第四話 『猫又あずさ』
試験会場である教室に付くと、筆記試験が行われた。が、学力が人並み以下の赤子には難しく、さらに猿山も学力は赤子以下だったため、赤子たちは開始直後からピンチに襲われた。だが
「まったく、なんでこんな簡単な問題も解けないのかしら。あなたたちは」
そんなピンチを救ったのは、犬神だった。彼女が各教科満点を取ったおかげで、赤子たちはなんとか筆記試験を突破した。その後、体力試験が行われるグラウンドに到着すると、そこには猫又の姿があった。猫又は赤子に気付くと赤子にの元に駆け寄って来た。
「赤子君!」
「猫又さん!筆記試験突破したんだね!」
「はい!赤子君も突破出来てよかったです」
と、言って猫又は赤子に微笑みかけた。赤子は頬を赤く染め上げ、猫又から視線をそらすと、その場にいた犬神が赤子に猫又のことを訪ねて来た。
「赤子君、この子は?」
「ね、猫又あずさちゃんって言うんだ」
「猫又あずさです。よろしくお願いします」
「よろしく…って言ってもアタシはするつもりないけど。でもまぁ、冴えないあなたにこんな可愛らしい知り合いがいたとはね。驚きだわ」
「…僕も今日知り合ったばかりなんだよね」
「あらそう。でも、アタシには関係ないけどね」
君が聞いてきたんじゃないか!と嫌味を言ってくる犬神に怒りを覚えながらも、その言葉を声に出すのは出来なかった。
「…」
赤子に嫌味をいう犬神の隣で、猿山はただじっと猫又のことを観察していた。しばらくして、赤子が次の試験のため猫又と離れた赤子は、険しい表情を浮かべている猿山に話しかけられた。
「おい」
「な、なに?」
「お前、あの女といて何か感じねぇか?」
「違和感?…いや、ないけど」
「そうか、これは俺の勘なんだけどよ…あの女には気をつけろ」
「猫又さんのこと?」
「そうだ、アイツのことを見てたが、どうにもあいつは怪しい。この学園で危険なことをする輩はいないとは思うが、可能性がないわけじゃない。一応注意しとけ」
「わ、分かった」
何かあったら言えよ!と言って、猿山は次の試験の準備をするため、行ってしまった。
(気をつけろと言われてもな…)
会ったばかりの他人に警戒しろって言っても無理な話だし、それに…個人的にだが、赤子はそんな感じには思えない。こんな自分のことを気遣ってくれているのだ。しかも赤の他人の自分に、だ。そんな彼女がそんな危険な真似をするとは思えないし、思いたくない。とにかく赤子は、試験が無事に終わる事を祈り、体力試験に臨んだ。