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花の種は美しくなくても良い

作者: 仁

1.

花の種はどれも格別美しくはない。種はじっと耐える形態だ。乾燥を。洪水を。熱波を。凍結を。あらゆる過剰を耐え、備える形態だ。

あなたはその種。種は色を見せるものではない。美しくなくともよい。


2.

あなたは深刻な殻に包まれている。

その点を見れば、「ありのままでいい」も万能の呪文ではない。

適切な水分に際した時に、

温度の積算が充分に積み重ねられた時に、

殻は破られるべきではある。

殻の中で死んで、そのまま空洞に至るのを良しとしなければ。

けれど、あなたの時は、本当にいつなのだろう?

私や、私の様な部外者は、あなたにいつも「遅すぎる。もっと早く。あの時が適切だった」と言って急かすね?

けれど、あなたは、時節に遅れた自分を、今も必死で生きているのかも知れない

徒長を知っていますか?集団の過密の中、光を求めて上へ上へとひたすら伸びる、植物たちの社会的な反応を。

それらの芽は、病弱で、害虫に抵抗力も弱く、暑さ寒さの変化の影響も受けやすく、

花も咲かず、実もつけず、

それでいて、そこまでしてでも、その集団の中で頭一つ他に勝ろうとし、

自分は誰よりも確固たる自立を勝ち取るのだという借り物の幻想を信じながら、

そしていつかは倒れてしまう、

そんな現象があるのを知っていますか?

いいですか。あなたが遅れる時、

あなたの他の者達が徒長の迷路の中で迷子になっていないとは

限らないのです。

もし徒長の社会の覇者が、

他の追随者を皆巻き込んで倒れ伏してしまう様な時が、

もし来るならばだ、

その時社会全体は、残された殻の中のあなたを頼るほか無い、

図体が大きいだけの、赤ん坊に等しいのです。

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