佳祐の小さな野望。
『それじゃ、しっかりとつかまっておるのじゃぞ。』
キュイーン…
パラケススの足元に魔方陣が浮かび上がる。
思わず目をつぶる。
すると、さっきまでいた大草原から景色が一変。活気ある城下町へと移動していた。
『ここが、精霊都市フォンニエスじゃ。』
綺麗な石畳が敷き詰められ、中世のヨーロッパを彷彿とさせる建造物。路肩には出店がたくさん出ており、威勢の良い声が響き渡る…
『武具をお求めなら、是非当店でー』
『お子さまの入学祝にアイテム一式はいかがですかー』
『今日は大特価だよー』
『にいさーん。あれ欲しいーーー!』
最後のは聞かなかった事にしよう……
『えぇい。茜。あまりはしゃぐでない。さっきとは態度がえらい違うではないか。どうしたのじゃ?』
キョロキョロと辺りを見回し、隙あらばいなくなろうとする妹の首根っこをつかみ制御する。
まるで借りられてきた猫状態だな……(笑)
『茜。俺たちお金持ってないんだから、静かにしてなさい。』
『だって、半額ですよ。ゲームの中のアイテムなんですよ。ポーションなんですよーー…』
泣きながら駄々をこねる茜。
『後でお金借りてやるから、我慢しなさい。』
『はいっ。兄さん!』
目をキラキラさせてる…俺やっぱりシスコンなのかな………
そういいながら、パラケススを見る。
『言っておくが、わしは貸さんぞ。』
はぁ………どうしよう……ア○フルとかあるかな……
『それよりも先にやらなければいけないことが色々とあるのじゃ。』
パラケススはA4サイズの紙を取り出す。
それを受け取りざっと目を通す。
『なになに…制服の採寸に、教科書の購入。学章の発行、寮での備品の購入……etc……』
やらなくちゃいけないものたくさんあるじゃん…
『てかですね。俺ら身一つで来ちゃったんですよ。先程も言いましたが、お金とかないんですが…………』
『それは大丈夫じゃ。必要最低限の物はこちらから支給する。ここに書いてあるものは全部そうじゃ。それ以外の欲しい物は自分でなんとかするのじゃ。子供じゃないじゃろ?(笑)』
なんかいきなりそっけない………
『うちの学校には色々なところから、お前らに出来るような依頼が結構来るのじゃ。それの中には報酬が出る場合もある。それを活用するのも手じゃな。』
バイトみたいなことか……
コンビニのバイトしかしたことない俺にとっては未知の世界だ。
まぁ、そのバイトも1週間で辞めたんで未経験に近いな。
『衣・食・住に関しては、寮におればまず心配はない。あまり欲を出さないことじゃな(笑)』
茜を見る……
『兄さん!1日でも早くお仕事に参りましょう!』
欲の塊だな(笑)
『学校に通うのが先な。(笑)』
俺らのやり取りを呆れて見てたパラケススが話を遮る。
『そろそろ行くぞ。あまり時間もないしの。まずは、洋品店じゃ。』
さっさと終わらして寝たい。
この時点で何とかして帰るっていう選択肢は俺の中から消え失せた。茜もノリノリだし……
でも、ばぁ様の手のひらの上で踊らされてるのが癪にさわる……4年なんておれるか。最短で卒業して帰ってやる。そして腹いせにあの家乗っ取って追い出してやるわ………
ハーッハッハッハ………
ちっちゃな野望ができました。(笑)