ようこそ、異世界へ
『ぅわぁぁぁぁーーーー』
『きゃぁぁぁぁーーーー』
…………5分後…………
『どぅわぁぁぁぁーーーー』
『いやぁぁぁぁーーーーー』
…………10分後…………
『茜ーーおー茶ーあーるー?』
『えー?にーさーん。なーんーでーすーかー?』
かれこれ1時間落ちてます(笑)
景色は岩肌しか見えず、風の音しか聞こえない。
最初の絶叫さえ懐かしく感じる(笑)
『にーいーさーん。さーむーくーなーいーでーすかー?』
『えー?なーんーてー?』
さっきからずっとこの調子(笑)
もしかして地球の中心ぐらいまで続いているのか?(笑)
でも同時にこのまま落ち続けて、しかもこのスピードで着地したら………
『絶対死ぬな(笑)』
茜だけでも助けなければ……
そう思い、茜を引き寄せ抱き締める。
『に、兄さん……。』
『すまん。気持ち悪いかもしれんが、我慢してくれ。』
聞き取れたかどうかはわからないが、離れないということは、大丈夫だろう。
…………2時間後…………
『暇だ………(笑)』
いいかげん、飽きてきた。
茜はじっとしている。寝てんのか?
向かい風が、強すぎて顔を見ることはできない。
すると、
それは突然だった。
ゴォォゥ……………………ゴゴゴゴゴゴ……
下の方で地鳴りがした直後、辺りが急に明るくなった。
暗い闇の中からいきなり光の中に投げされ、目が慣れず開けることができない。
『兄さん!下!下!!』
茜の声が鮮明に聞こえる。
先程と違う場所にいることを自覚する。
数秒後、おそるおそる目を開いてみると……
眼前にそびえ立つ大きな山。今まで見たことある山より、格段にデカイ。そして、都会では見ることの出来ない透き通った海。なにより驚いたのは、地上から天空まで届いているバカデカイ樹木。まだ上までありそう。その周りには大都市が見える。
そんな風に周りを見渡していると、
『兄さん!兄さん!落ちてますーーー!』
『忘れてた!やべぇーーーー!』
迫る地面はすぐそこまできていた。
『ぅわぁぁぁぁーーーー』
茜を強く抱きしめ、覚悟する。
……………ふにょん……………
想像してたより、地面って柔らかいな……
『ふごっふご、ふがふがっ!(兄さん!苦しい!)』
『あっ!わりぃ!』
急いで茜を離す。
『いえ。こちらこそありがとうございました。もうちょっとムードが欲しかったですけど……』
『ん?何て?最後の方、聞き取れなかった。』
『な、何でもないです!』
そっぽを向かれてしまった……
これが反抗期なのだろうか?悲しい……(笑)
『それよりも、なんでしょうかね。コレ?』
茜が指を指すのは、俺たちが着陸した"場所"。もとい"物"❔
水色のグニャグニャした物体。ひんやりする。
『それはわしのペットじゃよ。』
声のする方に顔を向けると、白衣を着た幼女がたっていた。
ピンク色の髪をおさげにし、丸眼鏡をつけた幼女が駆け寄ってきた。
『ご苦労さん。元に戻ってよいぞ。』
そう言いながら水色の物体に手をかざすと、"それ"はみるみるうちに小さくなり、車ぐらいのサイズになった。
『早く降りるのじゃ。』
幼女に急かされ、地面に降りる。
『よぉ参ったな。秀ちゃんより話は聞いておる。佳祐、茜よ。ようこそ、"ヴィルゼバウム"へ。そして"入学おめでとう。"』
『………………………は?』
俺と茜は顔を見合せ、目を丸くした。