第五話 『最終試験』
「そこまで!」
ピーッと鳴く笛の音と共に、副会長である目黒の声で体力試験の終わりを告げる。赤子はその場に倒れこむように座り込んだ。
「や、やっと終わった…」
体力試験の内容は、持久走サバイバル…つまり、既定の人数まで残っていたグループが合格となる。赤子はフラフラになりながらも、猿山と犬神の二人の足を引っ張らない様に、必死に走りぬいた。まぁ、走っている間も猿山と犬神は喧嘩をしていたが。ちなみに、今も喧嘩の最中である。
(よくあんなに体力残ってるよなぁ)
喧嘩を続けている二人を見て赤子はそう思った。周りを見ても、みんな赤子みたいにその場に座り込んでいる状態だ。特に、女子生徒はその場に倒れこんでいる。そんな状態にも関わらず、この二人の体力は底をついていないのか、周りにも聞こえるような声の大きさで喧嘩している。
(次の試験までに終わればいいけど…)
多分終わらないだろうなぁ、と若干諦めつつも、次の最終試験までに体力を回復しておこうと時間になるまでその場で目を閉じた。
*
最終試験の内容は、生徒会である空海・目黒・石川と戦闘をするという内容だった。合格条件については何も説明されなかったが、普通に考えて、勝てば合格だろうと赤子は考えていた。なお、この試験では自分の言霊能力が使用可能なので、赤子は二人の能力がどのようなものなのか気になっていた。
(僕も、早く能力使える様にならないと…)
そう、赤子はまだ能力を使ったことがなかった。両親からは、祖母の血を引き継いでいるから、能力はあるはずだと聞いているけど、実際生きてから一度も発動していない。そのため、言霊の能力がどのようなものなのかまだはっきりわかっていないのだ。
(でも、そんなこと言ったら、また馬鹿にされるだろうし…)
猿山は驚くだけであろうが、犬神は絶対にバカにしてくるに決まっている。そう考えて、赤子は二人に何も話せなかった。
「おい、そろそろ俺らの番だぞ」
「あ、うん。今行く」
そうこうしているうちに、順番を知らせに猿山がやってきて、赤子は猿山と共に、最終試験へと向かった。会場へ着くと、すでに到着していた犬神が不満そうな表情で仁王立ちしながら待っていた。
「遅い、何分待ったと思ってるのよ」
「こいつを迎えに行ってたんだよ。つか、まだ試験始まってないし別にいいだろ」
「私を待たせるなんて、ありえないって言ってるのよ。このバカ猿」
「誰がバカ猿だって?このクソ犬」
「なんですって…?」
(やばい!早く止めないと…)
このままでは、試験にも響いてしまう。そう感じた赤子だったが、二人の仲介に入ろうと試みたが、見事に玉砕されてしまった。
(どうしよう…)
赤子が困り果てていた時、三人の名前が呼ばれ、最終試験が始まる事を告げられた。三人が会場に入ると、そこにはすでに生徒会三人が待ち構えていた。
「随分と外が騒がしかったみたいだが?」
「もしかして、喧嘩とかしちゃったの?」
「「違います!!」」
「ぶっは!確かに、息揃ってるし、喧嘩していたとは思えねぇよな!」
(思いっきり喧嘩してたってばれてるし)
茶化すように聞いてくる石川に対し、同時に二人で答えると、どうやら石川のツボにハマったらしく、腹を抱えて笑い転がった。空海はため息を吐き、話しを続けた。
「まぁあのバカはほっといて、時間がない。そろそろ始めようか」
「馬鹿って酷くねぇか!?なぁ、いっちゃん?」
「三人とも、準備が出来たら責めてきてください。いつでもいいので」
「まさかの無視!?って…」
石川の言葉を遮るように、最初に石川に殴りこんだのは猿山だった。だが、石川は読んでいたかのように猿山の手首を掴み、寸でのところで止めた。
「ま、そうくるとは思ってたけどな」
「なんだと?」
「戦闘において、敵に隙を与えてはいけない。その隙を付け込まれるからだ。だが、逆に言えば、わざと隙を見せれば、相手の攻撃を誘導する事が出来る」
「まさか、最初から計算して…?」
「それはどうだか…さ、まだまだ仕掛けて来いよ。これだけじゃないだろ?」
「その通り…って、え?」
次の攻撃を猿山が仕掛けようとしたその時だった。目の前にある校舎が急に爆発したのだ。