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迷子

「遅れないようについてきて下さい。」

少し嫌味な口調。

「はいはい、ご主人様。」

「菅原と呼んで下さい。」

一呼吸おいて返事がきた。

「あの、菅原さん。あなたは一体この学園の何?ただの美術講師じゃないわよね?」

菅原は歩みも変えず前を見たまま答える。

「何でそう思われるんですか。」

何でそう思ったんだ私?少し頭を整理する。面接の試験管だったから?

「私の面接をしたでしょ。」

「アシスタントの面接を学園長が直々にやるだろうか?」

まーた、癇に障る言い方。

「たかがアシスタントで悪かったわね。」

「たかがなんて言ってないよ。正直、アシスタントは必要な人材だからね。」

「じゃあ、学園長がやってもいいじゃない。」

「アシスタントに必要な資質は人間性。柔軟性と冷静な判断力を特に重要視するんだ。講師と違って、魔力の判断ではないから誰がやってもいいことになってる。」

そう聞くと、さっきの面接が急に恐ろしく感じられる。そんなこと、どの段階で見られていたんだろうか。残念ながら私は両方持ち合わせちゃいないわ。

ところで、五分以上は歩いた気がする。建物の中の五分はかなりいい距離のはず。この建物の広さ、計り知れないわ。

「かなり歩いたと思うんだけど、まだエントランスに着かないの?」

螺旋階段は終わり、一度中庭を抜けたと思ったら、屋上のような場所に出て、そこから長い洞窟のような所を今は歩いている。

菅原からは応答がない。

「もしかして、わざと遠回りしてるとか?!」

慌てて、顔を覗き込む。その瞬間私の顔から表情が消えた。

彼の顔色が著しく悪い上に冷や汗までかいている。

「どっどうしたの?気分でも悪いの?」

そう質問した瞬間、菅原の手が私の腕を掴みそっと引き寄せた。

「私のそばから離れるな。」

この意味不明の行動に私だけがどぎまぎしている。

「なっ何でよ!」

「実は少し前から見たことない空間を歩いてるんだ。」

何ですってーーー!

「あなたの学園内でしょ?」

私の手も菅原のシャツを思わず握る。

「ここが学園かももはや分からない。それだけじゃない、とてつもない魔力がこの周辺を覆っている。」

?!

「それはどうこと?」

菅原の青い顔は横に揺れる。

「分からない。こんなことは前例がない。一つ言えることは、魔力が強すぎて私の力では私と君を保護するだけで手一杯だ。」

笑みを浮かべているが、余裕がないことは分かる。

「他の講師も同じ状況になってるのかしら?」

少し間を置いてから、菅原の口が開く。

「仲間にはさっきからシグナルを送っているが、誰からも応答がない。」

「さっき保護していると言っていたけど、あなたがバリア的なものを張っているの?」

「いや、空気の温度を利用して私たちの存在がどこにいるか分からないようにしている。といったところかな。」

「すごい魔法。じゃああなたの魔力がきれたら見つかって攻撃をうけるの?」

「さぁ、相手がこちらに敵意をもっているかも分からない。ただ、私たちを探してはいるようだ。」

「私にできることはない?」

「実は魔力を少しずつもらってる。」

「私の?ないわよそんなもん。」

「人間は誰もが持っているんだよ。使い方を本能で知らないだけ。」

「?」

人間の魔力について聞きたいとこだけど、今はそれどころでない。何より今気なることは、

「ねぇ、この巨大すぎる魔力の持ち主はどこにいるの?」

「直接接触してこないところを見ると、同じ空間ないではな…」

話の途中で菅原が黙り込んだ。その理由は、

二人の前方に扉が現れた。

「が、がいせんもん?」

そんなわけあるか!と自分に突っ込む。

「今日は予想外なことばかりだと言いたいとこだが、こうなることを全く予想していなかったと言えば嘘になるんだろうな。」

予想していた?凱旋門を?いやいや、こうなることって一体どういうことなのよ!!


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