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イシュバンと氷葬の魔弾  作者: SHIKI


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1/1

冬の音

【イシュバンと9人の魔術師】と同シリーズ作品です!

イシュバンとは一体何者なんでしょうか・・・???

ぜひ、【イシュバンと氷葬の魔弾】もお楽しみに~~(^▽^)/

2▲世紀・・・フィンランド南東部の雪山にて。


1頭のシカが静かに樹皮を食んでいた。

あたりは真っ白な世界に包まれ、連日の吹雪がやっと収まり珍しく青い空が広がっている。

何かを感じ取ったのか、シカが頭を上げて周囲を見渡すが、目を細めても一面の雪ばかりで何も変化はない。


ピュン


鋭く細い音。

だが、シカの耳がその音をとらえたときには心の臓が打ち抜かれたあとだった。

ばたりとシカの体が倒れる。

そこでやっと獲物の様子を数千メートル先から双眼鏡で覗く人影がいた。

「ぺっ・・・・」

狙撃手は口に含んでいた雪の塊を吐き出し、大きく息を吐いた。

深々とかぶっていた上着のフードを取ると、そこにはまだあどけなさのある少女の顔が現れる。

薄水色の髪と瞳、頬と鼻先が少し赤いその少女は、自分の身長とそう変わらない大きさの猟銃を専用の袋に入れて背中にせおい、獲物の場所まで雪山を下って行った。


少女が住むのは小さな村。

ここ数年の間に男たちは隣国との戦争に駆り出され、女や子供、老人ばかりのいる村になってしまった。

少女は先ほどのシカを背後のそりに乗せ、馬を鞭で操りながら村へ戻ってくる。

「あ!ソフィア姉ちゃんが帰ってきた!!」

窓から外を覗いていた子供たちが笑顔で飛び出してくる。皆、ふだんから民族衣装をまとい各々の家紋の刺繍いっぱいの特別な上着を羽織っていた。

「ただいまあ~。今日はシカを取ってきたぞお~!!」

「うわあああ~!すごい大きいや・・・」

「ソフィア姉ちゃん、触ってもいい??」

「そっごい立派な角だねえ~」

「ねえ僕も触らしてよ~!!!」

子供たちはソフィアを囲んで、大きなシカに目を奪われていた。


「おや、お帰りソフィア。解体作業手伝うよ。そのあとよかったらお茶でも飲んでいったら?」

「アンナおばさん、ありがとう~。そうさせてもらおうかな」


ソフィアは知人に手を振ってから、すぐさまシカの解体作業に取り掛かる。

腰に下げていたバッグから小刀を取り出し、流れるような手つきで腹を切り裂いていった。

すこしして、さきほどのアンナおばさんも桶やボウルをたくさん抱えてソフィアの傍へやってくる。

「・・・これがボグスさんち、これがサーシャんち、そんでこれがアンナおばさんちのね!」

取り除いたシカ肉を各家にさらに仕分けていく。猟をする男手がない家などに、こうやってお裾分けをしているのだ。

「いつもわるいねえ、ソフィア。さっそく今日の夕食にさせてもらうよ。」

「どうぞどうぞ~。」



「ううう~まああああ・・・!」

ソフィアはとろけるような表情で口いっぱいに頬張っていた。

彼女が口にしているのは、アンナおばさんブレンディングの紅茶と特製の甘酸っぱいブルーベリーパイ。短い春から夏にかけて大量に畑でできた食べ物を瓶づめなどにして備蓄をし、冬をしのぐ。とくに果物などはもっぱらジャムにして、こうやってお菓子やパンなどと一緒にいただくのが格別にうまい。

とくにソフィアはアンナおばさんのお菓子目当てに、よく狩りのあとお邪魔させてもらっていた。

「ははは!相変わらずいい食べっぷりだねえ~。作り甲斐があるってもんだ!」

アンナおばさんの家にはたくさんの刺繍と写真が飾られている。

写真に写っているのは、今まさに戦地にいる彼女の二人の息子の写真ばかりだ。

「・・・ミカエルとニコラス兄さん、おばさんのブルーベリーパイが大好物ですよね。・・・ああ食べさせてあげたいなああ・・・。」

「ほんとうだねえ。戦地まで宅配してやろうかしら。」

がはは、と元気に笑うアンナおばさん。しかし、息子たちが出兵してすぐのころは、さすがに周囲が心配するほど痩せて元気をなくしていたのを思い出す。

(・・・ああ、私が男だったら。ミカエルとニコラス兄さんたちと一緒に戦地で戦えるのになあ。

銃の腕は私のほうがずっと上だもの。きっと役にたてるはずなのに・・・。)


「ソフィア。これ、あんたのお父さんにも持っていきなさい。」

「わあ!ありがとう!!」「わあ!とってもおいしそうですねえ~!」


ソフィアは瞬時に横を向くと、きらきらの瞳でブルーベリーパイを見つめる少年がそこにいた。

「えっと・・・・。あんた誰??」

「ああ、ソフィア。その子ね昨晩の吹雪のなか凍え死にそうになってたんだよ。

なんでも、郵便配達でなれない道を歩いていて迷ったんだとか。そんでもって、あの吹雪だったろう?

鞄に入れてた手紙やらが風に飛ばされて途方に暮れてたんだって。可哀そうな子だろう?」


(な、なんと不憫な・・・。)

ソフィアは隣の少年があわあわしながら風に飛ばされる手紙を追いかける姿を想像し、同情した。

「そ、それは大変ね。私はソフィア、この村の一番奥にある家に父と住んでるの。

郵便配達くん。お名前はなんていうの?」


「イシュバンといいます!・・・あのう、こ、このパイ、ボクも頂いてもいいですか・・・??」

ぐうう~と大きなお腹の音がおばさんちに響いた。












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