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【第六頁】ディープス②

 俺のエアシールドは修練を重ね、通常のエアシールドよりも強固な物を形成出来る様になっている。それを武器ですらない木の棒なんかで破壊してきた対戦相手を、俺が忘れる訳がない。こんな所で何をしてるんだコイツ。


 そして予定調和の様に店主に煙たがられていると、店の入り口の方が何だか騒がしくなっていた。いつも煩い店だが今のそれは異常だ。誰か変な奴でも来たのか?


「あら? 店長、その二人は?」

「なんじゃ今日は客が多いな。お主は……【北方の魔女】じゃな。此奴らは今しがた、パーティを募集に来た問題児どもじゃよ」

「へぇ、見ない顔ね。面白そう」

「ほ、北方の魔女な、お姉様……」


 ツカツカと靴音を鳴らしながらこちらに向かって歩み寄った魔法使いらしき女。【北方の魔女】の異名に聞き覚えはない。北方と表される辺り、普段はこの辺りで活動していないのだろう。にしてもあの靴、魔道具だな。それに帽子も。

 ……ん? 耳のアレは何だ。魔道具にも見えるが、どうも何かを付与している感じでは無い。寧ろ呪いに近い様な……分からないな。奇妙な奴め。


 兎も角、あの装備に身の熟し、雰囲気、間違いなくハイレベルの攻撃系魔法師だ。何故こんなハイレベルな奴がこんな場所に?


 他の何処ででもメンバーは揃えられるであろう実力者である事は間違いない。というかこのレベルでまだパーティを探しているのか? いや待て、人の事を言える俺では無かったな。……という事はコイツもワケアリか。


「君、ポジションは?」

「ぜぜ前衛、木の棒一本あれば戦えるッス」


 脳筋チビが元気良く返事をしている。

 何だコイツ、妙に顔が赤くなっているな、熱風邪か?

 だとしたら今すぐこの場から消えて欲しい。


「ふぅん。で、お兄さんは?」

「ヒーラー兼バッファー、援護系魔法師だ」

「お誂え向きな面々って訳ね。私の名はフェラティゴール・ズリペェヒュージブリーツ。長いからラズリって呼んで」

「ら、ラズリ、お姉さん……」


 この質問からして、やはりパーティを探している様だな。だが後ろのチビ女が連れなのだとしたら、探しているのは二人組の奴だろう。単品の俺には無関係な件だ。


「おいラズリ、何の話だ?」

「貴方は少し黙ってなさい?」

「チッ」


 知り合いらしいハゲとヒゲが席に引っ込むと、女魔法師は今一歩俺へと近付いた。仲間じゃなかったのか? 何なんだコイツ。


「ねぇ、私たち今行きたいクエストがあって、臨時でパーティメンバーを募集しているの」

「へぇ。お前、ポジションは?」

「私は攻撃系魔法師、そしてこっちの子がレンジャーのティティよ」

「……」


 薄々そうだとは思っていたが、魔法師の連れが後ろのレンジャーか。このチビ女、コイツもかなり出来るな。恐らくだが魔法が使えるのだろう。僅かながら身体から魔力が溢れ出てやがる。どんな力を操ればこうなるんだ? 少なくとも、これまで見てきたどのレンジャーとも違う。それにそも、魔法を行使出来るレンジャーは貴重だ。……にしても無口で無愛想な奴だな。眉一つ動かさないとは中々に気合の入った無愛想だ。悪くない。


「腕は立つのか?」

「分からない?」

「いや、かなり出来そうではあるな」

「ありがと」


 と言うかさっきから何の質問だ?

 クエストに行きたいならハゲとヒゲを連れて行けば良いだろ。俺は単品なんだぞ。


「そんな出来そうな私からの提案なんだけど。貴方たち、あの二人と戦ってみない?」

「は?」

「え? えぇぇぇぇぇぇ!!?!!?」


 待て。

 俺を含めて言っているのかコイツ。

 だとしたら貴方たちってのは、誰と誰の事だ?


「俺ですかラズリ姉さん!?」

「君よ? 嫌だったかしら?」

「こここ光栄ッス!!」

「それは良かった」


 ふむ、なんだこの脳筋チビの事だったか。

 ならばコイツ誰かと来ていたのか。気が付かなかったが連れが居たんだな。さて、俺はー


「貴方は?」

「?」

「……貴方よ」

「ん? 俺か?」

「他に誰が見えるのかしら」


 何が「貴方よ」だ。俺は関係ないだろ。というか気配も探ってみたが、どうも脳筋チビのパーティメンバーは見当たらない。まさかコイツも一人だったのか?


 ん?


 ……つまり俺が誘われている訳か。成る程な、チビと俺とでワンセットにされて、ハゲとヒゲと戦えって話か。成る程、ワケがワカラン。


「俺とこのチビは他人だ。ワンセットにするな」

「あら、そうだったの?」

「オィィィ待て待て待て!! バリアお前何言ってんだよ!!」

「魔法名で呼ぶな」

「名前を知らねぇんだよ!! っつか何言っちゃってんのお前!! 今の状況分かってないの!?」

「は?」


 状況判断を生業とする援護系魔法師の俺に、状況の把握を確認するだと? 馬鹿にしてるのかコイツ。


「お前と俺があの二人に勝てば、この四人でパーティになるって話だろ? フルメンバーの!!」

「!?」


 なっ!?

 いや、待て、確かにそうか。

 脳筋チビも魔女もチビ女も、全員他人だったから理解が遅れてしまった。そうだ俺はここにパーティを探しに来たんだ。その上で、この脳筋チビと組んでハゲとヒゲに勝てれば即パーティ結成……だと!?


 ……いや待て、これはパーティ結成の話では無かった筈だ。


「オイ、ラズリと言ったか」

「何かしら」

「俺とこのチビであの二人に勝てれば、お前たちが行きたいクエストのメンバーに入れてやる、そんな話だな?」

「間違ってはいないわね」

「随分とお前たちに有利な条件だな」

「おおおまおまおまっ、ちょ、何言ってんのバリアお前ぇぇぇ!!」


 そうだ、これはパーティ結成の話では無いんだ。だからこそ俺の認識が遅れてしまった。これは飽くまでも【臨時】パーティの誘いだ。この件が終われば解散してソレマデ。そんな物は時間の無駄でしか無い、お断りだ。


 だがもしもー


「だからこそ、こちらからも条件がある」

「何かしら。聞ける範囲だと良いのだけれど」


 もしもこれが臨時で無く、パーティ結成の話ならば。


「要はお前たち二人に力が示せれば良いのだろ?」

「それはそうね」

「ならば示そう。だがもしも示せたのであれば」

「示せたなら?」


 俺は例え脳筋チビが相方だろうがー


「正式にパーティを組んでくれ」

「……確かに、妥当な条件ね」


 援護系魔法師として、決して負ける訳にはいかない。


「どうかしらティティ」

「任せる。ラインは越えてるから」

「なら私はオッケーよ」

「ならば俺もその条件で問題ない」

「は? え? 待って、これってつまり」


 俺と魔女の間で狼狽える脳筋チビ。

 そうだ、これは臨時パーティの話などでは無く。


「俺たちとお姉さん方二人の合計四人が、正式にパーティになるかもって話、って事?」

「そういう事ね」

「うええええぇぇぇぇぇ!!?!?」


 正式に、四人のパーティを結成出来る。

 俺としては、何の問題もない最高の条件だ。


 そも、俺が居れば負ける事は無い。例えこのチビがどんなポンコツであろうと俺には関係ない話だ。デュオの試合は久しくしていないが、問題無いだろう。


 パーティ結成を賭けた試合か。

 受けて立とうじゃないか。

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