第七話 『合格とありがとう』
え?その後どうなったって?結局、あずさちゃんは理事長の手を振り払って、妹のみずさって子と一緒に逃げちゃいました。でも、理事長はその結果が分かっていたようなので、残念そうな顔をしつつも驚いてはいませんでした。二人は無事なのか?さぁ…この場を逃げ切れたとしても、KDKに作戦が失敗したことが知られたら、ただではすまないそうですし…この時の僕は、自分の身の回りに起きた出来事を整理するのに、必死でしたから。
*
その後、試験は中止となり赤子たちは家に帰らされた。赤子は家への帰り道、酷くうなだれていた。
(試験は中止になったけど、絶対落ちたよなぁ…)
筆記試験、体力試験、実技試験、どれらも全て酷い結果に終わった。かろうじて、あの二人は合格するだろうが、ただの足手まといの自分は不合格に違いない。結果を楽しみに待っている母親になんて伝えればいいだろう…赤子は必死にそのことばかり考えていた。
「ただいまー…」
重々しく家の扉を開けると、赤子の帰りを待っていたかのように母親が微笑みを浮かべながら待っていた。
「おかえり小虎、聞いたわよ。テロリストの妨害にあったそうじゃない。」
「うん…てか、息子の心配はしてないの?」
「いやねぇ、さっきまではしてたんだけど、小虎の姿見たら吹っ飛んじゃって。だってあなた、傷が全くないんだもの!」
「え?」
母親にそう言われ、身体を見てみると、先程まであずさ達にやられた傷は見事に全部なくなっていた。
(なんで…?)
そう言えば、自分はあの戦闘のことを一切覚えていない。気が付くと、あずさ達はいなくなっており、他の生徒はみな病院へと送られていた。自分が気づいた時には、何もかも終わっていたのだ。
「それより小虎、試験の結果が届いているわよ」
「え、もう!?早くない!?」
「えぇ、だから母さんも驚いちゃって。先に結果見ちゃったのよ」
「見たの!?」
終わった…もう先に母さんに見られてたなんて…絶望していると、ふと赤子の脳裏にある疑問が浮かんできた。
(あれ?じゃあ、母さんはなんであんなに上機嫌なんだろう…?)
「ほら!小虎、見て!」
結果の報告書を見てみると、そこには自分の名前の隣に『合格』という言葉が書かれてあった。
「ご、合格!?」
(うそ…あんなに足を引っ張ってたのになんで?)
合格という結果に信じられない様子の赤子に母親が「これ、この合格書と一緒に入ってたの」と言って出してきたのは
「理事長からの手紙…?」
その手紙には『学園を救ってくれてありがとう』と葉宮の字できちんと書かれていた。