ラッキーパンチ
『………兄さんの、バカっ……』
『だから、あれは不可抗力だろ？じこなんだってば。』
『うぅ〰〰〰』
顔を真っ赤にして涙目で何かを訴える茜。
ちょっと可愛い(笑)
現在、フォンニエスのとある喫茶店で休憩中。
急用で学校に呼び出されたパラケススと別れ、必要な物品を揃えている途中である。
買ったものは全て後から転移魔法で寮に届けてくれるそうだ。何て画期的なサービスなんだろう…
これ、帰って会社立てたら儲かるんじゃ？(笑)
そんなアホみたいな妄想はさておき、我が最愛の妹が何故ベソをかいているのかは、1時間前に戻る…………
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『兄さん。たぶんここですよ。』
『はぁ……これでやっと最後だな。』
小さな看板がぶら下がっている、古い洋品店の前に立つ。
『これは前を通ってもわからんな。』
パラケススからもらった都市の地図とにらめっこしながらここまで来た。正直アバウトすぎて全くわからなかった。それにこのフォンニエスと呼ばれる巨大都市……デカイくせに地図に乗ってない小さな路地がめちゃくちゃ多い。
茜が勘が鋭くて本当に助かった。ここまでの道案内は全て茜がしてくれた。
『兄さん、ここっぽいです。』
『うーん……あっちかな。』
『こっちから、匂いがします！』
匂いって何だよ。(笑)
茜は昔からかくれんぼとか強かった。とにかく直感が鋭い。こいつの隠れた特技といってもいいだろう。とにかく今回は助かった。
『ありが……』
『兄さん。入りますよー』
感謝してる途中だったのに……
カランコロン……
『あらあら、いらっしゃいませ〰。何をお求めでしょうか？』
歳は30代って所だろうか…結構綺麗な人だ。
あきらかに営業スマイルの店員さんがやってくる。
『あの〰制服の採寸に伺ったんですが…』
『あら。新入生さんですね。お一人ずつ行いますので、そちらの貴方から。』
『は、はい。』
いきなり指名され焦ってしまった(笑)
試着室の中に入り、色々計られる。でもこのシチュエーション………………
エロい妄想をしてしまった。
店員さんごめんなさい。(笑)
制服は黒を貴重としたコートのようなシックな作りだった。襟元には私立マージナル専門学校の校章がついており"Ⅰ"の英数字が刻まれている。
驚いたのは素材だった。着心地は恐ろしく良く伸縮性もある。とても特殊な生地を使っているらしく、ちょっとやそっとじゃ破けないらしい。
こんなに良いものを支給するなんて、学費が相当高いんじゃないだろうか…
最終的にばぁちゃんから請求されたらどうしましょう(笑) 冷や汗が出る……
『はい、終わり。次は貴女よ。』
俺と交代で茜が試着室に入っていき、カーテンが閉まる……
中ではキャッキャッと嬉しそうな会話が聞こえてきた。
『この制服、凄く可愛いですね！』
『お嬢ちゃん、良く似合うわ〰あっそうだ！』
シャッ…
店員のお姉さんがカーテンから顔だけを出し、
『彼氏さん。彼女さんの制服姿見たいですよね。』
『へ？』
彼氏と言われたことにビックリしすぎて間の抜けた声を出してしまった。
すると店員のお姉さんがカーテンの中に戻っていき、
『彼女さん、彼氏さんにも是非見てもらいましょう。めちゃくちゃ似合ってますから！』
『えっ？彼氏じゃな………』
シャーーーーーーー
勢いよくカーテンが開く…
そこには純白のヒラヒラした制服を着た茜がいた。白を貴重としたドレスタイプ。ピンクのリボンがアクセントとなっている。
『ど、どうですか？』
顔を赤らめながら、茜が訪ねる。その時……
ストッ…
何かが落ちる音…
スルッ……
今まで茜の下半身を守っていた布が消え去る(笑)
『えっ…………』
サイズ合わせの為にスカートを仮止めしていたピンが床に見える…恐らくそれが取れてしまったのだろう…
黒いレースの大人っぽい下着が露になる…
こいつ顔に全く似合わない下着穿いてんな(笑)
時間が止まる…
『いやぁーーーーーーーーーー』
店内に絶叫がこだました。
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平謝りしてくるお姉さんに会釈しながら、店を出る。その間も茜は下を向いて涙目だ。
そして、話は冒頭に戻る。
しばらくして、落ち着いた茜が訴える。
『だいたいあのお姉さんがしっかり止めてないのがいけないんです。(彼女って言ってくれたのはすごく嬉しかったですけど……)』
最後の方は小声で何って言ってるかわからなかったが、とにかく怒りの矛先が俺じゃなくなって胸を撫で下ろす。
表情がだいぶ柔らかくなった所で、すかさずいい放つ。
『とりあえず、全部終わったし、寮に向かおうか。』
『えっ………あっ、はい。(なんかもっと照れたりしてくれればいいのに…)兄さんのバカ……』
『まだ言うか。』
茜の頭を乱暴に撫でる。
茜の心の声は誰にも言えない。
鈍感すぎる兄で本当は助かってる…
この気持ちは誰にも言えない。
言ってはいけない。
くしゃくしゃになった髪型を直し、兄の元へ駆けてゆく………
