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序章〜10時15分及び遅刻〜

タッタッタと走る音が、妙に廊下に響く。首にマフラー、手には指なし手袋をはめた少女が長廊下を小走りで走っていた。

時刻は10時15分。ちょうど二校時目の授業が佳境に入っている頃だ。

2年A組の華宮初音はこの日、前日顔に蕁麻疹が出たため学校を休む予定だった。

だが、思いのほか病院がすいていたので診察が早く終わったため遅刻して学校へ登校していた。

階段を三階分一気に駆け上がり、目当ての教室へとたどり着いた。

ハァ・・・流石に鞄もって二段飛ばしはキツイ・・・

初音は息を整え、教室の扉に手をかける。いちおう欠席届を出していたので、みんな驚くだろう。

普通の顔をして入ろう!!

意気込んで扉をガラッと開ける。

「おはよーございます」

2−A全員の顔がこちらに向く…はずだった。だが、教師はおろか生徒は誰一人初音のほうを向こうとしない。3人の男子生徒をのぞいて。

「あ、おはよう」

3人の生徒はあろうことか、授業中だと言うのに立ち歩いていた。今の時間は社会、何もたって歩く事はないはずだ。

「は、初音?お、お前学校休むんじゃなかったのか?」

初音に聞いてきたのは今本潤(イマモトジュン)

「うん。そのつもりだったんだけど・・・病院が空いてたから学校来たのよ」

「へぇ・・・そうなのか?・・・初音、お前今何ともない?」

いささか引き攣った表情で、佐柄木千裕(サエキチヒロ)が尋ねてきた。

それは蕁麻疹のことを聞いているのだろうか?

「蕁麻疹だったら平気だけど?昨日薬貰ってきたし。それより、あんたたち立ち歩いて平気なわけ?今って社会の時間よね?」

そう言ってからふと気がついた。どうして自分は喋っているのに注意されない?それ以前に、何故教師は一言も喋っていない?普通おはようくらいは言うはずだ。

それと、もう一つ重大なことを気がついてしまった。この3人を抜かして、手を動かしている生徒が一人もいない。どういうことだ?

「ねぇ、どうして皆手動かしてないの?」

初音が問うと、3人の顔がますます引き攣った。

その時、校内放送が流れた。

「光介!!潤!!千裕!!テメェら早くスイッチ押せやボケ!!」

ブチッと言って切られた放送の余韻が、教室中に充満している。

「千裕、どうすんだよ?早く行かねえと師匠教室にまでくるぜ?」

「…仕方ねえだろ。光、お前はこいつのこと頼む。潤、スイッチ。俺は準備しておく」

わけの分からぬ急展開に初音はついていけず、ただ呆然としていた。

千裕は教室を出て行き、4階へと向かう。

「え、千裕どこ行ったの?ってか潤!!勝手に弥生のパソコン起動していいの!?」

初音の学校は中高連携校のため、全教室がパソコンになっている。そのため生徒はデスクトップ型のパソコンを所持していた。

「ねえ弥生、潤が勝手に・・・グェッ!!」

潤にやめろと言いに行こうとしていた瞬間、松田光介にマフラーを引っ張られ窒息しそうになった。

「この、何すんのよ!!」

光介に右ストレートを食らわせようとした。が、パシッと受け止められ首をしめられた。

「あっ・・・ちょ、死ぬって!!光介!!光介さん、死ぬから!!マジで!!」

いつのまにか千裕が教室に戻って来ていた。手には見かけないバッグを持っている。

「潤、いいか?」

「あと10秒…5…4…3…2…1…今!」

潤が今、と言った瞬間、弥生の前の席である生徒の机の中に千裕が飛び込んだ。否、吸い込まれた。

続けざまに潤も机に飛び込み、2人が居なくなった。

初音はその光景を唖然として見ていた。光介に至ってはあくびをしていて余裕綽々だ。

「光介・・・」「何」「夢だよね?」「俺首絞めてるけど・・・痛くないの?」「痛い、だから力強めないで・・・」

光介とのやり取りの後、初音はがっくりと首を絞められながら肩を落とした。



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