パラちゃん先生の初心者講座
『わっはっはははーーー(笑)』
さっきからここでキャハキャハ腹を抱えて笑っている幼女がいる。
胸くそ悪い。(笑)
『腹がよじれるーーー(笑)』
1発殴ろうかな……
『すまん。すまん。秀ちゃんは相変わらずじゃな。(笑)安心したわ。説明も全くせんで寄越すとはな。』
秀ちゃん。この幼女がそう呼ぶのは十中八九うちのクソババァの事だろう。
神川秀子かみがわひでこ
神川家27代目当主にして御歳70の祖母である。
まさに理不尽が服を着て歩いているような、傍若無人のおばぁ様。
ってそんな事はどうでもいい。
『あのー説明していただいてもよろしいでしょうか?えっと…………』
茜が恐る恐る幼女に訪ねる。
『おっと。自己紹介もまだだったな。わしはパラケスス。私立マージナル専門学校で教鞭をとっておる。担当科目は精霊使役科じゃ。お主らの担任にもなる。よろしく頼むぞ。』
『ってことは、おばぁ様の言ってた、校長先生ですか?』
『校長だったのは昔の事じゃ。今は一教師に過ぎん。学校の創立時代の頃じゃからもう300年近くなるかの~。いやはや懐かしい。』
ん?
300年?
計算おかしくない?(笑)
『あのーすみません。パラケスス様。』
『くすぐったい。パラちゃん先生と呼べ。』
あだ名がだせぇ。(笑)
『じゃあパラちゃん先生。300年前って、うち のクソバ……ばぁちゃん産まれてないと思うんですが……』
『そりゃあ、あっちの時間とこっちの時間は違うからのぉ。』
パラケススはあっけらかんと、こいつ何言ってんの?って感じで言い放つ。
あっち?とかこっち?とか全然わからん!
俺が頭を抱えていると、茜がすかさず助け船を出してくれた。
『あの!私達、全然状況が飲み込めてないんです。もし宜しければ、知っていることをお教え願いませんでしょうか。』
ナイス!茜!
マジで良くできた妹!
『そうじゃったの……何も説明されてこなかったんじゃったな。わかった。順を追って説明するぞ。』
それからパラケスス先生。もといパラちゃん先生の初心者講座が始まった………
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簡潔にまとめると、以下のとおりだ。
1.ここは現実世界ではない。
ヴィルゼバウムと呼ばれる異世界。
人間・精霊・神様・妖怪・魔物、様々な種族が存在している世界。上空を見上げると神々しい扉が宙に浮かんでいる。どうやら俺らが落ちた穴はこの扉に繋がっていたらしい。
あの時の地鳴りはこの扉が開いた音だったようだ。
また、この学校にとって不利益をもたらす者、魔法及び精霊に適正が全くない者は違う空間に飛ばされ元の世界に強制送還されるらしい。
飛ばさされば良かったのに………
2.私立マージナル専門学校について
4年制の全寮学校。創立者は目の前の幼女様を中心とした12名。魔法使い、精霊使い、魔物ハンター、聖職者、魔剣使い、魔法拳闘士といった様々な職業の中から自分にあった職業を学び、最終的には資格をとることを目標とする。また職業斡旋も同時に行う。
ハローワークに似てんな…………特殊すぎるけど(笑)
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『以上じゃ。何か質問はあるか?』
いやいや。納得できるわけない。今まで生きてきて1番混乱している。なんだ?盛大なドッキリか?
カメラを探すため辺りを見渡すが、綺麗な草原や深い森しかない……
めちゃくちゃ綺麗だけどね……
『質問も何も、訳がわか………』
『はい!先生!質問です!』
茜が食いぎみに挙手。(笑)
『なんじゃ?茜?』
『ここはいわゆるファンタジー世界というやつでしょうか?』
『ファンタジーという単語がわからぬが……』
『ドラゴンさんだったり、妖精さんとかがいるってことですよね!』
うわぁ………この子目が輝いてる……
こいつゲーマーだったの忘れてた……
俺は頭を抱えた。
『ドラゴンは危険な生物じゃが、滅多にお目にはかからん。妖精?というか精霊ならたくさんおるぞ。』
茜を見る…。
やべぇ。目がすわってるよ…
『………ドラゴン……妖精……精霊……ふふっ。ふふふっふ……VR世界を超える……夢にまで見たゲームの中の世界……』
うわぁ…ブツブツ言ってる……
『?なんかわからんが理解してもらえたかの?』
『あの子はしばらくほおっておいて下さい。とりあえずは理解しました。ですが、祖母からは手続きだけしてこいと言われまして…』
俺は、ばぁちゃんとの会話をそのまま伝える。
『ふむ。秀ちゃんからお前の性格は聞いておったからのぉ。お前が逃げられんようにしたのじゃろ?それに、お前らはまんまと秀ちゃんの作戦に引っ掛かったようじゃし。』
『?どうゆう意味ですか?』
『ここにお前らがおる時点で、入学決定じゃ。もう4年間は戻れんぞ。』
マジですか……
『あの、クソババァーーーーーー』
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神川家side……
『ハッ、クッション!』
なんじゃ。誰か悪口を言っとるな……
まぁ、佳祐じゃろうが……
しっかりやれよ…
自分の過去といい加減お前は向き合うべきじゃ……