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あるパーティで

作者: 早瀬由莉亜

よくある王道です。サラッと読んでいただけたら嬉しいです。


 ただ私は、平凡な幸せが欲しかっただけなのにっ!



 この国では、18歳で成人と認められる。そして皆、成人のお披露目パーティに参加する。このパーティは文字通り、成人になりましたよ、というパーティなので付き添いは認められない。つまり身内の同伴は許されない。条件はこれだけで、貴族だけではなく一般庶民も、もちろん孤児院などの施設で育った子供も。身分に関係なく、同じパーティに参加するのだ。


 リリィも今年18歳になりパーティに参加する。リリィの家は一応、貴族に分類される身分だが一見すれば一般庶民とそう変わらない。友達も普通の子達が多い。パーティを一週間後に控えたその日も友達数人とパーティの話題で盛り上がっていた。



「ねぇ、リリィ。ドレスはもう届いた?」

「うん。昨日届いたのよ。うちの兄さまが、早く着てみせてくれってうるさくって!」

「あぁ、ジルさまね…。ジルさまはリリィ大好きだものね。」


 そう言ってシェリーとティナに苦笑いされた。ジル兄さまは自他共に認めるシスコンだからね☆


「シェリーとティナは?ドレス届いたの?」

「私は早めに頼んだからね。先週届いたわよ。ティナはまだって言ってたわよね?」

「そうなの。多分、明日には届くんじゃないかしら。楽しみだわ~。」


 そんな話をしていたら、「そういえば、」とティナが話し出した。


「お母様にね、パーティで素敵な旦那様候補を見つけてきなさいって言われたのよ。」

「あ~、うちも言われたわ。確かにチャンスだものね!」


 笑顔でシェリーが答える。


「シェリーはパーティじゃなくても寄ってくるじゃない。」


 そうなのだ。シェリーは美人さんなのだ。でも中身は男前な性格をしてるからギャップが面白い。あ、ちなみにティナは美人というよりは可愛い系。


「シェリーもティナもモテるからお相手するのが大変ね~。その点、私は平凡だからパーティではゆっくり観察させてもらうわね。」


 ニッコリ笑って私は言った。そう、平和が一番!ただでさえ疲れるパーティなのにわざわざ大変な思いをする事はない!お料理が楽しみだな~。なんて思っていると、


「何言ってるのよっ!リリィこそ大変じゃない。ゆっくりなんてできるハズないわよっ!?」


 シェリーがそう叫ぶと、ティナも。


「そうよ~。リリィは気づいてなかったかもしれないけど、あなたが一番モテるのよ。そろそろ自覚してもらわなきゃ。」

「へっ!?私??なんで?」


 ぽっか~んと口を開けてしまった。イカンイカン!


「リリィ…。ホントに気づいてなかったのね。」


 シェリーが呆れ気味につぶやいた。すると、ティナが苦笑いしながら教えてくれる。


「私たちが知る限り、だけど。今まで何度かパーティに出席したでしょ?ま~、私たちも出席できるくらいのパーティだからそう大きなものじゃなかったけど…。リリィはいつもジルさまと出席してたからわからなかったのね。あなた、いろんな男性から見られてたのよ~。声を掛けようとしてた方もいらしたみたいだけど、ことごとくジルさまが邪魔をしてあなたに近づけなかったからね。」

「そうだったの?」


 まったく知らなかった…。でもホントかな~。



☆★☆★☆★☆★☆★



 そんなこんなでパーティ当日。


「リリィ!オレも一緒に行くぞっ。オレだってわからないように変装するから、もうちょっと待っててくれ!」

「兄さま…。ムリだから!いいかげん諦めてよ。」

「諦めるもんかっ。オレのリリィが危ないんだぞ!?」

「イヤ…、危なくないし。ってか私、兄さまのモノでもないから。」

「リリィが冷たい!おまえはオレのモノに決まってるんだからな!?」

「あ~、ハイハイ。では、お父様、お母様、行ってまいります。」

「楽しんでおいで。」

「リリィ~!!」


 は~、もう疲れたよ…。玄関先で兄さまを振り切ってやっと出発できました☆なんか兄さまの目に光るモノが見えたような。。気のせいだね!





 会場は城下では一番大きな講堂だった。夜だというのに周囲は明るく、会場内からは楽しそうな声と音楽が聞こえてくる。どうやらパーティはもう始まっているようだ。リリィは会場前で馬車を降りるとゆっくりと入り口へ向かった。



「あっ、リリィ。やっと来たのね。」


 会場へ入ってすぐの所でシェリーが声を掛けてくれた。


「シェリー!そうなの、やっと兄さまを振り切ってきたのよ。」

「あははっ、ジルさまやっぱり一緒に来たがったのね。」

「うん。変装するから待てって言われたわよ…。」


 私が疲れたように言うと、シェリーはまた笑いだした。


「ティナは?まだ来てないの?」

「あぁ、ティナね。ほら、あそこよ。」


 そう言われて見てみれば、二人の男性に挟まれて熱心に話しかけられている。


「さっそく、か。」

「そう。さっそく、よ。」


 ティナは少し困ったように笑っていたが。ま、ティナなら大丈夫でしょ。


「シェリー、私お腹空いたから少し食事してくるわね。」

「わかったわ。行ってらっしゃい。気をつけてね。」


 ニヤリと笑われた。食事するのに気をつけてってどういう意味だろう?首を傾げながらもテーブルへと向かう。


「失礼。リリアナ嬢ですね。私はエルガー・ドーシェと申します。少しお話しませんか?」


 突然、男性から声を掛けられた。驚いて振り向いてみると、私より年上の優しそうな男性がいた。あ、『リリィ』っていうのは私の愛称ね。


「あの、どうして私のこと…。」


 戸惑いながらそう言うと、柔らかく微笑みながら答えてくれた。


「もちろん、あなたの事はよく存じ上げていますよ。ただ、パーティではいつもジル殿がいらしたので声を掛けられなかったのです。やっとお話できました。」

「はぁ。」


 私は何も返す事ができずに、そう言うしかなかった。どう、存じ上げているんですか??エルガーと名乗った男性を見上げていると、その隣からまた別の声がした。


「エルガー、さっそく声を掛けたんだな。リリアナ嬢。今日はジル殿がいないからあなたとお話できるのを皆楽しみにしていたんですよ。エルガーも私もね。」

「なぜですか?私は何も面白いお話はできませんよ?」


 首を傾げて返す。2人は楽しそうに微笑む。


「あぁ、やはりあなたは楽しい人ですね。お話できて光栄です。」


 話している内に、気づけば私たちの周りには人が増えている。ん~、男性の割合が高いかも。これって、ティナが言っていた事がホントだったってコトなのかな??でも、モテるっていうのとは、ちょっと違う気が…。なんか面白がられているだけのような。でもちょっと困ったな~。私、お腹空いてるのに!とか思っていると、聞き覚えのある声がした。


「やあ、リリィ!久しぶりだね。相変わらず人気があるね~。」

「あっ!ライ様!!」


 声のする方を見れば、ライ様がいた。ライ様は、ライオネルト様といって兄さまのお友達。女の子たちに騒がれるキレイな顔立ちに長身。でも、気取った所はなくてとても優しい。兄さまの友達をやっていられる貴重な方。たしか、実家の跡取りだって言ってたかな。兄さまもあれで一応跡取りだから、何か共通点があったのかも。困っていたところで声を掛けてくれて、助かった。


「お久しぶりです。お会いできて嬉しいです!」


 ニッコリ笑って言ったら、ライ様も笑ってくれて。


「僕もだよ。リリィを見つけられて良かった。おいで。少し食事をしよう。お腹空いただろう?」

「ハイ!」


 ライ様に連れられて、私はやっとテーブルにたどり着き食事にありつけた。


「ライ様。ありがとうございました。少し困っていたんです。あんな風に男性から声を掛けられるとは思ってもみなかったので、どうしたらいいのかわからなくって…。」

「ははっ!いつもジルのヤツがべったりひっついて威嚇してるからね。みんな今しかないって思ったんだろう。」

「はぁ、兄さまが…。」


 呆れてしまう。威嚇って、そんな事してたのね。ため息を吐く私を、ライ様は楽しそうに見ている。


「そうだ。リリィに聞いておきたい事があったんだ。リリィは18歳になったけど、縁談とかはきてるの?」

「縁談?いえ、聞いてませんけど…。そろそろお話があるかもしれませんね。」

「ふ~ん。リリィはどんな人が良いのかな?」

「どんなって…。私、貴族じゃない人がいいなって。ほら、貴族っていろいろ疲れるでしょう?それに私、仕事をしてみたくって!結婚したら、旦那様と一緒に働くんです。楽しいと思いません?ってもしかして、縁談を紹介していただけるんですか?」

「紹介?あぁ、リリィにぴったりの良い縁談があるんだ。そうか。リリィは働くのは嫌じゃないんだね。よかったよ。」


 そう言うとライ様は、艶やかな笑みをうかべ私を見つめて。サラッと言った。


「リリィ。僕の所にお嫁に来ない?結婚したらリリィにも働いてもらわないといけないんだけど、君と一緒だと仕事も楽しめそうだし。それに、僕は貴族じゃないしね。ぴったりだと思わない?」

「………え?」


 今、サラッと結婚を申し込まれましたよ!こんな所で!私はびっくりしてポカン、と口を開けたままライ様をじっと見てしまった。しばらく見つめ合ったまま…。ハッと我に返って聞き返してみる。


「えっと。今、私に言いました…?お嫁にって…。」

「うん。そうだよ。リリィに、僕のお嫁さんになってもらいたいんだ。いいよね?」


 いたずらっぽく笑う。いいよねって言われてもですね!

 そこでやっと気づいた。なにやら、皆に遠巻きにされているんですが!これじゃ、逃げられないじゃないかっ!


「ええっと…。ライ様が貴族じゃないなら家族に相談してからじゃないと…。」


 私がやっとそう答えると、ライ様はニヤリと黒い笑みを漏らした。えっ、なんですか!?


「君の家族が許せば、お嫁に来てくれるんだね?」

「まぁ、あの兄さまが許すなら…。」


 あの兄さまがそう簡単に許すハズはないだろうと思いつつ答える。


「じゃぁ、問題はないな。君の家族にもジルにも許可はもらってるからね。君は僕の婚約者だ!」


 大きな声で宣言されて、ギュッと抱きしめられた。なんですと~!?イヤ、皆拍手なんてしなくていいからっ。ハメられたっ!


「えぇ~!ライ様、ズルイ!!それじゃもう決定じゃないですか~。」

「そうだよ。君が了承したんだから決定だよ。やっと僕のものになってくれたね。リリィ、愛してるよ。」


 いきなり微笑んでそんな事言われてもですね!…ウレシいですけど。だって私もライ様は好きだったんだし。それにしても周りの皆さんの浮かれよう、女性たちの嫉妬の視線はスゴイです。いくらライ様がモテモテだからって、ここまでとは!あ、隅っこのほうで打ち拉がれてる男性もチラホラ。女性だけでなく男性にもモテてたんですかね、ライ様は。


「そういえば!ライ様、貴族じゃないってことはどこの商家の跡取りなんですか?」


 私は思い出して聞く。私も働くならちゃんと聞いておかないといけませんよね。その言葉が聞こえた皆さんは、なぜが絶句。なんですか?そんなに有名な商家の方だったんでしょうか?


「あれ、リリィは知らなかったのか。僕の家は、貴族でも商家でもなくって王家だよ?」

「はぁ~~??」


 叫んでしまった。王家って!王家の跡取りって王太子じゃないかっ!!ムリムリムリ~~!!私は必死で逃げようともがく。が!ライ様の腕が私の腰にしっかり絡まっていて抜け出せない~。


「リリィ?もう逃げられないよ?諦めてね?」


 ニッコリ笑って言わないでください!そして近衛の皆さんに目線で指示して囲ませないでください!

 なんかもう、捕獲されたみたいです。ガックリ。



☆★☆★☆★☆★☆★



 あとで知った話だけど。ライ様は随分前から私の家族に縁談を申し込んでいたらしい。兄さまも最終的には王太子に逆らえず…。でもかなり頑張ったらしいけどね。それにいつも優しいライ様だけど、普段は優しくもないし殆ど笑わないとか、ウソでしょ!私限定って、くやしいけど嬉しいじゃないか~!


 なんやかんやで私、幸せみたいです。でも、平凡な幸せが良かったな~。贅沢なのはわかってるけどね!



最後まで読んでいただいて、ありがとうございました!

急に思い立って書いたので、短かかったかも…。楽しんでいただけたら幸いです(*^-^*)

文章を書くって難しいですね〜(苦笑)

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