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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

嘯くダークエルフ

作者: 森林樹木
掲載日:2026/02/28

ミノタウロスに人間の頭を移植する。

ハードな業務を遂行してもう頭がおかしくなりそう。


バーの扉は大きくて重い。


ギイと開けると珍しくカウンターに客がいた。

私を値踏みするように見てくる。

浅黒い肌(ダークエルフ)が珍しい?


いつものようにカウンターの奥に座る。

マスターは何も言わずラキの水割り(ライオンズミルク)を二つ出してくれた。


今日のタスクにまず、乾杯。


アニスの甘い香りが、嫌なことと一緒に鼻を抜ける。


「……」


仕事自体にはやりがいを感じている。


手早く神経を繋ぎ、綺麗な縫合跡を見せてもクライアントは納得しない。


血まみれの手で顔を覆い、

指の隙間から狂気に満ちた瞳を覗かせながら

『……くく、あーっはっはっは! 見なさい、この禍々しくも美しい肢体を!

誇り高き人間の勇猛さと、家畜のごときミノタウロスの蛮力……。本来決して混じり合うはずのない劣等種同士が、私の『叡智』によって今、一つに溶け合ったのよ!

これまで私を見下してきた無能なエルフ共も、泥を這いずる人間共も、この『傑作』の足元で絶望に濡れるがいいわ。

さあ、目を覚ましなさい、私の可愛いお人形。貴方のその新しい腕で、この退屈な世界を完膚なきまでに叩き潰してあげるから!

――オーホッホッホッホ!!』


嗚呼、恥ずかしい。


耳が赤くなるのはアルコールのせいだけじゃない。

こんなの私のキャラクターじゃないのに。

クライアントが払った報酬は2割上乗せされていた。


「つらい」


鎧の擦れる音と、安物の香水の匂い。

さっきの客が私の横に座った。


私はただ、グラスをゆっくり回し、溶けてゆく氷の形を見つめている。


そいつが、何か言いかけて手を伸ばした。

私は目を合わさず、ぽつりぽつりと語る。


「……昨日、また一人、私の教え子が死んだの。

老衰だった。

彼が赤ん坊の時から知っていたの。

私にとっては、まばたきする間のような時間

みんないなくなってしまう」


テーブルに置いたグラスにカチンと乾杯する。


「……」


男の手がだらんと落ちた。

鼻を啜り上げる。


「すまなかった。彼によろしくいってくれ」


そう言って金貨を3枚置いて店を出て行った。


「……」


金貨を指で摘み上げて、くるくる回す。


「マスターワインちょうだい。今日はおつまみもつけちゃお」


ウッキウキな口調でそう言った。

マスターは肩をすくめて、フィタチーズを出してくれた。



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