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第2話 人造魔族、襲われる

 魔大陸から一番遠い、南の大陸までやって来た。

 ここはまだ、魔王軍は侵攻して来ていない。自然も傷付いていなくて、平和そのものだ。



(さて……これからどうするか)



 逃げてきたのはいいけど、こっちの世界に身寄りなんてない。地球にもなかったけど。

 スマホもない。ネットもない。ゲームもテレビもない。

 これから、何をして生きていこう。



(……とりあえず、諸々の確認でもするか)



 こめかみに指を押し当て、知識を検索する。

 ……なるほど。やっぱりこの世界は、魔王軍と人間軍が争っているらしい。

 血で血を洗う戦闘が、あちこちで行われているみたいだ。

 で、その争いに終止符を打つために、俺が作られたってことか……。



「迷惑以外の何物でもないな」



 俺も、この体も。

 そっと息を吐き、草原に横たわる。

 爽やかな風が緑の絨毯を揺らし、頬を撫でる。

 ……平和だ……こんな平和な時間、ここ10年は無かった。



(そう言えば就職した頃は、あんなクソブラック企業すぐ抜けて、田舎で暮らしたいって考えてたっけ)



 そんな希望すら塗り潰すくらいの黒さで、今の今まで忘れてたんだけど。

 ……こっちの世界でなら、叶うかな。

 俺のことを誰も知らない世界で、身分や何もかもを捨てて、のんびりスローライフか……。



「悪くないな」



 そうと決まれば、早速行動だ。

 知識によれば、草原を抜けた先に、小さい農村があるはずだ。そこまで行こう。

 ……っと、その前に。



「この服は目立つな」



 魔王が俺にくれた服。真っ黒なロングコートと、真っ黒なシャツ、真っ黒なズボン、真っ黒な靴。全部黒い。

 えっと……こうか。

 服に手を翳し、払う。

 それだけで、上は白のワイシャツ。下は緩めのジーパンに変わった。

 便利だな、これ。服も買わなくて済むし、破れたり汚れても直ぐに綺麗にできる。重宝しよう。

 あとは見た目だ。この長いブロンドヘア。流石に邪魔すぎる。

 手を添えて靡かせると、見る見るうちに短くなり、黒髪の短髪に変わった。

 これくらい変えれば、あいつらも見つけられないだろう。

 さて、移動だが……。



(空は……飛ぶと人目に付くか。仕方ない、歩いていこう)



 幸い、体力は無尽蔵みたいだ。休みなく歩けば、明日の朝には着くか。

 太陽との位置関係を見て、方角を定める。

 散歩がてら、地道に行こう。






「ガルルルルルッ」

「グルルル……!」

「ゔぅゔ〜……!!」



 ……えーっと……これは……?

 3時間くらい歩いただろうか。

 いきなり、10匹の狼に囲まれた。

 いや、狼なのか? それにしては、頭部が歪だ。脚も4本、7本、6本とまちまち。完全に異形だ。

 これ、まさか魔物ってやつか? 俺の知識にも、こいつらが入ってる。集団で狩りをする魔物らしい。



「ま、待て。オッサンなんて食っても美味くないぞ」

「コロロロロッ」

「グルルルルルル……!」



 駄目だ、言葉が通じない。当たり前か。

 くそ、いくら見た目が気持ち悪くても、生き物は生き物だ。手を掛けるなんてできない。

 ゆっくり後退る。が、回り込まれてしまった。



「くっ……!」



 ええいっ。誰にも見られていませんように……!

 背中から翼を生やし、大きく羽ばたかせる。

 暴風が起こり、狼モドキを散り散りに吹き飛ばしながら、遥か上空へと飛び上がった。



「ふぅ……ここまで来れば、もう安心……ん?」



 あれ。なんか生臭い臭いがするぞ。……後ろ?

 振り返ると、巨大な目玉があった。

 縦長の瞳孔が、ぎょろりと睨み付けてくる。

 ……あー……これは。



「ど、ドラッ──」



 次の瞬間。世界が火炎と灼熱に包まれた。



   ◆???side◆



「ねぇ、おねーちゃん。お星様がひかってるよ」



 農作業をしていると、お手伝いをしてくれていた妹のミーネが空を指さした。

 今はまだ昼間だ。空に星が出ているはずがない。

 またいつもの、空想のお話ね。可愛いけど、こっちも手伝ってほしいわ。



「ねぇねぇ。ほら、おねーちゃん」

「はいはい。そうね」



 適当に相槌を打ち、空を見上げる。

 ……星、光ってるわね。しかも真っ赤な星が。

 不吉なことの前触れかしら。怖いわ。

 ……あら? なんか……大きくなってない? こっちに落ちてきてない?



「み、ミーネ、こっち……!」



 まだ小さいミーネを抱き締めて、身を屈める。

 もしあんなものがここに落ちてきたら、私程度じゃミーネを守れないけど……無いよりはましでしょう。

 赤い星を見上げていると……急に消えて、中から何かが現れた。

 ……人……? ここからじゃ見えづらいけど……。

 人っぽい影が、村から少し離れた場所に落ちる。

 あ、あんな高さから落ちて、大丈夫かしら……?



「……!」

「あっ、ミーネ……!」



 駄目よ、近付いたら!

 走っていく妹を追って、私も走る。

 くんくん。なんか、焦げ臭い。もしかして焼死体……?

 ゾッとする想像をしてしまった。そんなもの、大切な妹には見せられない。

 急いで追い付き、手を取って止まらせる。

 が、時既に遅し。人影が落ちた場所まで来てしまった。

 ミーネの目を隠し、落下位置に目を向ける。

 あぁ、やっぱり人だ。いったい何があったのかわからないけど、可哀想に。

 後で丁重に弔ってあげなきゃ。

 ──むくり。



「ブハッ。死ぬかと思った」

「ぎゃあああああああ!?!?」

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