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公爵令嬢ローゼリアの勘違いシリーズ

勘違い② 薔薇を愛でる会における上下関係の解釈(なお本人は知らない)

作者: しぃ太郎


 ――最近、またローザの動きが怪しい。


 お茶会といえばそうなのだが、「男性は参加不可」と大々的に掲げているのが不穏すぎる。


「お前、お前、それ……」


 サイラスが口に手を当てて、震える指で俺を指さす。


「言うな。これから潜入する」

「は?どこに??その格好で!?」

「黙れ、お前も道連れだ。こいつを淑女にしたててやってくれ」


 説明するのも面倒だ。

 待機させていた、侍従とメイドを呼ぶ。

 あまり時間がない。


「――かしこまりました」

「え!?なんで!?いーやーだー!!脱がさないで!!」

「俺一人こんな格好だと恥ずかしいだろう」

「いや、一人でも、二人でも恥ずかしいよ!?」


 1時間後。


 ――意外と似合っている俺と、隣に並ぶただの女装男が、鏡の前に完成した。


 ◇◇◇



 私は、今日もフローラに誘われたお茶会に参加している。


 その名も『薔薇を愛でる会』。


「男性は参加不可」という、不思議なルールを掲げて社交界で話題の男性たちの話をする。


「ローゼリア様。……最近、殿下はどうですか?」

「そうね。この間、サイラスに上着を着せてもらっていたわ」


(侍従なんだから当たり前だけど)


 昨日見た、二人の様子を話す。

 それだけで皆さんが喜んでくれるので、少しだけ嬉しい。

 きっと皆さんは、王子様に夢をみているのね。


「きゃーーー!!」

「絵になりますわ!きっと、距離は凄く近くて……」

「ええ!ええ!サイラス様がそっと囁くのですわ。ほら、風邪をひきますよ。……心配させないでください、とか!」


 ヒートアップしていく女性陣。


 私はいつも、ルクス様とサイラスの情報を聞かれるだけだ。

 お菓子が美味しいから、文句はないけれど。

 でも、悲鳴をあげるお茶会。

 とても不思議な光景だった。


 ――そこで、フローラのおっとりとした声が響いた。


「皆様、やっぱり殿下が上でしょうか?

 私は、立場が逆転するのって……胸がドキドキしますわ」


 一瞬、場が静まりかえる。


「キャーー!!それは……!禁断!」

「え……!サイラス様が!?俺様!?」


 皆さん、殿下とサイラスの話を聞きたがっていたけれど、上?逆転?


 ――なるほど。

 私は、ようやく話の要点が掴めた。


「ええ。実は、ルクス様は(歳が)下ですのよ。サイラスは童顔ですが、あれでも……」

「キャーー!!」


 ご令嬢の悲鳴に、思わず口を噤んでしまった。

 まぁ、いいか。

 なぜか喜んでくれているし、フローラは嬉しそうに頬を染めている。




 少し離れたテーブルに、大柄な女性が二人座っていた。


「……サイラス」

「おれ、帰りたい……」

「……おい、もっと離れろ」

「勘違いしないで!?」


 ◇◇◇


 これを期に、なぜか巷では、上だの下だのと評価される貴族男性が増えたという。

 そして『解釈』を巡って、喧嘩する婦女子の姿も多く見られるようになった。


 ――しかし、一番の人気といえば。

 殿下が、上か下か。

 それが真剣に議論される事になるのだった。


 ◇◇◇


 夜中、王宮に響いたという絶叫。


「なんでこうなったーーー!!」


 それを聞いていたのは、侍従とサイラスだけだった。


「……俺も泣きたいよ……」

 サイラスの呟きは、ルクスの叫びにかき消されていった。




 

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