だったんだろう?

 というような幼少時代を俺は送っていた。


「・・・久しぶりに見たな、あの2人。にしても、ずいぶんと昔の夢を見たものだ」

 そう、夢。過去の記憶を夢として見る。まず、こういう事自体、現実にあるものなのか?と思っていたが、実際あったな。初めて見たよ。過去の記憶。

「・・・今はもういないのになぁ」

 まだ見ることがあるってことは、少なからず、まだ好きということなのだろう。

 好き、か・・・もしも、またあの2人に会えたなら、約束を覚えているんだろうか?

「・・・いや、それはないか」

 なにせあれは、9年前の出来事だからな。憶えているはずがない。じゃあなぜ、俺は覚えているか。

 多分、好きだったんだろうなぁ、あの2人の事。

「はぁ・・・何してんのかなぁ」

 と、気になってしまうが、どんなにそんなことを言っても無駄な物は無駄。言っても会えない。当たり前の話だ。

 そんなことよりも、さっさと学校へ行った方が切実だろう。


「おはよう」

「ん、おう、おはよう」

「おはよう。朝ごはんならできてるから、ちゃっちゃと食べちゃいなさい」

「へーい」

 母さんたちとあいさつを交わしてから、朝ごはんを食べる。

 うん。母さん、ほんと料理うまいよなぁ。どうやったら、こんな味が出せるんだろう。


「んじゃ、そろそろ行ってくるよ」

「おう、いってらっしゃい」

「いってらっしゃい」

「いってきまーす」

 玄関の扉を開け、外に出る。すると、家の前にトラックが止まっていた。だれか引っ越してきたのかな?という考えが自然なのだが、俺の家の周辺からしてみれば、かなりおかしい。

 なにせ、空き家と、空き地がないからな。なのになぜ、トラックが止まっているか。そんなこと、俺が知っているはずがあろうはずがございません。

 なので、放置。放置して、学園に向かった。


「はよっす」

「おはよう」

 教室に入るなり、翔太に話しかけられる。間宮翔太。それがこいつの名前。つっても、絵とかないからどんな姿かわからないが。簡単に言ってしまえば、そうだな・・・エロゲとかにでてくる親友キャラを思い浮かべてみると、わかりやすいかもしれない。まあ、いろんなゲームがあるから、どれ!?的な感じにはなると思うが。

「なあなあ、きいたか?」

「きいてない」

「まだ何も言ってないぞ!?」

 いや、お前がそういうことを聞いてくるときって、大概女子関係だろうが。と、内心思っているが、あえて口に出さない。かわいそうだから。

「で、なんだよ?」

「それがよ、うちのクラスに転校生が来るんだってよ」

「は?この時期に?」

 この時期、時期、というか、まあ、こっちの世界では今6月。しかも、俺達はまだ入学したばかりの、高校1年生だ。だから、この時期に転校してくるのは、かなりおかしい、それなりの事情もあるんだろうが。

「時期なんざ、知ったこっちゃねえ。オレはな、その転校生の事が気になってるんだよ」

「ほう、そうか。お前、男色の趣味があったのか」

「そうそう、最近目覚め――てねえよ!?オレにそんな趣味はねえ!って、なんでそんな驚いたような顔で見ているんだ!?つーか、なんで周りのやつらも同じようなリアクションなんだよ!?関係ねえだろ!?」

 すげえ、連続でツッコミ入れやがった。

「ま、冗談は置いといて・・・その転校生がどうかしたのか?」

「あ、ああ。なんでも、1人じゃないらしいからな」

「複数人か?」

「いや、そんなに多くはないぞ。2人だけだ」

「へー、2人、ねえ・・・」

 それはそれで珍しいな。同じクラスに2人ってのも。

「けどさ、転校生が来るぐらいで、そんなに気になるもんか?」

 ハッキリ言って、転校生って言うと、最初はあんなに質問とかされていたのに、いざ時間が過ぎると、何事もなかったかのような感じになってしまう、そんなイメージしかない。

「なるもなるなる。なんてったって、男子の間じゃ、大盛り上がりだからな」

 やっぱり女子とかの話じゃねえか。これ以外の話になるとは全く思わなかったが、まさか本当にそうだとは。

 しかし、翔太の目は輝いていた。なぜ、輝く。たかが転校生で。

「はあ・・・それだけか?」

「それだけ、って・・・お前、俺達男子が盛り上がってるか、知ってるか!?」

 んなもん、知らん。

「その2人が美少女だからだ」

 ああ、そう。どうせそれ、夢だろ。ある意味。そんな都合よく、美少女の転校生がくる、なんてシチュエーション、あったら面白そうだもんな。

 美少女二人が転校してくるよりも、俺はあの2人が来てほしい。

「なんだよ、優夏は嬉しくないのか?」

「・・・まあな。勝手に盛り上がるだけ盛り上がって、そしてフラれ、憧れでしかなくなるような人なんかと知り合いになろうとは思わんからな」

 もちろんこのセリフは、その転校生が美少女と仮定したうえでの話だ。

「わかんねえだろ!もしかしたら、チャンスがあるかもしれないじゃないか!」

「はいはい、そうですね。その夢、一体いつまでもつか、賭けようぜ?」

「いいだろう。ならオレは・・・1ヶ月に1000円!」

「そうか。なら俺は、10分に1万」

「なっ・・・お前、本気か?」

「ああ、本気も本気」

 どうせ、わかりきってることだ。いつもみたいに、『好きです、付き合ってください』的なことを言って、終了するに決まってる。それも、10分以内で。

 その言葉を聞いてか、翔太は勝ち誇ったような笑みを浮かべて、

「ふ・・・吠え面かくなよ?」

 なんで、勝ったような顔をしているんだ?というか、騙されていることに気が付かねえのな、こいつ。

 さっき俺は、『いつまでもつか』といった。それはつまり、『すでに負けは確定しているから、その気持ちがどこまでもつか』という意味で言ったりしていた。それに気が付かずこんな顔をしているのだから、とても残念だ。相手が。

「まあいいや。それで、その転校生はいつ来るんだ?」

「今日だそうだ」

 意外にも早かった。先生とか、何か言ってたか?

「そうか」

 この後は、適当にだべっているだけだった。


「——というわけだ。さて、今日からこのクラスに転校生が来る」

 そして、運命の時。なんか大げさな気もするが。俺以外の男子にとっては、それぐらい重要な事なんだろうなぁ、と思っている俺。

「それじゃ、入ってきなさい」

 教室の扉が開けられ、2人の少女が入って来る。

 1人は、黒く長い癖一つない髪を後ろでまとめて、ポニーテールにしてる。そして、整った顔立ち。活発そうな大きな翡翠の色をした目に、すっと通った鼻筋。発育は・・・普通ぐらい。おそらく平均だろう。大きくもなく、小さくもない、普通。そんな感じ。

 身長の方は、見た感じ150後半くらいだな。活発系の美少女。そんな感じ。

 もう1人の方は驚いたことに、1人目とあまり見た目にさほど違いがない。おそらく双子なのだろう。けれども、違う点もある。まず、顔立ちこそ似ているものの、よく見ると、結構違う。

 腰元まで下した、癖一つない長い黒髪。いわゆる、ストレートロングだ。顔を見ると、おっとりとした感じのたれ目。けれど、恥ずかしがり屋なのかな?さきほどから落ち着きがない。けれど、初めて見たとき、最初目に映るのは、あの大きな胸。まさに圧巻。服の上からでもわかるぐらい、とにかく大きい。これ以上、こんな説明をしていると、変態みたいになるのでこの辺で。

 ちなみに身長だが、1人目とほぼ同じ。こちらは、おっとり系美少女と言ったところだ。

「初めまして。遠野市から引っ越してきました、空野瑞姫です。よろしくお願いします」

「は、はじめ、まして。同じく、遠野市から引っ越してきました、空野ヒナ、です。よ、よろしく、お願いします」

 パチパチパチ・・・と、拍手が起こる。しかし、俺は拍手などしていなかった。

 なぜなら、呆気にとられていたからだ。遠野市、2人が引っ越していった場所。まあ、これだけなら、偶然で済む。しかし問題は、名前と容姿だ。2人と同じ名前で、2人と同じ容姿。容姿なんて、9年もたっているから、わからないと思っていたが、意外とわかるものだ。昔の面影があるもの。それだけで分かる。

 というか、昔の幼馴染の事がわからないなんて、そんなことあっていいはずがない。

 しかしだ。俺は覚えていても、あの二人は覚えていないだろうなぁ。

 それでも俺は、嬉しいと思っていた。覚えているという希望は薄いが、それでも嬉しいものは嬉しい。けれど、忘れてしまっていると思ってしまうと、かなり切ない気持ちになる。

 ま、しょうがないか。九年も前の事だからな。

 しょうがないさ、そう思っていた。

「「————ッ!」」

 二人と目が合った。しかも、向こうも驚いたような顔をしている。けれど、すぐさま笑顔になる。まぶしいくらいの笑顔。その笑顔に、ドキッとしてしまった。

 ……もしかして、気付かれた、のか?いや、まさか……そんなはずはない。

 たまたま視線の先で、ゴキブリが歩いていたから、とかそんな感じだろう。あ、いや。それだと、ゴキブリを見て笑顔になったということになる。それはとてもシュールだ。

 ……まあ、自分と目があったなんて、うぬぼれるにもほどがある。

『い、いま、目が合ったぜ!ひゃっほーい!』

 とか言っている、バカがいるが、まあ気にしない。もう周りの喧騒など気になっていないのだからな。今にも告白しそうなやつや、服を脱ぎだしそう……って、ちょっと待て。なんで服脱ごうとしているやつがいるんだ⁉それも男子。お前、警察に通報してやろうか?

 けど、その気持ちはわからないでもない。

 二人とも、かわいいからな。俺から見れば、かわいくなった。だけど……

「それじゃあ、席は……お、いい場所が空いてるな」

 いい場所?それってどこ?

「あそこにいる、黒神の両サイドが丁度あいているみたいだな。二人は、そこに座りなさい」

 …………はい?俺の両サイドの席?言われて、横を見てみる。たしかに空いている。たしかこの席って、数日前に転校した、田中がいなくなって、もう片方は、ただ単にあいていただけだったよな。なるほど、それで俺の隣の席か。

「それと、わからないことがあったら、あいつに聞くと言い。お人好しだからな。だから、あたしに頼らず、あいつに頼れ。なんでも頼って大丈夫だぞ」

 おい、先生が何を言っているんだ。クラス担任にお人好しって言われるって……俺が一体どう思われているのかがわかる言葉だな。つーか、先生としてその言葉はどうかと思うんだが?

「「はーい!」」

 心なしか、その返事には嬉しさなどの感情が混じっている気がした。しかも、ものっすごい、いい笑顔で。さっきよりもいい笑顔で、こちらに向かってくる。

 それと同時に、まわりから痛い視線が来る。とてつもなく痛い。何が痛いって、男子たちからの嫉妬の視線が、だ。

 そんなことも知らずに、二人がそれぞれの席に着く。右にみいちゃん。左にひなちゃん。

 すると、またしても視線を感じる。

 今度は嫉妬とかではなく、全く別のものだ。その視線が発せられているのは、まあお約束というか、なんというか……両サイドの二人からだ。

 なんでこんなに見ているんだ?しかも表情を見てみると、驚いているような、嬉しそうにしているような、そんな感じの表情。さっきとほぼ同じ。

 どうもこそばゆい。

「……だめだ。すごくキツイ」

 いくら幼馴染とはいえ、九年も会っていない。しかも、見た目も随分と変わっている。こんな状態で見られでもしたら、相当恥かしい。その後も、じーっとみられながら、あと少しのHRが終わった。

はじめましての人は、はじめまして。すでにほかの作品を知っている方は、こんにちは。鯨です。

私が書く作品は・・・あれ?これで何個目だったかな?消した作品も含めると・・・これは8作目ではないでしょうか?まあ、それは置いておきましょう。

このお話は、ですね・・・本来投稿するつもりはなかったんです。実際、応募用に作ったものでして。

投稿した理由は、反応を見て、応募しようかを決めるために、投稿した次第です。

この作品自体は、投稿するペースがどんなものなのかはわかりませんが、なるべく上げていこうと思いますので、よろしくお願いします。

では、次回。

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