不死の妙技
なんだいお前さん。
永久に保存したいものがあるのかい?
何でも金属鍍金でそのままの形で保存してやるよ?
・・・おやおや、裏のほうのお客さんかい。
こんなとこで話すのもなんだ。
ちょっと向こうの部屋に来てくれないかい?
何をお望みで?
不老不死とね。
これはまた珍しい。
いったいなんでまたそんなものを・・・
・・・いえね、最近はどうにもそっちのお客さんが減り気味なもんで。
今の世の中で生きながらえたって仕方ないってことかね。
え、早くしろ?
まあそうあせるもんじゃないよ。
短期は損気、急がば回れってもんだ。
なんにせよ久しぶりなもんで、ちょっと必要なものを探さにゃならんのでね。
その間に大枚払ってまでこんな酔狂に走った理由でもお聞かせ願えるかい?
そんなに怒ることないだろう。
はいはい、酔狂なんていって悪かったよ。
効果はちゃんと本物さ。安心しな。
理想の相手が見つかるまでずっと美しいまま生き続けるねぇ。
その調子だとさぞかし高い理想なんだろうさ。
そんなことはない、早く探せって?
そりゃ悪かったね。
そうはいっても、うちが提供するのは「不老不死」。
あんたももうちょっとさ、悠長な考え方を身に着けるべきじゃないかい?
いや、違うな。
ほっといてもすぐに時間なんて気にならなくなるさ。
一応あんたの希望もちゃんと聞かせてもらおうかね。
さっきも言ったって?
ありゃ違う、今聞きたいのは理由じゃなくて手段さ。
値段も精度も手段もピンきりだからね。
一瞬がいいか、痛くないのがいいか、確実なのがいいか。
時間はかかるが古代の聖人がやったような由緒正しいやり方だってあるんだ。
さあ、どれがいい?
早くて確実、安価でつらくないものだって?
そりゃまたずいぶんと都合のいいことで。
おいおい怒るなって。
気と髪は長いほど、なぞは多いほど女ってのは魅力的だと思わないかい?
冗談はこれくらいにしておこうか。
ほれ、これを飲めばあんたは金輪際老化に苦しめられることはない。
ずいぶんと簡単で雰囲気もないって?
仕方ないだろう、これが一番安いんだ。
もっと大枚はたいてくれればいくらだって風情のあるやり方だってあるんだよ。
それとも出してくれるのかい?
はぁ、これで良いと。
不老不死目指すんならもうちょっと俗世的なものから離れようとしないもんかね、普通。
ほれ、これがあんたの目当てのものさ。
錠剤タイプ、使い方もいたって普通、単純にしてもっとも簡単。
なんてったって家に帰って、水で飲み込むだけだからね。
一気に飲み込まないと強烈な味が口の中に広がっちまうから気をつけな。
あ、ここで飲むんじゃないよ?
この狭い部屋で倒れられちゃ雪崩が起きちまう。
飲んだら体の力が抜けちまうんだ。
布団の上か、せめてソファにでも座ってから飲むのをお勧めするよ。
さて、これであんたも欲しい物を手に入れたわけだ。
ちゃんと見返りは払っておくれよ?
・・・よし、ちゃんと足りてるね。
毎度あり。
あんたの願いがちゃんと叶う事を祈ってるよ。
もっとも間違いなく効くんだけどね。
まあ大船に乗った気持ちでいるといいさ。
老いず、死なず。
そんな状態になれるとっても簡単な方法、知ってるだろう?
死んじまえばいいのさ!!