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【第八頁】伝説の始まり

 ラズリとティティは呆気に取られていた。

 先刻リックとディープスが相手にしたのは、冒険者ランクで測る所のCランククラスの実力は保有していた筈のベテランである。それをこうも一方的に。


 しかもディープスに至ってはこの戦いの中、魔法を二つしか見せていない上に後方に棒立ちである。彼の戦闘スタイルから想像するに、得意とする魔法が二つで終わりな筈が無かった。最低でも六つは【印】がセットされているだろうと予想していたラズリは、その半数にも満たない魔法で凌がれてしまい困惑すらしていた。


 では何故ディープスは魔法を使わなかったのか。

 それはリックの実力的に不要と判断したからに他ならない。圧倒的な戦闘センス、そしてスピードを誇るリックの戦闘は、今の時点を以ってしてもそこそこの領域に届きつつあるだろう。それをディープスが僅かに背を押すだけでどうだ。ほんのそれだけの事で、彼はCクラスのランカーをものともしない実力者へ飛躍してしまった。ならば、この原石少年をディープス程の魔法師が本気で援護を始めたのならー


「やっぱり、面白い子達みたいね」

「魔力は私が貰っても?」

「好きになさい? それで私たちのパーティが壊れるのなら所詮それまでの関係だったってだけだし。今ならまだ何の思い入れもないわ」

「なら大きい方は私が貰う」

「私、別にあの子達に性的な興味はないのよ? 臨時では無くなったとは言え、いつまでという期限も無い。所詮希薄な関係でしか無いと捉えているわ」

「助かる」


 既に彼女らも、その思惑はどうあれ彼らをパーティメンバーとして迎え入れる事に肯定的であった。それに約束も果たされた。ならばー


「ラズリお姉さまー! ねぇねぇ俺たち勝ったよ! 見ててくれた?」

「見てたわよ? 凄い動きじゃないリック。お姉さん胸がキュンとしちゃったわ」

「んほぉぉぉおおおおおおお!!!」

「煩い」

「痛っ!? 殴るなよ!?」

「黙っていろ」

「はい」


 ラズリ達とのパーティ結成を逸るリックに拳骨を見舞うディープス。その上で反抗的な姿勢を見せるリックに対し「殺すぞ」と言わんばかりの睨みを効かせながらの「黙っていろ」に思わず意気消沈の少年リック。彼は歳上の威圧には慣れていなかった。漸くリックを落ち着かせられたディープスは、ここで本題を進め始める。


「これで契約は履行されるな?」

「勿論。何の不満も無いわ」

「そっちの小さい方は不満そうだが?」

「この子はこういう感じなの。納得はしているわ、だから気にしないで?」

「それならば構わない」


 派手で露出の多い格好のラズリの後ろに控え、殆ど肌も晒さず、ただ地味で寡黙に鋭い視線のみを向けてくる少女ティティ。ディープスはパーティとなるなら何でも良かったのだが、リックは沈黙を貫くティティ少女に恐怖しか無く、声を掛ける事すら出来無い始末であった。


「では、残す契約は【行きたいクエストの同行】だな」

「そうね、でも貴方たちが来てくれるなら恐らく問題ないと思うわよ?」

「丁度良い、早速色々と聞かせて貰うぞ」

「あら、エッチなのね」

「エッチ? 何の話だ? お前達の得意魔法、戦闘スタイル、趣向、苦手、全て聞かせろ」

「強引な人なのね」

「お、俺も聞きたいです!」

「あら、君もエッチなのかしら?」

「えっちかもでしゅぅぅぅ!!」

「うふふ、可愛い子」


 下心全開なリック、下心皆無なディープス、そしてエロスの化身の様なラズリに、不敵に状況を睨みつける少女ティティ。


 未だ互いの事を何も知らぬ四人が出会い、歪ながらここに新たなパーティが結成された。



 ━



「一先ず、ラズリが提示していた【クエスト】の詳細を聞かせろ。話はそれからだ」

「エッチな人ね」

「さっきから何を言っている? せっかちの派生語か?」

「冗談の通じない人なのね」

「俺は冗談通じるッスよ!」

「えっちね♡」

「そうかもでしゅぅぅぅ!!!」

「煩い」

「痛っ!? お前なぁ、いくら俺が石超えて鉄頭って呼ばれてたからってポンポン頭を殴るなよ!! ってか何で痛ぇんだよ!!」

「安心しろ。俺の手は強化してあるから無傷だ」

「だから痛かったのか! ……じゃなくて!?」

「良く分からんが話が進まない、お前は黙れ」

「はい」

「今日中に終わらせるには今からでも遅いくらいだ。さっさと説明しろ」


 行動を共にする事となった四人は、まず話をする為に街へと戻り、近場の喫茶店へ足を踏み入れていた。そんな小洒落たお店に耐性の無いリックだけがソワソワしており、進行の妨げになってしまう様な邪魔な行動しか取らない為、話は終始ディープスとラズリによって進められていた。


「一応予約って形でクエストはバストの酒場でキープして貰ってるんだけど」

「成る程な。内容は何だ?」

「ダンジョンの攻略ね」

「ダンジョンか」

「ダンジョン?」

「あら、リックは初めてかしら?」

「聞いた事ある、くらいかも」

「面倒だ、俺から纏めて簡単に説明しよう」


 ダンジョン。

 それは突如として魔力の力場が発生し、何も無かった場所から未知の場所へと続く【穴】が生じる。これを【ダンジョン】と呼称しているのだ。


 それぞれに個性があり、強いダンジョン、弱いダンジョン、属性の偏ったダンジョン、敵の多いダンジョン、少ないダンジョン等々。しかしながらその全ては五階層で統一されており、五階にいるダンジョンボスを倒す事でダンジョンは自然消滅する。


 では何故ダンジョンを目指すのか。

 それはその難易度に見合った報酬が与えられるからに他ならないが、報酬は二種類存在しており、一つはボスドロップによる取得物報酬、もう一つがクエストとして依頼をこなした成功報酬が在る。


 ボスドロップはその殆どが魔力を帯びた石である魔石であり、ボスの強さによって価値が変動する。またクエストとして依頼されるのは、放置されたダンジョンはやがてその内部から魔物を吐き出し始める為、そうなる前に処理する為に冒険者へと依頼されるー


「……という事だ。大体理解出来たか?」

「つまり、そのダンジョンを攻略したいって事?」

「そうね。まずは依頼として現存かどうかの確認からだけど、恐らくまだ在るでしょうね」

「ならば手早く済ませるぞ。そのダンジョンの難易度は?」

「Bクラスと予想されているわね」

「Bか。俺たちならば問題あるまい」

「私もそう思うわ。だから貴方たちにこの話を持ち掛けたのだから」

「へー、そういう事だったんだ。……ランクって?」

「E〜Sで難易度が分けられているのよ。中でも最大難易度であるSランクは、コロシアムクラスの冒険者の実力が求められると言われているわ」

「へー、どんなボスがいるんだろ。行ってみたいなー」

「馬鹿か貴様、話を聞いていたのか? 今から行くんだろうが」

「そうだった!!」


 先ずは依頼が生きているかどうかを確認し、ついでに新たなパーティとして其々を登録する。それが済めばー


「次はダンジョンか!!」


 次なる目的地は、ダンジョンである。

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