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嘘つきの嘘つき。  作者: 吉駄
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13/14

12話

再び俊介は晴を睨み付け、ここでは晴にのみわかる怒気の含まれた声で『ちょっとこっちにこい』と首で人気の少ない学校の影を指した。晴は苦笑しながらも俊介のあとを素直についていく。


「ちょっと俊介と話あるから先教室行ってて」


置き去りにされ固まっている二人に向けて晴は少し大きめに声をだした。他の生徒は声を出している晴に注目するが次第にその注目は一人、二人と薄れていく。


「わ、わかった」


「りょうかい~ん」


二人はそれぞれ返事をして、それを聞いた晴は最後にニコっと笑い手を上げながら姿を校舎裏に消していった。


「六道くんと晴くんって知り合い?」


「私にわかるわけないよん」


そんなことを言いながら二人も校内に向かっていく。二人を追いかけてみたい気もしたのだが相手はあの六道だ。下手に刺激を与えたくないと思う部分が気持ちのほとんどを占めていた。


俊介は校舎裏に到着して誰もいないことを確認する。そしてさきほどの怒気を含みながらそれとはまた別の感情を乗せ晴に話しかけようとした。


「久しぶり俊介。元気してたか?」


したのだが先に口を開いたのは晴だった。いつもこいつはタイミングを崩してくると俊介は心の中で悪態を吐く。しかし挨拶を無視して自分の話を進めるのは無礼として受け答えはきちんとする。


「ああ、元気だったさ。そっちも相変わらずそうだ」


「まーね。鈴のおかげで暇はしてないよ」


鈴自身には一度も言ったことのない言葉をあっさりと彼女の弟に話した。だがその話は俊介にとっては気分の良くなるものではなかった。先ほどの怒気をさらに増して今にも晴に掴みかかりそうな雰囲気になる。そんな様子を見た晴は純粋におかしくなって少し笑ってしまった。すると笑われた俊介はすごい勢いで晴を睨み付ける。


「ああ、ごめんごめん。相変わらず俊介は鈴が大好きなんだなっと思ってね」


「な!」


遠まわしにシスコンと呼ばれた俊介だが、それは怒気を増すよりも焦ってしまいさらに晴を笑わせる結果になってしまう。そんな晴を見て今にも掴みかかりそうだった怒気はなくなり、代わりに怒るのも馬鹿らしいという気持ちがこみ上げてくる。


「ふん、笑いたければ勝手に笑え。あの人は俺の最大の目標であって憧れなんだ」


その顔はどこか理想を求めているもので、本当にそう思っているであろう俊介の顔を見て笑ってしまい悪いことをした気分になる晴だった。


「だからあの人が悲しむ結末だけは許さないからな」


「わかってるよ」


おそらく姉を追いかけるために保護員としての実力を必死に上げ、かなでの保護員役としてここに来た俊介にそれ以外の言葉はいえなかった。

俊介は鼻を鳴らしもう自分が言いたいことは終わったとその場から去ろうとする。しかし晴には聞きたいことが一つだけあった。


「俊介一つだけ聞かせてくれ」


「なんだ?」


「あいつは元気か?」


晴の表情が若干硬いものになってそれを見た俊介は再び鼻を鳴らす。

俊介は晴が気にしていて尚且つ自分で連絡を取れない人を知っている。だから当然あいつとは彼のことになる。


「当然だ。でなければ今ここに俺はいない」


聞くまでも無い愚問だ。と言い残しさっさと先に教室に向かっていってしまい、その場には晴一人が残された。まだ新しい生活が始まったばかりのこの季節、少しだけ風が冷たくて足早に校舎に向かう晴だった。


教室に入ると話を聞きたそうにソワソワこちらを見ているかなでと別のクラスのはずの由愛がいた。ちなみに俊介はすでに自分の座席に着席していて腕を組みながら眼を瞑っている。


「晴っち、晴っち。六道くんとは知り合いなの?」


晴がかなでの隣にある自分の席に座るとすかさず由愛が質問をしてきた。呼び方が変わっているのはまあ気にしないでおこうと思っている。由愛の瞳は光り輝いていてその様は噂話に眼がないおば様方のようだ。


「まーね。あいつとは小さいころからの付き合いだよ」


「えー!昨日そんなこと言わなかったのに!」


かなでは『何で教えてくれなかったの!?』と眼で訴えてくるが。


「かなで。俺の首もごうとしてたじゃん」


言うのがめんどくさかったのと他にも理由はいろいろあるが、とりあえずそれを無視してかなでに悪戯を仕掛けた。おそらくかなでの性格なら慌てるんだろうなと思ってのことだが、案の定かなでは真っ赤になって弁明と否定を繰り返し始めた。


「ちがう!ちがう!あれはちょっとだけ興奮してただけだもん」


「ちょっとの興奮で首もがれてたら、いくつ首あっても足りないね」


「かなでっち。やるねー」


「そんなことしないもん!!」


二人から攻め立てられたかなでは必死になって否定した。そんなかなでの様子がおかしくて晴も由愛も笑ってしまうのだった。

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