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嘘つきの嘘つき。  作者: 吉駄
入学
10/14

9話

修学旅行中にかなでのクラスの生徒全員を乗せたバスがバスジャックされ、そのまま全員誘拐されたのだ。そして誘拐された先で待っていたのは捕まっているかなでの両親と組織の人間多数とその組織に捕らえられた別の人間二名ほど。

そこで組織の人間はかなでに人質と両親を殺されたくなかったらこの二人を殺せというものだった。

当然そんなことなど出来ないかなでは一向に首を縦に振ろうとはしなかったのだ。そしてついに組織の人間は腹を立ててまずは父親を撃ち殺した。

響き渡る悲鳴と怒号の中ついにその銃口はかなでの母親に向いた。バーンと音が鳴り響き頭から血を流して横たわる母親を見たとき、かなでの中で何かが崩壊し悪魔が囁いた。


『こんなやつら許すの?私が何かした?いいじゃない、殺しちゃおうよ』


そしてかなでは凶行にでる。

まずスパイダーネットを誘拐された全員にかけるとその場にいるほかの人間を全員殺し始めた。


『ただでは殺さない!両親が受けた苦痛以上をもって!最大の恐怖をもって!最後に殺してやる!』


数十分後その場に現れた政府の保護員は血まみれになり涙を流しながら笑っているかなでと、歯をガチガチと音を鳴らしながら怯えきっている誘拐された人達と四肢がバラバラになり潰れて死んでいる誘拐犯の死体を見たのだ。

その後かなではメンタルケアを受け一年たち再び学校に通学したのだが、そこにかなでの居場所はなく以前中の良かった友達も先生方も完全にかなでから距離をおいていた。そのうち学校も不登校になり高校進学も不可能な状態になったのだ。

しかし唯一、由愛は以前と変わらずに接していて不登校になってからも家に遊びに行ったりしていて、そんなかなでの様子を見た由愛の紹介でこの高校の校長と面談する機会をもらい、特別枠で入学許可をもらったのだ。

校長いわく、『可愛い子は世界の宝です!』とのことだった。

その噂の校長はいまだに狩りを楽しんでいるらしく保健室の外からは『ぎゃー』だの『ちょ・・・そこはだめええ』などの悲鳴が聞こえてくる。


「今でも誰かが怪我をしそうになるとか誰かが襲ってくるとか、そういうことを考えただけでさっきみたいな状態になっちゃうみたいで、二ヶ月ぐらい前に組織の残党みたいなのが襲ってきたときもあの状態になっちゃの」


どうやらかなでのあの状態は自分の意識とは関係なくなってしまうもので、過去のトラウマからスイッチが押されて肉体を保護するために強力な魔力による二つ目の人格が出てきてしまうということだった。そしてその間もかなでの意識はあるらしく自分のやったことはすべて覚えているとのことだ。


「いつまたあの状態になるかもわからない!今度は友達に矛先をむけるかもしれない!もう誰かを傷つけたくないのに・・・!」


俯いてポロポロと泣き出すかなでとそれを黙って見守る由愛。


「うん。かなでは優しいんだね」


目に涙を浮かべながら顔を上げるかなで。


「体育館のことと、今の話で確信したよ。かなでは友達思いの良い人なんだなってね」


「私はそんな綺麗な人じゃない!だって人を何人も殺したんだよ!私のせいで友達も巻き込まれた!それにあの心の声だって結局は私の深層心理なんだよ!」


捲し立てながら話すかなでを晴は目を逸らさずにジッと見つめる。


「でも友達には手を出さなかった」


ゆっくりと言い聞かせるように晴はかなでに話しかける。


「心の声がかなでの本心だとして、その本心が体を動かしている間なんで友達が無事だったんだと思う?

本心から友達を守りたかったんだと思うよ、きっと。だからそんなかなでをかなで自身が嫌いでも由愛は好きだし俺も好きになれると思う」


一息入れ続けて言う。


「それに今回は何も出来なかったけどかなでの友達って理由で襲われるなら、その組織の人間には容赦はしないし、きっと次はかなで自身を止めてあげる」


かなでは晴の言葉をゆっくり呑み込み完全に泣き止んで微笑した。


「今日会ったばっかりなのに、そこまで言ってくれるなんて晴くんって本当に変な人だね」


「全然変じゃないし、普通だし」


晴は自分の周りに(変人)がいるためその類と一緒にされたくないと変という言葉にはやたらと敏感になっていたようだ。少しだけ不機嫌になった晴をみてその言葉を発する為の緊張が解けたのか、それでも若干ある緊張感とこの人なら大丈夫という安心感をあわせて。


「じゃ・・・じゃあ!」


「?」


「私と友達になってくれますか?」


かなでは一歩踏み出してみた。


「もちろん」


久々に見たかなでの心からの笑顔を見て、由愛もちょっぴり幸せな気分になるのだった。

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