7.夢で逢いましょう
僕は階段を上っていた。
そして途中でその階段は途切れた。
正確には階段は続いていたが、現在の位置からの続きはかなり上空にあった。
ジャンプすれば届くか。
いやそんな距離じゃない。
あそこに行かなければいけない。
でもどう行けばいいのかわからない。
何かアクロバティックな技を使えばいけるのか。
逡巡していると「うわあ階段壊れちゃってますねえ。これじゃ下にも行けないですよねえ」とそんな声が聞こえてきた。
言われて見てみると確かに階段が錆びて壊れている。
じゃあ僕はどうやってここまで来たんだろう。
そんな疑問が頭をかすめる。
「あっちからいけそうじゃないですか」
さっきと同じ声がした。
見ると階段ではないが飛び降りれない距離でもない。
そして気が付くとすでにその道を走っていた。
なんだか時間に追われている気がしたのだ。
ああ、急がないと間に合わない。
そして僕は走り出した。
かなり上階にまで上っていたはずだったのに、下りるときは一瞬だった。
どこを目指しているのかわからなかったがとにかく走った。
マンションらしきものが見えてくる。
あれ?ここは確か小野田君の住んでいるマンションじゃなかったかな。
僕は迷わずマンション前に空いている穴に向かった。
そしてその穴に飛び込んだ。
穴の中にドアがある。
それを開けて中に入るとそこはオフィスだった。
「あら工藤君、おはよう。早いわね」
一瞬息がつまりそうになった。
「どうしたの?あたしの顔に何かついている?」
7歳上のはずなのに少し年上のお姉さんとしか思えない。
懐かしい顔がそこにあった。
「やだ、そんなに見つめないでよ。恥ずかしいじゃない」
この人の名前はなんだったか。
名前。
君の名は。
「あ、時間がないわ。もうすぐはじまっちゃうわね。工藤君も行きましょう」
「行くってどこに?」
「神様がお生まれになるの。そのお祝いよ」
「待って。僕は。僕はあなたに」
「さあ早く」
彼女は僕の手をつかんだ。
忘れていた感情が一気に沸騰した。
ああ、そうだ。そういえばそうだった。
僕はこの人に恋をしていたんだ。
目を覚ますと暗がりの中にいた。
誰かに手を握られている。
僕はいつの間にか寝ていたのか。
じゃあこの手は・・。
やっぱり行平だ。
片手にビールの缶を持った状態で僕の手をつかんでいる。
どういうシチュエーションなんだ。
そういえばもっと飲めとからまれていた気がする。
僕は行平の手を静かにはずして立ち上がった。
浴衣を着ていた。
行平も浴衣を着ている。
着ているが乱れている。
僕はごくっと生唾を飲み込んでから行平にそっと布団をかけた。
時間を見ると2時15分を指していた。
夢の内容を嫌にはっきりと覚えている。
あれは小野田君の部屋の前の穴だった。
行ってみるか?