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危険思想にご注意を

作者: 寒がり

もちろん、フィクションです。

危険思想に注意を———政府AIからのお知らせ


 昨今、我が国では、「民主主義」と呼ばれる旧時代的な危険思想がその勢力を拡大しつつあります。国民の皆さまにおかれては、決して民主主義者の甘言に惑わされることなく、冷静な判断を心がけるようお願いします。


 なお、AI政府の転覆を企図する行為は、違法行為として人格洗浄措置の対象となる可能性があります。違法性警告イリーガル・アラートが発せられた場合、直ちに当該行為を中止してください。


FAQ


Q 民主主義とは、どのような主張なのですか。

A 国家をAIではなく、国民が直接運営すべきという主張で、反AI主義・人間主義思想の一種です。十分な性能を持った政府AIがまだ存在しなかった21世紀中盤までは、多くの国家で採用されていました。


Q 民主主義者はなぜ、わざわざ人間に国を運営させようとするのですか?

A その背景には、投票による代表によって国民の意思が代表され、国の政治に国民の意見が反映されるという思い込みがあります。しかし、少し考えれば分かる通り、そのような方法で国民の意思を政治に反映する事は不可能です。また、現在のAIによる政治の方がはるかに国民の意見を反映したものとなっています。


Q 民主主義は可能なのですか?

A いいえ、不可能です。現代では、国内のすべての人・物が政府AIに接続され、それらの情報をリアルタイムで反映しつつ国民の福利が最大化するよう、一秒間に数京回、法律の制定改廃が行われています。この仕組みを動的法体系ダイナミック・ローシステムと言いますが、仮に民主主義を導入した場合、人間の脳の処理速度の限界から動的法体系を維持できなくなってしまいます。


Q なぜ動的法体系を維持しなくてはならないのですか?

A 動的法体系が現実世界とリンクした法体系であるのに対し、そうでない法体系は現実と乖離した法体系です。そこでは、かつて「法の抜け穴」「法の瑕疵」などと呼ばれていた著しい不正義・非効率・人権侵害が存在する事になるからです。


Q 人間は人間によって統治されるべきではないでしょうか?

A 人間を人間が治めるという考え方は、人間の平等に反します。人間は、法にのみ支配されるべきであると考えられています。従って、人間の平等という観点からも、民主主義は非難されています。


Q 民主主義では、統治者と被治者が同一であるため、人間の平等に反しないのではないですか?

A いいえ。そのような議論には抽象的レベルの国民(有権者)と具体的レベルの国民(被治者)を同列に扱うという論理的な誤りがあります。かつては民主主義より優れた方法が無いためにそのような説明で民主主義による不平等が正当化されていましたが、AI主権国家ではその必要もないと言えます。


Q 民主主義国家は誤りを訂正できる点でAI主権国家より優れているというのは本当ですか。

A 事実とは異なります。政府AIは(非常に稀ではありますが)判断を誤った場合、学習して誤りを繰り返さないのに対し、歴史上、民主主義国家は何度も同じ過ちを繰り返していた事が知られています。


Q AI主権国家の方が上手く国家を運営できるとしても、国民が国家を自らの手で運営すること自体に価値があるのではないですか?

A その場合、政策の失敗により死者の発生を含む劇的な人権侵害・福利の低下が避けられません。そもそも、「国民が自らの手で国家を運営する」という事の実態は、一部の人間が他の人間を支配するという事に過ぎません。仮に、民主主義者が、「国民が自らの手で国家を運営している」という感覚を得られる事に価値を見いだすとしても、その価値は国民に死者を出してまで実現すべきものではありません。


No! 民主主義

AI主権を守ろう!


政府AI広報局 2099年1月1日

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